びおの珠玉記事
第28回
旬のコラム
食卓の彩り・秋が旬の人参
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2011年11月13日の過去記事より再掲載)
人参の旬と産地
一年中売られていて、決して珍しい野菜とはいえない人参。旬を意識することが少ない人参ですが、秋から冬にかけてがおいしくなる野菜です。
農林水産省の統計では、人参は「春夏にんじん」「秋にんじん」「冬にんじん」の三種にわけられています。他にもいくつか、季節ごとにわけられている野菜がありますが、都道府県別統計で「秋」と「冬」が単独で統計されている野菜は人参だけです。(平成21年産野菜生産出荷統計より)
平成21年の全国の人参出荷量は577,300トン。春夏が147,200トン、秋が180,800トン、冬が249,300トンと、出荷量から見ても秋冬にピークを迎えることがわかります。
秋はほとんどが北海道から出荷されていますが、冬には北海道からの出荷がなくなり、全国各地から出荷されますが、中でも千葉県の出荷量が群を抜いています。
通年で見ても、1位が北海道、2位が千葉で、他の都府県を引き離しています。
人参の色
人参のオレンジ色は、カロチンに由来するものです。カロチンは体内でビタミンAに変わります。後述のコラムにもあるように、人参の栄養は素晴らしいのですが、それだけでなく、色合いという点でも貴重な野菜です。
食事の基本に「五味五色五法」があります。このうちの「五色」は、青、赤、白、黒、黄にわけられます。人参はもちろん「赤」。栄養はもちろんのこと、見た目の華やかさが、料理の彩りにかかせません。
金時人参は、ひときわ鮮やかな赤色で、おせち料理などによく用いられます。
ウサギの眼が赤いのは、人参をたくさん食べるから、という話があります。もちろん俗説で、眼の奥の血管が見えているからなのですが、子どもにはそういう風に話してあげたくなる話ですね。
一方でカタツムリに人参を与えると糞がオレンジ色になります。これは簡単に実験できますよ。
本当は「人参」ではない?
通常、「人参」というと、普通に食卓に登る人参を指しますが、元来は、薬用として用いられる朝鮮人参(オタネニンジン・ウコギ科)を指す呼び名でした。これに似ているということで、セリ科の人参は「せりにんじん」などと呼ばれましたが、いつしか「人参」と呼ばれるようになり、本家の名前を奪ってしまう結果となりました。これは日本だけの話です。中国語では「人参」は、元来の朝鮮人参を指します。
馬は大好物だけど、人間の子どもは大キライ!
人参はビタミンA(カロチン)を多く含んでいます。どの位多いかというと、半本で1日に必要とされるビタミンAを取れるとのこと。栄養野菜のチャンピオンといわれるモロヘイヤやシソに匹敵する量のカロチンを含んでいて、人参の英語名キャロット(carrot)はカロチン(carotene)に由来します。
人参は、根菜類では珍しい緑黄色野菜でもあって、加熱してもカロチンの量はほとんど減りません。それなのに、どういうわけか子どもは人参を嫌います。
フランスの作家ルナールに『にんじん』という有名な作品がありますが、このタイトルは嫌われっこの代名詞であって、東西を問わず、子どもたちにとっての人参の位置を表しているのかもしれません。
おいしい料理を
そんなわけで、昔から親たちは、どうにかして子どもたちに人参を食べさせようと料理に工夫を重ねてきました。
筑前煮は、鶏肉に、人参・牛蒡・蓮根・椎茸などを油で炒め、みりん・砂糖・しょうゆで煮た料理ですが、カロチンは油に溶ける脂溶性ビタミンなので、油と一緒に取ることでビタミンAとしての吸収率がより高くなります。きんぴらや、てんぷらなども同様の効果があります。
人参はスーパーに行けば季節には関係なく並んでいますが、本当は秋から冬にかけてが量も多く、味も良好です。秋人参は、夏に種子をまいて、霜が降りる前後に収穫できるものが、いちばんの美味とされます。人参の良し悪しは、肌の色と甘みで決まります。人参づくりのむずかしさは土づくりにある、といわれます。連作に向いていないことと、土壌消毒を繰り返すと残留農薬が心配です。3〜4年の輪作が適当で、大量に生産することに向いていません。人参は根菜類であることを再認識して、安心できるものを八百屋さんで買い求めてください。
誕生日野菜の提案
人参も、大根も、茄子もきゅうりも一年中お店に並ぶようになりました。けれど、やっぱり旬のものが味もよく、量も多く、したがって安く手に入ります。
そこで提案します。誕生日の星座や宝石があるように、誕生日の野菜をもうけてはいかがでしょう。
地域によって旬は違うので全国一律にやれませんので地元の八百屋さんや工務店と一緒になって、その地域の旬に合わせて誕生日の野菜を決めます。10日毎に変えれば36品種、二十四節気に合わせれば24品種の野菜を定めます。
家人の誕生日野菜で、野菜料理に腕を振るいます。そうすることで野菜が好きになれば、健康にもいいし、第一、おおいに楽しめます。
1日に必要とされる野菜摂取量は350gだそうです。
野菜ギライが増えていますので、みんなで野菜パーティして食するのです。
これが楽しくなると、誕生日のお魚やお茶もテーマになるかもしれません。旬を生活の句読点にすると、季節のめぐりが楽しくなります。