Restez chez vous フランスの新型コロナウイルスによる外出制限

ところかわれば

森弘子

『Restez chez vous(家にいてください)』、3月17日の外出制限発令以降、テレビでも街中でも目にすることが増えた標語です。
2020年3月30日現在、フランスは新型コロナウイルスの封じ込め対策として、外出制限が発令されています。例にもれず、パリに住む私たちも自宅にて外出制限下の生活をしています。

日本でも報道があるのでご存知の方も多いと思いますが、フランスは3月16日20時にマクロン大統領がテレビ演説を行い、翌17日正午からの外出制限を発表しました。演説では「Nous sommes en guerre(我々は戦時下にある).」と厳しい発言を行い、16日時点で新型コロナウイルスによる死者127名と、先に外出制限を開始した周辺国のイタリアやスペインと比べ少ない中での制限開始となりました。

3月30日現在、外出制限は14日目。最低でも4月15日までの延長が決定され、3月17日の開始からおよそ1ヶ月となることが決定されました。17日正午、サイレンがなることもなく静かに外出制限は始まりました。17日午前中に外出しましたが、混乱は特になく、スーツケースやバックパックを持って買い出しをする人、大きな紙袋に仕事場のものと思われるデスクトップパソコンを入れた人たちを何人か見かけました。

パリのスーパーでの行列

パリ7区にある大型のスーパー。16日の大統領による外出制限発表前後には大きな買い物袋やスーツケースを持った人で行列ができた。列は店内の入場制限と1mの間隔を取らなければいけないので長く見える。

フランスでは3月30日現在、外出は証明書(attestation)を携行すれば、以下の7項目について許可されます。 (在仏日本大使館より和訳引用)
・テレワークができない必要不可欠な仕事又は延期できない仕事のための,自宅と職場間の移動。
・仕事のために必要な買い物又は必要不可欠な買い物を許可された施設(後述)において行うための移動。
・遠隔からは行えず延期できない診療・治療。長期的疾患患者の診察・治療。
・親族のためにやむを得ないもの,脆弱な人々への支援,子どもの監護のための移動。
・集団的スポーツ以外で他人との接近を伴わない個人的な運動や,散歩(複数人で行う場合には,同居人同士のみに限定),ペットのために必要なもので,1日1時間以内,自宅から1キロ以内で行う短時間の移動。
・司法・行政による召集。
・行政当局の要請を受けて行う公益活動への参加。
証明書は電子データの表示(携帯電話の画面を見せるなど)は認められず、政府HPからPDFやWordファイルでダウンロードを行い、氏名、生年月日などに加え、サインと日付及び出発時間などをペン(鉛筆不可)で記入します。現在フランス全土で検問が実施され、違反した場合には135ユーロ又は375ユーロの罰金が、再度の違反については1500ユーロの罰金が科せられます。先ほども日中の買い物の際に路上にいた警察官に呼び止められ、証明書の提示を求められました。

必要不可欠な買い物を許可された施設は、政府によってリスト化されています。主には生活必需品(スーパー、肉屋など専門小売商店、薬局)で、他にも金具店、ガゾリンスタンド、銀行などが営業できます。一方、花屋や服屋など緊急を要さないものは不可。レストランやカフェも元々テイクアウトに対応している場合はテイクアウト業務のみ可。外出制限で自宅近辺から移動できないので、ほかの地域の状況は詳しくはわかりませんが、自宅付近のスーパーでは品物も外出制限開始前後にはトイレットペーパーや缶詰などの保存食品が品薄となりましたが、翌々日には安定して供給されるようになりました。

パリのスーパーでのレジの様子。

スーパーのレジの様子。レジ員はマスク・手袋着用で、客との間には赤いテープで縁取られたアクリル板で飛沫防止が図られている。足元には1m間隔に待機ラインが引かれている。

警察によって人が多く集まるところを中心に警備がされており、今の所大きな混乱はありません。流通も止まることなく、Amazonをはじめとしたネット販売も機能しており、パン屋ではフランスらしくケーキも買うことができます。ただ、公園は閉まっており、息子が安全に自然にふれて遊ぶことができる場所がないことが難点です。

パリの百貨店

パリ左岸にある百貨店Le Bon Marche(ボンマルシェ百貨店)横のバス停には「RESTEZ CHEZ VOUS(家にいてください)」の新型コロナウイルスに関する掲示。手洗いやくしゃみの対策や、症状の特徴などが掲載されている。このような掲示は現在では街のいたるところで見られるようになった。写真はさらに日曜日ということもあり車も人気もほとんどない。

街に出ると、思いの外人がいて驚くこともありますが、多くの人が他人と1m以上の距離を保ち、落ち着いて行動をしています。このような状況の中、多くの命を救おうと日々奔走する医療従事者を讃えるため、20時に窓の外に向かって拍手を送るムーブメントも起こっています。
少しでも多くの命が救われ、いち早く日常が戻るように、一人一人が家にとどまりできることをする、という雰囲気が街をつつんでいるように感じます。