我輩は歌丸である。

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この家はぼくのため

ぼくがN設計室の事務所猫をしていた頃、子守唄代わりに打ち合わせのお話を聞いていたのね。
住宅設計は、敷地の形や広さ、陽当たりや風の抜けを考えながらどんな形の家にするのか決めていくんだって。細かい寸法はその家に暮らす人達に合わせるらしいの。
所長の自邸はどこも心地良くてね。きっと細かい寸法は、ぼくの為に決められたものよねっ!

残念ながら歌丸がこの世に生を受ける前から自邸はあるのですが、歌丸が僕の為!と勘違いするのも分かる気がするのです。

まず1枚目の写真はお気に入りスポット①ピアノの上です。上部にはエアコンと物入れがあり、このすき間の寸法が絶妙に心地良い様です。ちなみにこの写真はくまさん達が可愛いと褒めていた所、「僕の方が可愛いだろうがっ!」と主張して来た時の1枚です。

gato y oso

ねこくまくまねこ

2枚目の写真、スポット②は玄関と居間の間に立つ壁の飾り棚です。この空きがある為、風も通りますし、壁が重くならず部屋のアクセントになっています。ここは歌丸用と言っても過言ではありませんね。見て下さい。このドヤ顔。偉そうに鎮座しております。

el gato acostado

寝そべる歌丸と転がる歌丸

スポット③は奥村昭雄氏の作品である『Nテーブル』です。大きなテーブルなので色々な事に使いますが、基本は食卓です。毛むくじゃらの獣が寝転ぶ場所ではありません。ゴロンゴロンする場所は他にあるのにご機嫌な時は必ずここに来るのです。

3枚目の写真は美しい障子に堂々と爪をたて背を測る歌丸。仔猫の頃は1マス半だったのに随分大きくなりましたが、歌丸はもう少し大きくなりたい様ですね。

el arquitecto y el gato

お庭を眺める歌丸と背を測る歌丸

最後は

歌丸「僕の為に設計してくれてありがとう。」
所長「お前の為じゃぁねぇよ。」
そんな会話が聞こえてきそうな穏やかな1枚。
両者の視線の先には移り行く季節が感じられる小さなお庭があります。
歌丸「僕ね、この家が大好きなのよ。」

暇さえあれば飯くれと鳴く歌丸を無視しながら次のお話は何しようと考え中。次もまた別のお話。

著者について

永田花

永田花ながた・はな
文化学院建築科を卒業後、ステンドグラス作家の山本幸子氏(株式会社山本・堀アーキテクツ)の下で働きながら物つくりの基本を学ぶ。その後N設計室勤務。仕事をしながらクラブイベントの会場装飾・ポスターやフライヤーデザインを手がける。現在は写真を使ったオーダー雑貨のデザイン・制作を生業としている。
http://87utamaru.wix.com/tutti-cat

連載について

永田花さんの飼い猫歌丸くんの日常について綴るエッセイ。歌丸は猫っぽくない、と花さんから聞いて、それはどういうことだろう?ととても興味を持ちました。花さんと歌丸との出会いから、これまでのこと。ほっと一息つけるようなエピーソードにあふれています。