びおの珠玉記事

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乾燥・結露・湿度の話

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年12月02日の過去記事より再掲載)

蒸気

「冬は空気が乾燥する」という言葉をよく聞きますね。確かに、夏のジメジメした感じに比べると、冬はサラサラ、というよりも、カサカサした空気を感じます。
空気が乾燥するというのは、どういうことなのでしょうか。そして、それは私たちの生活とどんな関係があるのでしょうか。

絶対湿度と相対湿度

空気中には、水が水蒸気となって含まれています。この量が多いか少ないかによって、「空気が乾燥している」とか「ジメジメしている」ということになります。
快適な湿度は50%前後と言われています。この「%」は、何に対しての割合か、ご存知ですか?

空気には飽和水蒸気量というものがあります。空気中に含むことのできる水蒸気の量をしめします。湿度何%、というのは、この飽和水蒸気量を100%とした割合です。
ややこしいのは、この飽和水蒸気量というのは、空気の温度によって変わってくることです。

気温が10℃のときの飽和水蒸気量は9.4g/m³ですが、20℃になると17.3g/m³、30℃では30.3g/m³と、気温が高くなるにつれて、飽和水蒸気量も増えていきます。飽和水蒸気量に対して相対的な割合をみることから、このはかりかたを「相対湿度」といいます。
相対湿度は温度によって飽和水蒸気量が変化するため、水分自体の量がわかりません。水分の量をあらわす場合は絶対湿度を用います。
こちらは%ではなく、g/m³であらわします。

また、「露点」によって湿度をあらわすこともできます。水蒸気をふくんだ空気が冷え、飽和水蒸気量に達すると、後述する「結露」のように、水が気体から液体に変わります。このときの温度を露点といい、露点が低い程、水分の量が少ないということがわかります。

どうして冬は乾燥するの?

冬は、気温が低いので飽和水蒸気量も低く、外気の湿度は夏より低くなります。
これに加えて、室内では暖房をすることで気温があがりますから、室内空気の飽和水蒸気量が増えますが、ただ暖めるだけでは空気中の水分の量が変わらない(絶対湿度は同じまま)ため、相対湿度が下がってしまいます。
冬場、エアコンの効いた室内や車内などで乾燥により喉や目の渇きを覚えることがあるのは、このせいなのです。

エアコン

エアコンによる暖房は室内の相対湿度をさげます


水分を加えずに気温をあげると、相対湿度がさがります。一般的なエアコンや電気ストーブ、オイルヒーターなどはこれにあたります。(石油ストーブ、ファンヒーターなどについては後述)

そこで、加湿器による加湿を行うことが多くなりました。

過加湿に注意

市販されている加湿器は、その方式から大きく3つにわけられます。

スチーム式

加湿器
水を沸騰させ発生する水蒸気によって加湿するもの。ストーブの上にやかんを置く、というのも、原理は同じです。
加湿能力が高く、部屋の気温をさげないのが特徴ですが、電気によって水を加熱しているため、ランニングコストが他の方式よりも高く、また熱い蒸気がでるので小さい子がいる場合等は特に安全に配慮する必要があります。

気化式

加湿器
水分が自然に蒸発するしくみを利用したもの。水をしめらせたフィルターやディスクなどに、ファンで風をあてて気化するもので加湿します。
熱源をもたないため安全で、消費電力も低いのが特徴です。加湿力は相対的に低く、部屋の気温をさげてしまうのがデメリットとされています。

超音波式

超音波によって水を振動させ、粒子を放出するタイプです。
消費電力は一般的に蒸気式より低く、熱ももたないというメリットがありますが、タンクの水やフィルターに発生した雑菌をそのまま空気中にまきちらす可能性が指摘されています。また、水道水に含まれるミネラル類なども放出されるため、家具などにミネラルが付着することもあるようです。

これらの方式を複数組み合わせ、「いいとこどり」をしたハイブリッド方式のものも市販されています。

さて、加湿器を準備すれば、冬の乾燥から解き放たれて安心、でしょうか。でもちょっと待ってください。今度は「過加湿」が問題になります。

過加湿とは、字のごとく加湿のし過ぎ。一般的に快適な湿度は40〜60%程度だといわれていますが、これを超えて加湿をつづけると、不快な湿度となってしまいます。
また、相対湿度自体は高すぎなくても、家の断熱・気密・換気とのバランスがよくなければ、家にとってよくない状態をつくりだします。それが「結露」です。

結露とは何か

冬の窓際が濡れているという経験をしたことのある方もいるでしょう。これは窓が外気によって冷やされ、周辺の空気に含まれる水分が結露したものです。
冷たいコップに水滴がつくのも同じ現象です。
窓の結露
たとえば6メートル角の空間の容積は216m³で、10℃のときの飽和水蒸気量は約2リットル分、一方20℃では約3.7リットル分、30℃になると、およそ6.5リットル分にもなります。(絶対湿度はただしくはg/m³であらわすのですが、イメージしやすくするためにリットルで表記しました)
同じ空間で30℃の気温で湿度が50%だと、空気中におよそ3.25リットルほどの水分があることになります。
同じ水分をもったまま、気温が10℃までさがると、飽和水蒸気量を超えてしまいます。その水分は気体(水蒸気)ではいられなくなり、液体(水)となって空気から出ていきます。
これが結露の正体です。

