森里海の色
柿木村の一輪挿し「シロヤマブキ」

白山吹

冬至も間近のこの時期は朝が明けるのが遅く、ベッドから起き上がるのが億劫になる。
起きしなに思わずヨイショと声が漏れたりする。

朝散歩も体が冷え込んでしまうのでつい重装備になって足取りも軽やかさが失せてしまうのだ。
吐く息は白く眼鏡を曇らせ、スニーカーの足音だけが森閑とした野辺に響く。

初夏に白い可憐な花を咲かせたシロヤマブキが黄葉し黒真珠のような実を付けた。
黄色と黒のコントラストがモダンでもある。
黒真珠の似合うとはどんな人なんだろう。
此れまで読んだ本に登場する女性のあれやこれやを思い巡らせてみたりした。

著者について

田村浩一

田村浩一たむら・ひろかず
建築
1954年生まれ。株式会社リンケン代表取締役。中国山脈の辺境の地で、美しい森や川や棚田に囲まれながら木と建築の仕事を展開。山野辺の四季の移ろいを感じながら、酒を愛し、野の花を愛で、暮らしに寄り添う棲家とは何かを考えながら生活している。一輪挿しはライフワークのひとつ。