F・LL・ライトに学ぶ
ヴィンテージな家づくり
第18回
ユーソニアンオートマチック
Tracy邸(1955)
敷地は湖に面した崖の上にあり、眺望抜群。お訪ねした午後は湖の景色が窓ガラスに映り込み美しく輝いて見えました。
ライトは時代の流れとともに変わる建設技術やコスト上昇に対応するため、新しい工法の開発に度々挑戦しています。ユーソニアンオートマチックと名付けられたコンクリートブロック造の住宅もその一つです。手間のかかる木工事を減らし、型枠を使い回してコンクリートブロックを作り、コストを下げることを意図していました。Tracy 邸のブロック型枠は、Kalil邸(1955年)で使われたものです。施主自身が数年かけて膨大な量のブロックを作り、工事業者が積み上げました。設計されたのは1955年ですが、竣工したのは1960年、ライトがなくなった翌年でした。
Tracy夫妻と一緒に訪ねたタリアセン出身の友人(右)。左の小柄なTracy夫人がご自身でほとんどのブロックを作ったと話されていました。
穴あきブロックは、ガラスはめ殺しのものとガラスが開くタイプがあり、光が森の木漏れ日のように入ってきます。家の中に居ながら森の清々しさを感じました。ブロックは金属製の型枠なので表面は平滑ですが、所々に意図しなかったかもしれない気泡が入っていて、素材の表情を豊かにしています。
起伏に富んだ敷地であるため寝室は半分土中に埋めこまれています。土は天然の断熱材の役割を果たします。腰壁は合板。静寂感が漂う部屋でした。