“Families” on the move
移動する「家族」の暮らし方
第2回
団地で見つけた「理想の暮らし」
ネパールから来たビサールさんの物語(1)
ビサールさんは、24歳のときにネパールから日本に移住した。ネパールでは、大学や大学院受験の対策を教える塾で働いていた。その頃、福岡に移住して日本語学校に通い始めた仲の良い友人から、日本はおもしろい国だと聞いて興味を持ち、日本に来ることを決めた。日本語学校に入り、アルバイトをしながら日本語を学んだ。八百屋、回転寿司屋、ファミリーレストランなどで働き、飲食店を経営するために必要な知識を実践的に身につけ、自ら店を開くことにした。日本に来て2年後に、弟と一緒に都内でインド・ネパールの食材の店を開き、その1年後にこの団地に引っ越して、インド・ネパール料理店を開業した。店を始めて8年目になる。「団地は外国人にとって入りやすいよ。保証人とか保証会社がなくても入れる。外国人でも大丈夫だから、それはありがたいよ。あと、団地は住んでいる人がたくさんいて、お客さんになりそうな人がいっぱいいると思ったから、洋光台がいいかなと思った」と、ビサールさんは開店当時のことを振り返った。
ビサールさんは団地の1階で店を営み、店舗内の階段でつながっている2階の2LDKの住宅で、妻サビナさんと2歳の娘ソフィアちゃんと暮らす。午前中からランチタイムまで働くと、一旦2階に上がり、ソフィアちゃんと遊びながら休憩する。日本語をあまり話すことができないサビナさんと幼いソフィアちゃんの様子を、いつでも見に行ける環境で働くことができるこの団地は、ビサールさんにとって理想的な住まいと言う。「店始めたら好きになっちゃって。なかなか帰れないですね、ネパールに。日本に来て10年。まだいっぱい勉強することはあるけど、話すことはできるからね。年配の友達が知らないことをたくさん教えてくれるし、若い人と飲み会もいくしね。まあ楽しくやっています」。調査で店を訪れるたびに、ビサールさんが常連客と談笑する姿を見た。