びおの珠玉記事

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「日なた」の力。SolarCatしよう!

2023年2月現在、電気やガスといった生活インフラの大幅な値上げが続いています。政府による負担軽減策も動き出しましたが、本質的な解決にはなっていません。この記事は、2012年に発表されたものではありますが、自然のエネルギーを素直に使う、ということを訴えるため、再び掲載することといたしました。

  

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。(2012年02月09日の過去記事より)

枯蔓の日陰日向と綯ふひかり  水原秋櫻子

太陽と地球がつくりだす、光と影、日なたと日陰。
日なたは暖かく、日陰は涼しい。当たり前のことですが、これを忘れてしまったかのような家も、多く見られます。もっと太陽のこと、考えたほうがいいのでは?

なんでも電気で考えない

福島第一原子力発電所事故のあと、電力不足が叫ばれ、東日本を中心に、各地で節電ブームが起こりました。
福島だけでなく、各地の発電所がダメージを受け、電力供給量が減ることで、私たちは、計画停電や電力使用制限令という事態を経験することになりました。
停電や電気料金の値上げは、企業の海外流出につながるからよくないという説もあれば、電力は余っている、稀少感を出すための計画では、とささやく人もいます。

電気というエネルギーがなければ現代社会が成立しないことは明確です。
たとえばこのWEBサイトも、電力なくしては見ることも作ることも出来ません。電気を作り出すための燃料がなんであれ、そのことにかわりありません。研究開発や製造業などにも多くの電力を必要とします。

でも、いつも必ず電気でないと、だめなんでしょうか? 

エネルギー白書2011(資源エネルギー庁)に、こんなグラフがあります。
世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移
世帯あたりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移です。
こうしてみると、近年は動力・照明他の割合が増えていることがわかります。暖房、給湯の割合は、1973年より下がっていますね(割合がさがっただけで、全体の消費は1.3倍になっていることは忘れてはいけません)。

エネルギー源の推移を見てみると、
家庭部門におけるエネルギー源の推移
1965年度には22.8%だった電気の比率が、2009年度には50.5%に増加しています。65年度は石炭が35.3%でエースだったのが、73年度には6.1%に、2009年度には0%になっています。
電気は、「高密度」で「高品質」なエネルギーです。一口で言えば、便利なのです。便利故に、他のエネルギーでもまかなえたものでも、どんどん電気に置き換わってきてしまいました。ある意味「電気中毒」といえるかもしれません。

電気はこれからも大切なエネルギーで、必要なものであり続けるでしょう。しかし、それを代用のきくものにまですべて用いなくてもよいはずです。
2009年度の用途別エネルギーでは、半分以上が「冷房」「暖房」「給湯」といった、熱に関する消費です。
実は熱エネルギーは、比較的容易に得ることができます。それは、太陽熱です。

エネルギーには適した用途がある

太陽熱をはじめとした自然エネルギーの欠点として、低密度・低品質であることがあげられます。
しかし、住宅の暖房や給湯に関していえば(地域差はあるものの)、その多くが太陽熱でまかなえます。
天気が悪ければ、熱もあまりとれない。それほど高い熱がとれるわけでもない。
それゆえに、電気に比べて低密度・低品質という評価になってしまいます。
風力発電や太陽光発電が、不安定だという指摘がつきまといます。それは、「電気にする」というアタマで考えてしまうからです。

なんにでも高レベルな電気を用いず、低レベルなエネルギーで出来ることは、低レベルなエネルギーで出来るだけやる、ということが、全体の電力需要を減らすことに貢献するはずです。

昨今、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)という名称をよく目にします。
なにか、「平家にあらずんば人にあらず」かのように、HEMSがなければこれからの住宅にあらず、ぐらいの勢いです。
マネジメントシステム、とうたっていますが、家電・設備や分電盤毎のエネルギー(電気)消費量を表示するだけものから、機器の制御・遠隔操作が出来るものまでさまざまです。
「見える化」や制御によって、無駄がなくなれば、それはいいことです。
電気は高密度で高品質、制御がし易いエネルギーで、こういうことに向いているのは確かです。それ故に、代替がきくエネルギーも、すべて電気でまかなっていこう、という風潮には、大いに警鐘を鳴らします。
現在のところ、HEMSのEは、Energyじゃなくて、Electronicじゃないかなあ、などと思ってしまうのです。

SolarCatしよう!

