ヨリドコロえんがわ

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みんなのヨリドコロ

ヨリドコロえんがわの入り口ではくまもんがお出迎え

はじめまして。

熊本県にある工務店 ミズタホームのスタッフ 森川と申します。
じつは私、工務店のスタッフでありながら、建築のノウハウはほとんどありません。
普段は、木工、企画、広報、掃除やお茶係など、様々な事をさせて頂いています。
建築のことはあまり語れませんが、その周りで動くスタッフの一人として、感じたことを綴っていければと思います。
今回は約1年半前から始まったお店 “ヨリドコロえんがわ” での取り組みや出来事を中心にご紹介いたします。

熊本県のほぼ中心に位置し、 “九州のおへそ” とも呼ばれている上益城郡甲佐町(こうさまち)
山と川と田園に囲まれた人口約1万人ののどかな町です。
甲佐町役場から徒歩5分、風情ある大出手川が流れる商店街の一角に、 “ヨリドコロえんがわ” はあります。

大出手川が流れる商店街の一角

築100年の古民家をリノベーションした二階建ての建物には、私たちと繋がりのある作家さんの作品や家具、アンティーク雑貨のショップと、手仕事を伝えるためのワークショップスペース、そして、これからカフェを開きたい方向けに提供しているレンタルカフェを設けており、チャレンジの場としてご利用頂いております。
また建物の奥には、小さな庭とウッドデッキがあり、「商店街の中にいながら自然を感じられる」とお客様にも喜んで頂いています。

レトロな赤いヤカンとストーブ

中庭に広く張り出したえんがわ

 “ヨリドコロえんがわ” のお店がオープンして約1年半。
オープン前の準備期間にも約1年半かかりました。
そして、オープンした現在も、常に試行錯誤を楽しみながら、より心地よい居場所づくりを考えています。

「どうしてこの場所で?」とよく聞かれます。

ミズタホームの事務所は熊本市内にあるし、人通りの少ない田舎の町で、なぜお店を始めようと思ったのか、疑問に思われるのでしょう。
 “ヨリドコロえんがわ” を始めたきっかけは、同じ町にある、築140年の古民家をリノベーションした「山ぼうしの樹」での人々との出会いからでした。

 “山ぼうしの樹” は約400坪の敷地に古民家の母屋を含め、7つの建物が点在し、四季折々の風情を五感で感じることができる場所です。
普段は、見学会や家づくりの相談の場所として使っているのですが、心地良いと感じて下さったお客様の口コミが広がり、勉強会や料理教室などの会場、作家作品の展示販売会を開催する場所などとして利用されるようになりました。

山ぼうしの樹の入り口には緑がいっぱい

山ぼうしの樹

そんな中、甲佐町住民の方々と関わる機会も増え、地域内外からのアクセスもしやすいことから、甲佐町商店街で「みんなのヨリドコロ」として、お店をはじめることになったのです。
それは、私たちにとって未知なる挑戦でもありました。
オープンに向けて着々と工事が進む中、私たちは、何度も何度も “ヨリドコロえんがわ” の目的や必要性について話し合いました。
人通りの多い街中でお店を開けば、きっとお客様も多いだろうし、家づくりの相談も増えることでしょう。
でも、それでは、ミズタホームらしさが無い。(笑)

家づくりも大量生産型ではなく、ご縁のあったお客様との信頼関係を大切にしながら、一つ一つ丁寧に向き合い、造っていきたい。
 “業者とお客様” という関係だけでなく、できれば人と人と人同士、末永くお付き合いして頂ける、親しみやすい工務店になることを目指している会社です。

だからこそ、今はご縁のあった甲佐町を中心に活動し、関わって下さる人を大切に、協力しながら、さらに居心地が良い「みんなのヨリドコロ」を作りたい。
そして、ふと気が付けば、甲佐町が賑わいを取り戻し、少しでも地域活性のお手伝いができていれば良いなと思っている次第です。
ヨリドコロえんがわ “ヨリドコロえんがわ” という名前はそんな願いを込めて名付けました。
最初は、横文字で今風のかっこいい名前を考えたりもしていましたが、、、お年寄りにも分かりやすく、何より日本らしい名前。
今ではこの名前にして本当に良かったと思っています。

また、古民家というと、寒くて暗いイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、最近では、懐かしい、温かみがある、かっこいい、などと、若い世代からの人気も高まっています。
実際、 “山ぼうしの樹” や “ヨリドコロえんがわ” を見学された方々で、こんな風にリノベーションできたなら、残しておけば良かった・・・という声も多く聞かれます。
改修工事に興味がある方も多く、 “ヨリドコロえんがわ” の工事の際は、地域の方や大学生、DIYが好きな方などを募集して、生まれ変わる様子を実際に体験して頂くワークショップも開催しました。
砂ぼこりで、体中が真っ白になりながら、畳や天井を剥がしたり、雑巾を何度も何度も洗いながら、丁寧に柱や床を拭きあげる作業。
また左官さんに学びながら、珪藻土を塗る体験も行いました。
そうして建物が、日に日に少し少しずつ生き返っていく。
完成したその姿を目の当たりにした方々からは、喜びと感動の声があがりました。
古民家をリノベーション中珪藻土塗り

リノベーション前の古民家ふすまがボロボロ Before1

ショップにリノベーションされた古民家

After

天井が剥がれ落ちた家 Before2

和モダンにリノベーションされた古民家

After

古道具とホコリばかりのリノベーション前の家 Before3

カウンター付きにリノベーションされた階段下の空間

After

時間はかかりましたが、沢山の方々のおかげで生まれ変わった建物。

いよいよ、お店が開店します。
甲佐発ヨリドコロえんがわ四季味屋カフェ次回に続く。

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著者について

森川瞳

森川瞳もりかわ・ひとみ
熊本県熊本市出身。
5人兄弟の末っ子で、小さい頃の遊びは、兄達と虫探しや自然遊びをすることばかり。10代後半に犬小屋を建てたことがきっかけで、木工をはじめる。
23歳のとき、本物の家具職人の仕事を見るため一年間、飛騨高山へ。
そこで体験した出来事や出会った方々が刺激となり、木材だけでなく、森への関心を生む。
熊本へ戻り、「木や森のことを伝えること」を目的とした木工教室をはじめる。その後、教室がきっかけでミズタホームに入社。
現在は「樹子工房」という名前で家具小物の製作や、木工教室、広報、企画、ショップの管理などを担当している。

連載について

熊本甲佐町にあるその店は、日々「何かしたい」と「何か感じたい」の気持ちに溢れる人達が寄り集まる場所となっています。 ある日は一日カフェ店長として、ある日はフラリ訪れてみたお客として、またある日は駆られた衝動で作り上げたモノを売る創作家として…。 "作る喜び" と "生きる喜び" が緩やかに漂うレンタルカフェ&スペース「ヨリドコロえんがわ」より、工務店女子兼店長である森川瞳さんが、日々の体験や思ったことを綴ってくれます。