ちいきのたより

Vol.27  ヒスイと日本最古のラブソング
新潟県糸魚川市 カネタ建設

3月1日は、二十四節気では「雨水(うすい)」。降る雪が雨へと変わり、深く積もった雪も溶け始める頃。三寒四温を繰り返しながら、少しずつゆっくりと春に向かっていく時期。七十二候では「草木萌動(そうもくめばえいずる)」。草木が芽吹き始める頃です。

私たちの暮らす新潟県糸魚川市いといがわしは、新潟県の最西端、富山県境に位置する海と山に囲まれたまち。「ヒスイ(翡翠)文化発祥の地」ともいわれています。
新潟県糸魚川市の風景


みなさんもきっとどこかで見たことがあるヒスイの勾玉まがたまは、今から約5500年前、つまり縄文時代からこの糸魚川で採取、加工されたものが日本全国、そして世界各国へ広まったようです。
翡翠の勾玉
実は、この高度な加工技術と文明をもった当時の糸魚川の地を治めていたのは、なんと一人の美しいお姫様でした。
その名は「奴奈川姫ぬなかわひめ」。
その奴奈川姫の美しさを噂で聞きつけた出雲の大国主命おおくにぬしのみことが、わざわざ糸魚川の地まで求婚に訪れたと伝えられています。
奴奈川姫に求婚する大国主命

『八千矛神(大国主命)と奴奈川姫の神語~永遠に輝け愛と和の中に』(作:川崎日香浬氏)


その二人のやり取りは、『古事記』に物語的な問答歌(神語/かむがたり)として記録されています。大国主命(古事記では「八千矛神」と表記)の求婚にすぐには応じず、なかなか家の中から出てこない奴奈川姫(古事記では「沼河比売」と表記)。そのうちに夜明けを迎え、居ても立ってもいられない大国主命は、家の戸をガタガタと揺さぶりながら、悶えている様を歌に詠みます。
情熱的ですね。
古事記で八千矛神が沼河比売に求婚する場面 作:川崎日香浬氏
それに対し、奴奈川姫は、
「私、たいした女じゃないですよ。今はちょっと無理かな? でも、いつかは……ね。そんなに焦らないで。」
と、つれない内容の歌を詠みます。

しかし、その後夜になると一転、
「あなたを受け入れるわ」
と態度を変えます。

一見、ツンデレ? (笑)のような奴奈川姫は、相当賢い女性だったのでしょう。
いずれにしても、大国主命は熱烈な歌で求婚し、奴奈川姫もこれに歌で答え、翌日めでたく結ばれたこの二人のドラマチックなかけ合いは、まさに「日本最古のラブソング」、いや「日本最古の恋愛ミュージカル」といってもいいのかもしれません。

ちなみに地元に残る伝承では、二人の間に生まれた子が、なんと後の諏訪大社の祭神である建御名方神たけみなかたのかみといわれています。糸魚川は、出雲大社、諏訪大社ととても深い縁がある神秘的な土地なのです。

さて、糸魚川市のまちの中心部には、天津あまつ神社という象徴的な神社があります。そして、その境内には、奴奈川姫を祀った「奴奈川ぬながわ神社」があります。

天津神社

天津神社

奴奈川神社

天津神社の境内にある奴奈川神社


天津神社は、私たちカネタ建設の本社社屋からも歩いて5分ほどの場所にあり、毎年新年の仕事始めの日はこちらで安全祈願を行っています。
天津神社の安全祈願
天津神社で安全祈願したカネタ建設さん一同
そして、この天津神社では、毎年4月10日に地元を代表する春大祭が行われます。通称「けんか祭り」と呼ばれ、500年以上前から続くこのお祭りは、大きく3部構成となっています。

まず最初に「稚児ちごのお練り」。
お稚児さんは清らかな魂をもつ神聖な存在として、その日一日地面に直接足をつけることなく過ごします。よって、稚児のお練りは大人の肩車に乗って行われます。

4月10日の天津神社春大祭のお稚児さん

天津神社の春大祭で肩車に乗るお稚児さんのお練り
続いて五穀豊穣・豊漁を祈願して二基の御輿をぶつけ合う「けんか神輿」が始まります。
お稚児さんがお練りを終え、舞台に上がった瞬間、それまでの静けさが一変。凄まじい勢いで二基の神輿が走り出します。
天津神社の春大祭けんか神輿
神輿を担ぐのは、地元の押上区・寺町区の若衆たち。天津神社の境内の周りを全力で走り、桟敷席の大観衆の前で神輿どうしが激しくぶつかり、もみ合うけんかを奉納するシーンが見どころの一つです。
集まった観客も血が騒ぎ、大きなかけ声が飛び交います。最後は、双方決められた位置から走り出し、勝敗を決します。押上区が勝てば豊漁となり、寺町区が勝てば豊作になるといわれています。
天津神社のケンカ神輿

天津神社春大祭の押上区ケンカ神輿

けんか神輿が終わると、境内の雰囲気はまた動から静の世界へと一変。「舞楽ぶがく奉納」が始まります。
天津神社のお稚児さんの舞楽奉納
この舞楽奉納は、大阪四天王寺の流れを汲んでいるといわれ、国の重要無形民俗文化財に指定されています。新潟県内の重要無形文化財はなぜかここ糸魚川市に数多く集中していますが、それだけ当時この地域が文化都市として神事の重要な拠点であったことを想像させます。
天津神社の舞楽奉納

天津神社の舞楽奉納

また、糸魚川市は、日本で最初にユネスコの「世界ジオパーク」に認定されたまちでもあります。
そして、数年前にはヒスイ(翡翠)が日本の「国石」として指定されました。その地域ポテンシャルはとても高く、女性を中心にパワースポットとしても注目され始めています。
今では、毎年春~秋にかけて、糸魚川の海岸ではヒスイの原石を探して石拾いをする旅行客の姿が数多く見られるようになりました。
糸魚川の海岸でヒスイの原石探し
日本最古のラブソングにはじまる神秘的なまち糸魚川。
みなさんもぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか?

カネタ建設猪又直登
ちいきの記者
猪又直登 いのまた・なおと
新潟県糸魚川市生まれ。
大手玩具メーカーでキャラクター版権を扱う仕事から家業の建設業へ異色の転身で現在社長。
学生時代は70年代ロック・R&Bをこよなく愛するバンドマン。
現在は出張先でディープな居酒屋めぐりが趣味。検索キーワードは「地名」+「吉田類」。オーセンティックバー&スコッチも大好き。

 

新潟県糸魚川市中央2-4-2カネタ建設施工事例
(株)カネタ建設かねたけんせつ
新潟県糸魚川市中央2-4-2
TEL:025-552-0456
URL: https://www.kaneta.co.jp
    https://www.kinoie-niigata.com

「オンリーワンの住まいづくり」
創業昭和8年。85年以上の歴史をもつ新潟県糸魚川市の老舗ビルダー。「小さな邸宅 キノイエ」をはじめ、個性的な住まいを数多く設計施工。現在は、建築・土木はもとより、不動産、介護から機能訓練まで住生活をフルサポートするワンストップ企業を目指してサービスを展開中。

ちいきのびお参加工務店さん全国図

ちいきのびお