森里海の色
柿木村の一輪挿し「ロウバイ」

臘梅-蝋梅-蠟梅

20年も前、子供たちのピアノの先生のお宅の庭の手入れが難しくなり植木を処分するという話を聞いて一時間かけてI市まで軽トラックに
乗って貰いに行った。
何本かの百日紅の木に交じって持ち帰ったのがロウバイだった。
移植した翌年、初めて花を見たとき目を疑ったことを思い出す。
本当に蝋細工のように見えて思わず指先でつついてみた。
食堂の店先のショーケースに並んでいる食品サンプルのようでもある。
自然界って摩訶不思議で本当に奥が深い。
深みのある黄色の花弁が甘い香りを放ち思わずくらくらと惑わされそうになった。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。