色、いろいろの七十二候

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天地始粛・枝豆

おつまみにもおやつにも枝豆
こよみの色
処暑
萱草色(かんぞういろ) #F8B862
天地始粛
瑠璃色るりいろ #1E50A2

二十四節気の処暑は、暦便覧に「陽気とどまりて、初めて退きやまんとすれば也」とあり、暑さがおさまってくるころとされています。暦の上では既に秋ですが、暑さ寒さも彼岸まで、という言葉があるように、立秋以降も、処暑、白露、そして秋分まで、まだもう少し、実際のところは夏が続きます。

夏のつまみの代表格、枝豆は、大豆が未成熟のうちに収穫したものです。
農林水産省の平成23年産野菜生産出荷統計では、枝豆の収穫量は66,100トン。
農林水産省の平成23年度食料需給表によると、大豆の国内生産量は219,000トン。
枝豆としてよりも、大豆のほうが3倍ほど多いのです。枝豆と大豆は同じでは? と思うのですが、かたや「野菜」、かたや「豆」として、別のカウントになっています。

大豆の自給率は6%程度、枝豆は、国内収穫量に匹敵する量の冷凍物が輸入されています。
どちらも自給率が高いとはいえません。

大豆はご存知の通り、豆腐や納豆、醤油、味噌など、日本の食に欠かせないものです。こうした食材には国産大豆の使用を謳っているものが多く、あまり海外産というものを見かけません。では輸入した大豆はどこに行っているのでしょう。その多くは油の原料に使われています。それでも、食用に限っても20%程度の自給率といわれ、実際のところは、私たちが食べる大豆も枝豆も、国内で自給できていない、ということになります。

食糧の自給、という点では、以前にもとりあげたことがありますが、カロリーベースの自給率、というおかしな考え方があります。例えば鶏卵は、むしろ輸入品を買おうとするほうが難しいように思えますが、その自給率は11%(平成21年度)。
これは、鶏の飼料の多くが輸入によるものだから、という不思議な計算です。

しかし、野菜の肥料はこのカロリーベース自給率の計算には含まれません。
植物の栄養の三要素、窒素、リン酸、カリウムは、化学肥料の原料としても使われます。
このうちリン酸を採取できるリン鉱石は全量を輸入に頼っています。肥料そのものも輸入品が多く使われますが、国内生産にしても、原料の輸入の割合が高いのです。

肥料自給率を計算に入れれば、日本の食糧自給率はもっと下がるでしょう。ただし、カロリーベース自給率は、その名のとおり、カロリーをもとに考えるため、肉類に比べてカロリーが小さい野菜の自給率が下がっても、影響は肉類ほど大きくはありません。
やっぱりカロリーベース自給率って変ですね。そもそも、カロリーを摂りたいだけが食事ではないですから。

国内で生産される野菜の多くはF1種という、遺伝的に子孫を残しづらい種が使われています。種苗会社から毎年種を買わなければならない仕組みです。F1種の採種は海外が主流です。肥料も多くは輸入品、または輸入原料に頼っています。先の「カロリーベース」のように、あれこれ定義をしてしまえば、食料自給率など限りなくゼロに近づいてしまいます。そもそも輸送には石油も必要です。好むと好まざるとにかかわらず、交易なくして今の生活は成り立たないのが事実です。

先に肥料の話をしましたが、大豆を育てるのには肥料はいらない、といわれています。
大豆など、豆科の植物に共生する根粒菌が、空気中の窒素を固定して、結果、土壌を肥やすことになります。自ら窒素肥料を作っているようなものです。豆科の植物を緑肥としてすきこむのも、この窒素固定による効果が期待できるからです。
どんな土壌で作られているか、ということは、あまり気にされることがないかもしれませんが、植物にとって土は生命の源で、その植物に生かされている私たちにとっても欠かせない財産です。4大文明が滅んだ理由として、増えた人口を養うための農耕が破綻した、という説があります。土壌が痩せてしまい、作物が作れなくなったというのです。かように土壌は重要です。
枝豆を食べたら、土のことにも思いを馳せてみてください。

関連記事:びおの珠玉記事 第7回カロリーベースって何? 日本の食料自給率の不思議
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2013年08月23日の過去記事より再掲載)