色、いろいろの七十二候

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菖蒲華・雨を楽しむ

楽しい雨
こよみの色

二十四節気

げし

夏至
鴇色ときいろ #F4B3C2

鴇が飛ぶ姿に見える風切羽根の美しいピンク色から名付けられた。江戸時代から使われてきた色。

七十二候

あやめはなさく

菖蒲華
桔梗色ききょういろ#5654A2

桔梗の花のような青みを帯びた紫色。平安時代から愛されていた色名ですが、平安時代は織色やかさねの色目のみであり、染め色として使われるようになったのは江戸時代から。『宇津保(うつぼ)物語』や『栄花(えいが)物語』などの王朝文学にも名前が見られ、秋を代表する色。

白か黒か、正義か悪か、敵か味方か。

そういう視点で見れば、晴天は正義で雨は悪、という風になりがちです。

天気予報のアナウンサーは、雨が降ったりやんだりする日のことを「ぐずついたお天気です」などと揶揄します。快晴という言葉はありますが、快雨とはいわず、曇天などと呼ばれます。

けれど、日本は多雨の国。雪も含めた降水日でいえば、多い地域では年間200日、東京でも100日以上に及びます。雨は必ず降るものです。

天気予報のアナウンサーは、降水確率によっては、おせっかいにも「お出かけの際は傘をお持ちください」などとおっしゃいます。どうして傘なのでしょうか。

日本では、かさ、というと、かつては頭にかぶる笠を指しました。これに加えて身体には蓑をまとうのがスタンダードな雨具でした。
和紙をつかった雨傘は室町時代からあったようですが、広まっていくのは江戸時代以降です。明治になると、洋傘(かつては「こうもり傘」などと呼ばれました)が主流になって、今では蓑笠、和傘はまずお目にかかりません。

すっかりスタンダードな雨具となっている傘ですが、よくよく考えると不完全な雨具です。手が塞がります。足元や荷物は大抵濡れてしまいます。視界も決してよくありません。乗り物と建物の間を移動するための、テンポラリー(一時的)な雨具だといえます。

天気予報が「お出かけの際には傘を」と訴えるのは、電車や自動車を使って通勤し、建物の中で仕事をする人を想定しているのでしょう。お出かけのさいには合羽をお持ちください、だとか、長靴を履いていきましょう、というのは聞いたことがありません。

雨の日に外で作業をする必要があるときに、傘は使えません。雨合羽を着ることになります。自転車やオートバイでのツーリング、登山などでも、雨具は傘ではなくて、雨合羽を着用するのが原則です。

かつての、いわゆるビニールやゴムで出来たような雨合羽は透湿性を持っていませんでした。少し体を動かすだけで、汗で内側がべっとり濡れて、たちまち汗冷えするようなシロモノで、着ていても着ていなくてもあまりかわらないものでした。

今では、ゴアテックスに代表される透湿防水素材が一般的になり、この状況は激変しました。雨を遮りながら、中は蒸れない、というのが当たり前になったのです。こうした素材は合羽、いわゆるレインウェアだけでなく、通常のアウターにも取り入れられていますし、長靴やグローブなどにも使われています。
しっかりした装備をしていれば、雨は決してマイナスばかりではありません。むしろ楽しい。

霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き
  松尾芭蕉

これは秋の句ですが、晴天にはない魅力を語っています。普段見えるものが見えなくなるからこそ、雨のときにしか見えないものがあります。

最近たびたび見かけるのが、軒の出がまったくないハコ型の家、いわゆる軒ゼロ住宅です。
軒がないため雨仕舞が難しく、雨漏りや結露といったリスクが専門紙でとりあげられたりもしています。しかし、ここで取り上げたいのは、そうしたリスクではありません。

深い軒があれば、雨を凌ぎ、夏の日射も遮ります。洗濯物を干したり、野菜や魚を干したり、風鈴を下げたり…。外と内をゆるやかにつなぐ役割も、軒にはあります。
これをすっぱり切り捨てて、外と内をはっきり分けてしまう。なんとも、もったいないことです。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年06月21日の過去記事より再掲載)