びおの珠玉記事

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家の防犯、どう考えますか?

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2011年02月24日の過去記事より再掲載)

鍵

住宅侵入盗の現状

かつて日本の治安は世界有数だといわれ、水と安全はタダ、などと言われていましたが、平成14年には一般刑法犯の認知件数が戦後最多となり、治安の悪化がいわれるようになりました。
(一般刑法犯とは、刑法犯全体から、自動車運転過失致死傷等を除いたものをいいます。これに対して特別法犯というものがあり、これは一般刑法犯以外の罪、外為法、銃刀法、出資法、麻薬取締法など、名前に刑法がつかないけれど、犯罪と刑罰を規定している法律に違反したものです)

下のグラフは平成21年の刑法犯(一般・特別をあわせたもの)の罪名別構成比です。

刑法犯認知件数・検挙人員の罪名別構成比

「平成22年版 犯罪白書」より


窃盗が認知件数の半数以上を締めていることがわかります。

窃盗の推移を見てみましょう。

窃盗認知件数・検挙件数・検挙率の推移

「平成22年版 犯罪白書」より


一般刑法犯全体と同様、平成14年までは増加傾向だったのが、以降は認知件数も低下し、検挙率も上がってきています。状況の悪化には一定に歯止めがかかっているといえるのかもしれません。

次に、窃盗の手口別構成比を見てみましょう。
窃盗認知件数の手口別構成比

窃盗1,299,294件のうち、11.4%(148,488件)が侵入盗となっています。単純にみて、毎日400件以上の侵入盗が起こっているということになりますね。減少傾向とはいえ、なんだか恐ろしい数字です。
侵入窃盗の発生場所別認知件数

侵入盗の約4割が戸建て住宅、2割がマンション等で、あわせて6割近くが個人の住宅への侵入盗です。
こうして見ると、「ウチは大丈夫」なんて思っていないで、なんらかの対策が必要に見えますね。

家はどこから侵入されるのか

戸建て住宅の場合、侵入口の6割が「窓」です。

侵入窃盗の発生場所別の侵入口・侵入手段 平成21年の犯罪情勢(警察庁)より
  認知件数 表出入口 非常口 その他の
出入口
その他 不明
総数 55,992 8,446 32 10,054 33,017 1,192 3,251
ピッキング 16 9 0 3 3 1 0
サムターン
回し
163 24 0 67 69 0 3
合かぎ 728 598 0 121 1 6 2
その他の
施錠開け
724 204 1 256 250 8 5
ドア錠破り 1,104 236 4 685 167 12 0
ガラス破り 22,698 472 13 2,646 19,241 323 3
戸外し 363 27 0 32 292 12 0
無締り 24,328 6,361 10 5,126 11,215 444 1,172
その他 3,190 330 4 935 1,549 335 37
不明 2,678 185 0 183 230 51 2,029

侵入手口では、「無締り」、つまり鍵がかかっていない、というのが最も多く24,328件、ついでガラス破りが22,698件です。一世を風靡した(?)ピッキング(16件)は、啓蒙効果があってか、かなり減っているようです。
一方で、数こそ少ないものの、ドリルでドアに穴をあけてサムターン回しで解錠する、という荒っぽい手口は前年比で47.5%増ということです。

住宅の性能表示制度にも、「防犯に関すること」という項目が設けられています。

侵入可能な大きさの開口部を階ごとに拾い出し、各開口部を種類と位置により、3つの区分に分類します。その区分ごとに、侵入防止対策を検討します。
ここで定義されている侵入可能な大きさとは、「長辺が400mm、短辺が250mmの長方形」「長径が400mm、短径が300mmの楕円」「直径が350mmの円」の断面ブロックが通過可能であることとされています。これらが通過できない大きさの開口部は、侵入できない開口部扱いとなります。
侵入可能な開口部は、「出入口」「外部からの接近が比較的容易な開口部」「その他(外部から接近しにくい開口部)」の三つにわけられて、それぞれに対しての防犯措置の有無を評価します。