びおハウス」は、SolarCatしよう! と呼びかけています。
猫はコタツで丸くなる、という歌があります。猫が暖かい所好きということを端的に表した歌ですね。
日中は、陽射しを求めて移動し、暖かいとこを見つけて太陽熱を取り込みます。日の当たらない夜は、コタツや布団を探して暖まる、暖かい所を探す名人です。
猫と日差し
一方で、暑い夏は、涼しいところでだら〜としていて、決して無理しません。冷たい床を探しては、そこに座ってお腹を冷やします。

なんでも自動で制御させずに、ネコのように、無理せず自然に、でも知恵を働かせて暮らしましょう、という呼びかけです。

我が家の日当たりを知ろう。

冬至は太陽高度がもっとも低く、夏至はもっとも高くなります。この間、太陽の出ている時間や角度は日々変化します。
家はその土地に立って動きませんが、地球の自転と公転の影響で、日の当たりかたは、毎日少しずつ変わっています。

太陽の動き(冬至・夏至)

夏と冬では、太陽高度や日の出、日の入りがこれだけ違います。

建て込んだ街区などでの計画では、周囲の建物がどういう高さで、どういう場所にあるかが、大きく影響します。
北側の家の日当たりを邪魔しないように、用途地域によっては、北側斜線規制がかかります。
裏の家に太陽の光がある程度届くように、建物の高さ・形状を規制するものです。
この規制があるため、南側に建物があっても、ある程度は日当たりがあるようには配慮されていますが、それでも周辺の建物の影響はさまざまです。その影響を設計段階できちんと調べることも、日当たりを活かした家にはとても重要です。

たとえば、こんなところに家を建てる場合。
日当たりと住宅地
冬は、とことん日射を取り込みます。冬の太陽高度は低いので、南側に窓を大きく取るのが基本です。周辺の家の影響を正確につかむことが重要です。

朝の日差しと住宅

朝8時。東から日が差しています。


冬の朝日の入り方

冬の朝8時の室内。日が入りはじめています。


冬の朝10時の日の当たり方

10時の外観。太陽はだいぶ上にあるのがわかります。


冬の10時の日光の入り方

10時の室内。だいぶ日が入って来ました。猫もうれしそう?


冬の12時の日の当たり方

12時。周辺の建物にうつる影を、朝と見比べれば、どれだけ日があたっているかわかります。


冬の12時の日の入り方

12時の室内。奥まで日が入っています。


冬の14時の日の当たり方

14時。日が西に傾いていきます。


冬の14時の日の入り方

14時の室内。吹き抜けが陽射しを取り込むのに役立つことがわかります。


冬16時の日の当たり方

16時。日はかなり落ち、周囲には長い影が伸びています。


冬16時の日の入り方

16時の室内。それでも、まだこれだけ日が取り込めます。

うまく配置をし、吹き抜け等を利用すれば、建て込んだ場所でもこれだけ陽射しが取り入れられることがわかります。
そして、外観からわかるように、屋根や壁にも、日がかなりあたります。これらの熱を室内に取り入れる仕掛けを使うことで、いっそう自然エネルギーによる暖房効果があがります。

さて、夏は一転して、いかに日射遮蔽をするかに尽きます。ここでは西日の厳しい16時の例をご紹介します。

夏の16時の日の当たり方

夏の16時。西日が強烈です。


夏の16時の日を軒で遮る

夏の16時の室内。太陽高度が高いため、深い軒や吊りデッキで日射が防げます。

この絵では、軒の出と吊りデッキが効果を奏し、日射は遮られています。窓は開いているので暗くもありません。
冬も夏も、ネコが良い場所を探すように、うまく工夫してよい環境をつくりましょう。

日なたがあれば、日陰も出来る。

日なたがあれば、日陰も出来る。北側の家への配慮もしながら、十分に日射を活かし、また遮れる家をつくりましょう。
日陰には日陰の活用方法があります。家の北側って、とかく「見せたくないもの」をまとめがちですが、植物の一つも植えてみませんか。たとえば南天は、半日陰や日陰を好み、北側に植えられることが多い植物です。
南天
我が家の裏側は「北側の家の風景である」という気持ちも持って、よい関係を…。

『あさになったのでまどをあけますよ』

あさになったのでまどをあけますよ」 という荒井 良二さんの絵本があります。
とてもすがすがしいタイトル通りの、素敵な絵本です。
決して日当たりやエネルギーのことを訴える本ではないのですが、窓を通した私たちと社会や自然とのつながりの大切さを気づかせてくれます。
電子制御された家が、朝、自動的に窓を開けたのでは得られない、能動的な歓びがあります。

畳と日差し

せっかくの陽射しを、うまく使おう!