昔の家は、隙間も大きく、放っておいても自然に換気されました。木材、土壁などの昔ながらの素材も、湿度を調節するのに役立ちました。
しかし、ビニールやコンクリートなどの、調湿性能のない建材が使用されるようになったことと、石油ストーブの普及によって、結露が問題視されるようになりました。
石油ストーブは空気を暖めますから、相対湿度は下がるのでは、と思うかもしれませんが、開放型(煙突が外に出ていないタイプ)のストーブは、燃料の水分を室内にまき散らしているのと同じなので、暖房しながら加湿もしていることになります。
これに加えてやかんを乗せたりすると、過加湿になることが多いのです。


さらに最近になると、住宅の気密性能が高まり、計画的に換気を行わなければ湿気がどこにも出て行かない、という状態になりました。
いま行われている24時間換気は、主にシックハウスに対する対策から行われているものですが、同時に湿度を適切に排出するということがなければ、家の中の温度が低いところが結露してしまうことになるのです。

十分な換気性能があるはずの家でも、暮らし方によっては過加湿になることがあります。

水分の発生源は意外と多く、先にあげた加湿器はもちろんですが、開放型のガス・灯油式暖房や、室内干しの洗濯物、観葉植物、入浴、調理、そして私たち自身からも発生しています。
これから家を建てようという人は、こういう点にも十分注意を払うことをおすすめします。
今の住まいで結露に悩んでいる方は、暮らし方と換気について、もう一度見直してみましょう。

結露なんてただの水じゃないか、とあなどってはいけません。
水分は、住宅にとって非常に大きな問題になることが多いのです。

家と水分

たとえば、結露によって窓枠についた水は、放っておくとやがてカビたり、腐ったりしてしまいます。
結露は目に見えるところにだけ起こるとは限らず、壁の中でも起こり得ます。窓などでみられる表面結露にたいして、見えないところで起こるものは内部結露と呼ばれます。

建物の壁には断熱材が入っていて、冬の寒さや夏の暑さをやわらげてくれます。しかし、断熱材の外気側は外気温度に近くなり、露点温度を下回ります。このとき、断熱材の外気側の材料が、水蒸気を通しにくい場合は、逃げ場のない水分がそこで結露を起こします。これが内部結露です。
目に見えないところで起こりますので普段は気がつきにくく、リフォームなどで壁をはがしてみたら、カビだらけだったり、木が腐っていたり、ということがあります。このように、内部結露は家の耐久性に大きく影響します。

また、床下の乾燥状態を保つことも、家の寿命に大きく影響します。
かつては、床下には自然換気口を設けることが一般的でしたが、土台が湿気で腐ったりすることのないよう、強制的に排気をしたり、空気を床下に導入して乾燥状態を保つような仕組みも考えられています。

床下通気口

古い住宅の自然換気口

インフルエンザと湿度

さて、今年は新型インフルエンザの流行と、過剰ともいえるような各所での対応が話題になりました。
インフルエンザ対策には加湿が必要ということがよくいわれていますが、
ウイルスの活動は相対湿度ではなく絶対湿度によって変わるという学説もあります。
インフルエンザウイルスの感染は、相対湿度の変化よりも、絶対湿度の違いによってより顕著に変化がみられるとのことです。

Pro-ceedings of the National Academy of Sciences
http://www.pnas.org/content/106/9/3243.abstract

宮城県医師会では、絶対湿度によるインフルエンザの流行予測を行い、ネットで発表しています。

宮城県医師会 全国インフルエンザ流行予測
http://www.mmic.or.jp/flu/flu-list.php

適度な加湿を行うとともに、なにより、旬の食べ物を食べて体力をつけ、ウイルスに負けない体をつくりましょう。

湿度・ちょっとしたネタ

静電気と湿度

冬は不快な静電気の季節ですね。
静電気自体は人体から季節を問わず発生しているのですが、湿度が高いとその水分を通じて電気が発散され、蓄積はされにくいため、夏場に「パチッ」とくることは滅多にありません。
冬は空気中の水分が少ないため、発散しにくくなる上に、化繊などの電気を通しにくい服を着ることが増えるため、発生した静電気を発散しにくくなり、
どこかに触ったときに「パチッ」とくるのです。

美術品と湿度

美術館にいくと、展示ケースの中に湿度計があることにお気づきでしょうか。美術品は湿度の影響を受けやすく、保護のために厳密な湿度管理が行われています。
キトラ古墳や高松塚古墳などから発掘された歴史的価値の高い壁画にカビが発生し、話題になったことがありました。これは、保存作業による人体から出る湿気が原因だという説もありました。
このように、古い美術品は湿度の影響を受けやすいのです。

炭で湿度をはかる?

江戸時代に記された「三世相永代大雑書」には、炭と土を天秤に入れている図があります。炭が水分を吸収することで、湿度をはかるのに使われたのでしょうか。

炭と土を天秤に入れている図

(三世相永代大雑書より)炭と土を天秤に入れている図

不快指数

温度と湿度は密接な関係がありますが、これにより「不快指数」が計算できます。湿度が高すぎても、人は不快に感じます。これは主に夏場に用いられる指数。

乾燥から「のどカラ2指数」を割り出して、喉の痛みに注意を促す「のどカラ2予報」なんていうものもありました。

参考文献
湿度のお話 日本規格協会
住まいQ&A ダニ・カビ・結露 井上書院