色、いろいろの七十二候
第24回
禾乃登・今年もドラマが生まれた甲子園
萱草色 #F8B862
黄丹 #EE7948
春のセンバツと、夏の選手権の2つの「甲子園」がありますが、「甲子園」と聞けば、夏の大会を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
夏の甲子園大会の歴史は古く、前身となる全国中等学校優勝野球大会は1915年から開催され、第10回大会となる1924年から甲子園球場で開かれるようになりました。その後、戦争の影響で一旦中止となるものの、今に至るまで高校野球の頂点であり続けています。
趣味や娯楽が多様化・分散化し、プロ野球は、かつてのような国民的人気とまでは言えなくなりましたが、高校野球には、プロ野球にはない独特の人気があるようです。
郷里の代表が戦うということ。一度でも負ければ、それで終了という儚さ、必死さが、高校野球の人気の背景にあるのでしょう。
同じ野球であっても、プロとアマ、大人と高校生、そして日米での違いもあります。
かつてプロ野球・ヤクルトスワローズに1年だけ在籍したボブ・ホーナー選手は、アメリカに帰国後、「地球(アメリカ大リーグ)のウラ側にもうひとつの違う野球(ベースボール)があった」という本を出版しました。
日本の集団型練習や戦術、そしてマスメディア報道の彼我の違いに戸惑いを覚えたようです。当時、まだ日本人選手が米大リーグでプレーすることは一般的ではありませんでした。今では多くの選手が渡米し活躍しています。「野球」と「ベースボール」の違いが、埋まってきているのかもしれません。
ベースボールの 今日も暮れけり 正岡子規
子規は、体を壊すまでは自らも野球に熱中し、野球に関する歌も多く詠むなど、野球の普及に多大な貢献をしたとして、2002年に野球殿堂入りしています。
子規が詠んだ「九つの 人九つの あらそひに」は、当時まだ訳語がなかったために「ベースボール」と続いていますが、そこにあったのは、高校野球に残された「野球」の色を強く感じます。
来年はどんなドラマがうまれるのでしょうか。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年08月22日の過去記事より再掲載)