びおの珠玉記事

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旬のデータ 秋の果物

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年09月28日の過去記事より再掲載)

旬のデータ 秋の果物

秋の果物

柿

かき(柿)

秋を代表する果物。9月から12月までが旬。古くから日本に自生しており、食用とされ親しまれてきた。他の木々が葉を落とし、寒々しくなった初冬の風景の中で、赤々と熟した果実を実らせる姿は日本人の心を和ませてくれる。昔から多くの名句に歌われ、名画に描かれた。
現在栽培されている品種の数は1000以上にもなるという。甘柿の中で最も多く生産されているのは「富有柿」で、甘味が強くて果汁が多く、肉厚な上に果肉がやわらかいのが特徴。干し柿は種類や製法の違いで、あんぽ柿・ころ柿・市田柿・吊るし柿など、各地に様々な種類や名称のものがある。農家の軒先に柿が吊るされる様子は秋の風物詩。
ビタミンC(みかんより多い)、カロテン、葉酸、ミネラル、食物繊維などが豊富な栄養価の高い果物。疲労回復や老化防止、風邪予防に効果があり、また、アルコールを分解する酵素を含んでいるので二日酔いにも効果的。
冷蔵庫に入れると味も食感も低下してしまうので、丸ごと保存する場合は常温で保存する。柿の葉はビタミンCを多く含むので、煎じてお茶にされる。

選び方

果肉の色が濃く、均一に色付いていて、張りとツヤのあるもの、持ったときにずっしり重いもの、ヘタがイキイキして緑色のものを選ぶ。


あけび

あけび(通草、木通)

秋を感じさせる果実のひとつ。つる性落葉樹で、北海道から九州まで広く分布している。果実は長楕円形で果肉は白い。熟すと果皮が濃い紫色になり、自然に縦に割れる。
種のまわりのゼリー状の半透明の果肉をスプーンでこそぎ取るようにして、生のまま食べて味わう。種は出す。皮も食べられるので、料理に使うとよい。東北地方、特に山形県にその習慣がある。(天ぷら・油で炒めてみそや砂糖で味付け・ぎょうざの具に混ぜる、など。)実はほんのり甘く、皮の部分にはまろやかなほろ苦さがある。また、あけびの若芽は春の山菜として、つるは漢方薬として利用されている。
ミネラルではカリウム・鉄・マンガンなど、ビタミンではC・B1・葉酸等が多い。果皮には大量のカリウムが含まれており、高血圧予防の働きがある。また、果皮の紫の色素は強力な抗酸化力を持つアントシアニンで、老化予防やガン予防が期待できる。
あけびは山に自生しており、かつては「山に行けばどこにでもあるもの」であったが、最近では見かけることも少なくなり、珍しさから希少価値がつけられ、注目を集めるようになった。栽培する農家も増え、秋の山里の風情を演出してくれる果物として、店頭に彩りを添えている。

選び方

深みのある鮮やかな紫色で、皮に厚みと硬さがあるものを選ぶ。
店頭では割れていないが、熟すと自然に割れる。


いちじく

いちじく(無花果)

古くから栽培されてきた歴史のある果実。「旧約聖書」にも登場する。
アラビア半島が原産とされる。日本へは、17世紀半ばにポルトガル人によって伝えられたと言われている。果実の内側に白い花が密集していて、外からは花が咲かないまま実がなるように見えることから、「無花果」という漢字が当てられた。
ビタミン類はあまり多く含まれておらず、カルシウムや鉄分などのミネラルが豊富。食物繊維の一種であるペクチンが多く含まれているため、整腸作用や便秘・下痢解消の効果がある。肉類の消化を助けるフィシンという酵素もあるので、肉を食べた後のデザートにも最適。
旬は夏の終わりから秋にかけて。9月から10月が最盛期で、最も美味しくなる季節。

選び方

表面に傷がなく、ふっくらしているもの、香りの高いものを選ぶ。
熟しすぎたものは、おしりの部分が割れる。


 くり

くり(栗)

秋の味覚として、特に日本人に好まれているもののひとつ。ほんのりとした甘味と、ほくほくとした食感。いがに覆われた実がなる様子は秋の風物詩である。旬は9月から10月にかけて。
日本人はくりを縄文時代から食用にしていたという。
ビタミンC・カリウム・食物繊維などが豊富という果物としての特徴と、ビタミンE・鉄・銅・マンガン・亜鉛などが豊富なナッツ類としての特徴、そしてでんぷんが豊富という穀類としての特徴をあわせ持っている珍しい食材である。また、くりのビタミンCはでんぷんに包まれているので加熱しても壊れにくいという点で、いも類にも似ている。渋皮には強力な抗酸化作用を持つタンニンを豊富に含んでいる。
水につけてやわらかくしてから皮をむくとよい。ゆでるよりも蒸す方がほくほくとした味わいになり、甘味が強くなり、美味しい。蒸す・焼く・ゆでるなどしてそのまま食べたり、炊き込みご飯、甘露煮、和菓子、きんとんなどにする。

