色、いろいろの七十二候
第1回
蛙始鳴・青嵐
画/たかだみつみ
こよみの色
立夏
若緑色 #98D98E
若緑色 #98D98E
蛙始鳴
若苗色 #C7DC68
若苗色 #C7DC68
立夏と青嵐という文字が一緒に並ぶと、何だか新撰組みたいで、胸騒ぎを覚えます。
もうかなり前になりますが、青嵐会という、若手政治家のグループがありました。青嵐は寒冷前線を意味しますが、この政治グループは、「渾沌停滞した政界に爽やかな風を送り込む」意志を、青嵐という言葉を用いて表現しました。命名は、当時、当選1回生の石原慎太郎でした。
青嵐というと、何故か、きな臭さと血ナマ臭さを感じるのは、この言葉が政治的に用いられたからで、本来は、風青しという季語にみられるように、青葉を揺らして爽やかに吹く風をいいます。
青葉のころに吹きわたる風、あまり強くなくて涼しい風。
日本海側で吹く北寄りの風ということもあって、北舞船が行き来した頃には、帆船が上りの順風として利用しました。司馬遼太郎の『菜の花の沖』は、江戸時代の廻船商人、高田屋嘉衛を主人公とした歴史小説ですが、この主人公の爽やかさは、青嵐がもたらすところの涼しげな人相にあったように思います。この小説は、当時の和船の設計、航海術がくわしく書かれていて、楽しい小説でした。
作家の堀田善衛は、伏木富山港の廻船問屋でした。その生い立ちが、この作家の国際的な視座をつくったのだと思います。伏木港は、当時の日本海航路の重要な地点でした。ここにも、青嵐ということを感じます。
夏の季語には、この「青嵐」のほか、「青簾」「青東風」「青葉潮」など、ことさら「青」を強調したものが多くみられます。
青嵐一蝶飛んで矢より迅し 高浜虚子
青嵐電車の音と家に来る 山口誓子
縁台のうすべりとんで青嵐 星野立子
濃き墨のかわきやすさよ青嵐 橋本多佳子
文/小池一三
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2011年05月06日の過去記事より再掲載)