びおの珠玉記事

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美しく、栄養も豊富。太刀魚

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2009年10月23日の過去記事より再掲載)

タチウオ

太刀魚の旬はいつ?

びおでは、太刀魚は夏の魚として案内しています。
ものの本をあたっても、太刀魚は夏の魚と書かれているものが多いです。でも
、いま(10月)ごろも、実は太刀魚のシーズンなのです。
太刀魚は、夏によく獲れるようになりますが、9月頃になると、毎日獲れなくなり、また今頃になると、群れが接岸してきてシーズンがやってきます。
夏の太刀魚は比較的小型ですが、秋から冬にかけては大きなものが獲れます。(スーパーで売られている太刀魚をみると、なんとなく大きいことがわかるかも?)
そんなわけで、「太刀魚」です。

どんな魚?

スズキ目サバ亜目タチウオ科の魚です。
魚屋さんでは、丸ごと売られていることもありますが、スーパーマーケットで売られているのは切り身が多く、太刀魚の全身を見たことがない、という人もいるようです。
太刀魚全身
その名の通り、「太刀」のような、銀色の長い体。長いものは1メートル以上にもなります。垂直に泳いだり、水平に泳いだりを繰り返すため、「立ち魚」から「タチウオ」と名付けられたという説もあります。
タチウオの顔
いかにも獰猛な顔をしています。小魚やイカ、エビ・カニなどを食べているようですが、こんな歯で噛みつかれたらたまりませんね。とても鋭く、指がちょっと触っただけで切れてしまいます。

高級魚・太刀魚

太刀魚には尾びれも腹びれもなく、ウロコもないという特徴を持っています。ウロコがないかわりに、体は銀粉で覆われています。ウロコの代わりに、この銀粉で体を保護しているのです。

銀粉で覆われた表面

ウロコの代わりに体は銀粉で覆われています


この銀粉は、手で触っただけで取れてしまいます。この銀粉を集めて「グアニン箔」というものを作り、マニキュアのラメにしたり、模造真珠に使われたそうです。現在ではこれらの原料も人工素材が多くなっているようですが、自然由来の原料として、見直されてもよいのではないでしょうか。太刀魚なんか見たことない、という彼女の指先にも、太刀魚から出来たラメが光っている、かもしれません。
マニキュア

マニキュアのラメの原料が、太刀魚だったとは…!


太刀魚は大衆魚と言えるほど安い魚ではありませんが、この銀粉がきれいに残っている太刀魚は、さらによい値段がつき、高級魚として扱われます。

太刀魚で脱・メタボ?

太刀魚は、見た目のスリムさからは想像できないほど脂の多い魚です。それだけ聞くと、太る原因のように思えるかもしれませんが、脂肪にはDHAが多く含まれ、これにより中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果が期待できます。オレイン酸も多いため、体内の酸化を防ぐ効果もあるといわれています。

また、脂溶性ビタミンのビタミンA、D、Eも豊富です。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨や歯を丈夫にします。脂溶性ビタミンは加熱しても失われにくいため、焼いたり、揚げたりといった調理方法にも適しています。

太刀魚を食べる

切り身で買ってきた場合は、塩焼き、ムニエルなどがあいます。油やバターにもあう魚なので、和洋とわず、さまざまな食べ方が出来ます。

旬のデータ

肉質がやわらかいので、最適料理は焼きもの。塩焼き、酒塩焼き、照り焼き、バター焼きなど。意外だがバターやオリーブオイルの風味に合うので、ムニエルなど洋風料理の素材にもなる。新鮮なものは刺身(細造り)にする。皮はむかずに包丁で体表をこする程度にした方がよい。独特の歯ざわりが楽しめ、ほどよくのった脂が美味。昆布締めも美味しい。その他、煮つけ(梅・さんしょう煮、辛み煮など)、から揚げ、揚げ煮など。調理の際は、骨が鋭いので注意する。

さて、今回は新鮮な太刀魚がたくさん手に入ったので、新鮮なうちにいただき、その日のうちに食べられないものは保存がきくように処理しました。

刺身

鮮度のよい魚といえば、なんといっても刺身。太刀魚の刺身は、見た目よりずっと脂がのっていて、独特の食感と香りがたまりません。
タチウオの刺身
他の魚のように鱗もなく、皮を引かなくても美味しく食べられるので、刺身づくりは簡単です。採れたてより、1日ねかした方がうまい、という人もいますが、さていかに。

塩焼き

定番中の定番、塩焼きです。
タチウオの塩焼き
太刀魚は脂が多く、塩が浸透しにくいようですが、薄味でも美味しく食べられます。
焼き魚にする場合は、背びれの骨が邪魔になって食べづらいことがあるので、焼く前に背びれのつけねに切り込みを入れておくと、取りやすくなります。

昆布締め

その日のうちに食べられない分は、少し日持ちのするように処理をします。

「旬のデータ」でも「美味しい」とされている昆布締めです。

身を適当な大きさに切り、少し塩を振っておくと水気が出ますので、拭き取っておきます。昆布は水で戻した後、水気を拭き取っておきます。
バットにさばいたタチウオを並べる

昆布をしき、その上に魚を並べます。
タチウオの昆布締め

そのまた上に昆布をしいて、ラップでくるんで冷蔵庫で1日程度寝かせると、いい味になります。このまましばらく保存が可能。

皮に焦げ目がつくぐらいあぶっても美味しいです。
コンロでタチウオを炙る

昆布締めは、刺身と同じように醤油とわさびで食べてもよいのですが、ネギとポン酢もおすすめ。
手前があぶったもの。
炙った昆布締めのタチウオ
魚の水分が昆布に移ることで、魚が傷みにくくなり、また昆布のうまみが魚に移ることで、ただの刺身とは違ったうまさです。昆布を戻すとき、酒を少し加えても○。

塩干し

ぶつ切りにして腹側から開きます。結構しょっぱいな、ぐらいの塩水につけます。太刀魚は塩がしみにくいため、1時間以上つけておきました。
タチウオを塩水につける

水気を拭き取って、身を上にして干し網で干します。
夏にくらべて気温が低くなり、魚も傷みにくいため、少し長めに干します。
干し網でタチウオを干す

夕方、直接日が当たっていないところに出し、そのまま朝まで。早朝、皮を上にひっくり返し、日があたりはじめるころに干し上がりです。

味醂干し

塩干しの途中の行程から、みりん干しも作ってみました。塩干しは1時間以上塩水につけておきましたが、みりん干しに使うものは、20分ぐらいでひきあげます。その後、酒・醤油・みりんをあわせたつけだれにつけ込みます。当たり前ですが醤油が多ければしょっぱく、みりんが多ければ甘く仕上がります。このへんの調節はお好みで。
あわせつけだれにタチウオをつける

こちらも、干しかた以降は塩干しと同様。

塩干しに比べると焦げやすいので、火加減に注意して炙って食べます。みりん干しって、なぜかゴマを振ってしまうんですよね。
炙ったタチウオのみりん干し

夏に比べると、大柄になる分、味が落ちるといわれることもある秋の太刀魚ですが、鮮度の高いものを秋の天日で干したものは、充分に美味しいものでした。季節の違いによる魚の食べくらべもまた楽しいものですね。