フィンランドのサマーコテージ

ところかわれば

森弘子

少し前になりますが、今年8月にフィンランドに再訪しました。フィンランドには、首都ヘルシンキに2014年秋から2017年の夏まで3年間住んでいて、日本からパリへ移住した際に立ち寄った2018年2月ぶりの訪問でした。
今回は、この夏に再訪した友人である日本人のプロダクトデザイナーとフィンランド人の建築家のご夫妻とそのご家族が所有するサマーコテージを紹介しながら、フィンランドのサマーコテージの文化についてふれてみたいとおもいます。この友人のサマーコテージへは毎年夏に招いていただいているのですが、今回のフィンランドへの再訪にタイミングが合い、3回目の訪問が叶いました。

場所はフィンランドの中央部、ヘルシンキから電車を乗り継いで、最寄りの駅から車で20分程度の静かな森の中にある、湖沿いのコテージです。周りにはコテージや農家しかなく、熊も出るそう。

フィンランドでは自宅とは別に郊外にサマーハウスを持つことが一般的で、多くの人がミッドサマー(夏至祭、毎年6月下旬ごろ)に家族でコテージに集い、食事を共にしたりサウナに入ったりします。夏のバカンスシーズンも、人にはよりますが1~2ヶ月にわたって滞在することもあり、バカンス後には庭いじりをしたり、自らの手でサマーハウスを改修した、という話もよく耳にします。
今回紹介するコテージは、ご主人が建築家、奥様がプロダクトデザイナーというだけあり、単なる修繕や改修ではなく、増築もしながらまわりの環境を取り込み、空間を育てているという印象を持ちました。数年をかけて、ご家族自ら納屋をサマーハウスに改築し、寝室3つを増築、テラスを設置するなど、毎年夏6月から8月末のフィンランドのバカンスシーズンに合わせて、コテージに滞在しながら少しずつ進めて行ったそうです。

ところかわれば サマーコテージ フィンランド

左がキッチン・ダイニング・リビングにリノベーションされた元納屋の主屋。大きな引き戸に納屋の面影が。右手が増築された寝室の一つがある離れ。

リビングはもともと納屋として使われていて、トップライトを設け、森に面した横長の窓と、古い窓枠を縦に重ねて再利用した窓を突き当たりに設置することで、明るい空間へと変わりました。リビングにはキッチンと煙突を共有する暖炉が設置され、家全体を温めるのに一役買っています。

ところかわれば サマーコテージ フィンランド

リビング。横長の窓に合わせ、上部のトップライトからも明るい日が差し込む。正面の暖炉の煙突が裏にあるキッチンの薪オーブンとコンロの煙突を共有している。

キッチンはダイニングに続き、中央には薪オーブンとコンロが設置され、湖側にはテラスに続くドアを2つ備えた大きな窓が取り付けられています。

ところかわれば サマーコテージ フィンランド

左手が離れ、右手がダイニングにある湖側に出られるドアを備えた大きな窓。窓からは木々の隙間から湖が少し覗ける。

離れは完全に増築で、納屋からテラスを通して連続した屋根がなだらかに湖の方へ下がっていき、それが居心地の良い内部の空間も作り出しています。

ところかわれば サマーコテージ フィンランド

離れの内部。湖を覗くことができる窓にワークスペース。写真手前の一段上がった部分にベッドがあり、寝泊りができる。

シャワーやお風呂はなく、別棟のサウナに入ったり、湖で水浴びをして体の汚れを落とします。トイレも典型的なフィンランドのサマーコテージのように、別棟に設けられていて、水を流さないドライトイレ(ビオトイレ)を利用します。(フィンランドは日本よりも乾燥している気候かつ、夏でも気温があまり上がらないのでにおいもあまり気になりません。)

夏の間に自ら素人でも自分の手で修繕・改修をすることは、フィンランドでは一般的ではありますが、自ら改修・増築されたとはいえ、今回訪れたご夫妻のコテージは建築家とプロダクトデザイナーのご夫妻とあって、使い方、居心地、素材、空間性などに細かく配慮、設計がされたコテージでした。
サマーコテージで過ごすことは、フィンランドの短い夏を自然いっぱいの環境の中で過ごす贅沢かつ貴重な時間のように感じます。

次回は、今回ご紹介したサマーコテージの敷地内にあるサウナ小屋とフィンランドのサウナ文化をご紹介します