選び方

皮に張りとツヤがあり、濃い茶色をしているもの、形がよくふっくらしており、持った時に重みを感じるもの、トゲがピンと立っているものを選ぶ。
いがつきのままの方が栗がみずみずしい。


りんご

りんご(林檎)

ほのかな酸味とさわやかな甘味のバランスがよい人気の果物。旬は秋から冬。生で食べる他、料理や菓子の素材としても広く利用される。
あらゆる果物の中で、人類との付き合いが最も古いものと言われている。原産地は中近東からコーカサスにかけて。品種の数は果物の中でもトップクラスで、1万種以上とも言われている。
日本にも古くからの野生種があったが、現在流通しているりんごのほとんどは、明治時代に輸入された品種を基に改良を繰り返して作られたもの。「ふじ」「つがる」「むつ」「王林」など。
「1日1個のりんごで医者いらず」という言葉があるとおり、果糖やブドウ糖などの糖質・カルシウム・鉄分・カリウム・食物繊維のペクチンなど、大変栄養価が高い。整腸作用・疲労回復・生活習慣病予防・便秘改善など、効能も豊富。風邪をひいた時などに、すりおろしたりんごは非常に効果的。梨やもも、みかんに比べると体を冷やすことがなく、体力の回復に最適。

選び方

皮に張りとツヤがあり締まっているもの、枝の切り口が新鮮なもの、軸がしっかりしてみずみずしいもの、ずっしりと重みのあるもの、よい香りのするものを選ぶ。


ぶどう

ぶどう(葡萄)

歴史は紀元前4000年頃の古代オリエントで、既に栽培されていた記録があるという。1万もの品種があると言われ、世界中で栽培されている果物。オリエントで育ち古代ペルシアで栄えた果実は、シルクロード経由で中国から日本へ渡来した。
世界の総生産量の約半分はヨーロッパが占めているが、その大部分はぶどう酒に使われる。日本ではりんごやみかん類などとともに生産量が多く、主に生食用に栽培されている。果皮の色によって、巨峰などの黒皮種・デラウェア等の赤皮種・マスカット等の緑皮種に分けられる。
主な成分は果糖やブドウ糖などの糖質。体内への吸収が早く、きわめて効率よくエネルギーに変換されるため、疲労回復に最適。ブドウ糖は脳の働きを活性化する。また、ポリフェノールを豊富に含み、ガンや動脈硬化などの生活習慣病予防に効果がある。鉄・カルシウム・カリウム・銅・亜鉛などのミネラルを含み、貧血予防にもよい。
品種によって収穫時期が異なるが、おおよそ8月から10月が旬。

選び方

表面に白い粉(果粉、ブルーム)がふいているもの、軸がしっかり張っていて緑色をしているものが新鮮。ブルームは果実の表面を保護する役割を担っている。
大きさの揃った粒がぎっしりと房についているもの、粒に張りとツヤがあるものを選ぶ。


ナシ

なし(梨)

噛んだときのシャキッとした潔い食感、ジューシーさ、ほどよい甘味が人気の秋を代表する果物。
世界には約20種類のなしがあり、このうち栽培されているものは日本なし・西洋なし・中国なしの3種類に分けられる。さらに果皮の色で「赤なし系」(「豊水」など)と「青なし系」(「二十世紀」など)に分けられる。
成分の約90%は水分。食物繊維や果糖が豊富に含まれており、疲労回復や便秘解消に効果がある。また、ソルビトール(甘味の成分)は喉の消炎に効果があるとされる。栄養価はあまり高くないが、果汁が多くみずみずしい果物なので、長い残暑の水分補給や夏バテ防止にぴったり。
食べる数時間前に冷蔵庫に入れて冷やすと甘みが増す。種子の周りは酸味が強いので、大きく取り除くとよい。
種類によって多少の違いはあるが、ほとんどは8月下旬から10月に旬を迎える。
洋なし(ラ・フランスなど)はひょうたん型をしており、果肉がやわらかく、日本なしに比べてなめらかな食感が特徴。日本のなしと比べて食物繊維が2倍もあり、便秘改善に最適。またカリウムも豊富に含む。

選び方

皮はザラついて張りがあり、傷のないもの、形が整ってずっしり重いもの、軸がしっかりとしているものを選ぶ。


【参考資料】
・「旬の食材 秋・冬の野菜」 講談社 編  講談社、2004年
・「野菜と果物を『安心』して食べる知恵」 徳江千代子 監修 二見書房、2008年
・「日本のおいしい食材事典」 江上佳奈美 監修 ナツメ社、2009年
・「やさい歳時記」 藤田智 監修、大田淳子 料理 成美堂出版、2007年
・「旬の食材 四季の果物」 講談社 編 講談社、2004年
・「野菜&果物図鑑」 ファイブ・ア・デイ協会、若宮寿子 監修 新星出版社、2006年