防犯上有効な措置としては、二つ以上の鍵をつける、ウインドフィルムを貼る、雨戸、シャッターや面格子をつける、などがあげられていますが、共通しているのは「防犯建物部品」を使う、とされていることです。

防犯建物部品とは、CP(CrimePrevention・防犯)表示品と呼ばれているもので、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が定めた基準による試験に合格した建物部品です。

防犯性能が高ければいい家か

住宅の性能表示制度についてよく言われるのが、「性能の等級が高い=いい家ではない」ということです。

性能表示項目には、これ以外に耐震、劣化対策、省エネルギー、高齢者対策など全部で10の項目があります。それぞれの基準に対しての優劣こそつけられますが、それが必ずしも住まい手にとって重要なことではない場合もあります。
そもそもこれらの評価項目には、プラン・意匠や町並みといった部分が含まれていません。満足度の多寡はこうした要素によるところも大きく、性能評価はあくまである一定基準による評価にすぎないことも念頭においておきたいものです。

防犯に対する考え方

住宅メーカーの多くが、防犯に配慮した、とされる商品を販売しています。先に挙げた防犯建物部品のような制度もあります。ホームセキュリティのようなサービスも、不景気と言われながらも一定に支持され続けています。

住宅侵入盗が侵入を明らめるまでの時間は5分程度といわれ、5分で破壊して侵入できない設備を準備する、というのが製品側からのアプローチです。ホームセキュリティは、例のあの「シール」で威嚇するという効果もあるのでしょう。

侵入被疑者の弁によれば、犯行を諦めた最大の理由として「近所の人に声をかけられたり、ジロジロ見られた」ということを、最も多くあげています。
侵入手口の最大手法が「無締り」という点もあり、「がちがちに固めたハードウェア」が本当に必要かどうか、一考の余地あり、という気もしませんか。
もっとも、あくまで手口の率が1位なだけで、被害額と侵入手口の相関関係まではわかりませんでした。手厚い設備やサービスで家財を守る必要がある方もいるでしょう。

新興住宅街や共同住宅では、近所付き合いもなく、こうした抑止効果が望めないという声もありますが、一方で地域を見守る防犯ボランティアは4万2762団体、構成員は262万9278人(平成21年末現在)という数値があります。これを多いとみるか少ないと見るかは意見がわかれそうですが、先の「声かけ」であきらめる例からしても、抑止力としての効果はあるといえるのではないでしょうか。

こんなサービスや製品も

自宅の防犯度をチェックできます。

犯罪が多いと赤くなる。「シムシティ」っぽいですね…

大阪府警の情報をもとに、民間の会社によるtwitterでの防犯情報。元ネタは警察のメールからですが、こうした情報はTwitterによる拡散が有効ですね。

被害にあってしまったら

我が家に限って…と思っていても、いつどんな手段で被害にあうかわかりません。もしやられてしまったら。

・警察を呼ぶ。
・現場を保全する(あれこれ自分で手をつけない)
・クレジットカード、通帳などをストップする。
・雑損控除を受ける。一定額の所得控除が受けられます。

人を見たら泥棒と思え、なんて嫌だけど。

「割れ窓理論」という環境犯罪学の理論があります。建物の窓が割れているのをそのままにしておくと、そこに注意をしている人がいない、というサインになり、やがて他の窓も割られてしまう、ということから転じて、小さな犯罪も放置すると治安の悪化につながる、という考え方です。

犯罪じゃなくても、こういうことってよくありますよね。放置自転車も、1台置かれるといつのまにか大量の放置につながったりします。
知らない町で道に迷って同じところをウロウロしていて、怪しげに見られた経験、ありませんか?

「人を見たら泥棒と思え」ということわざがあります。この言葉は、ある特定の環境下ではもっともかもしれませんが、普遍的なことわざにしたくはないですね。
怪しげにジロジロみるよりも、「こんにちは、誰かの家を探してるの?」と声を掛けるほうが、どうやら防犯には効果があるようです。防犯だけでなくて、そっちのほうがいいですよね(かくいう我が町はどうなのか、自省)。

町の工務店ネットの現代町家憲章に「その家は、前を通る人の家でもあること」という一文があります。家は個人の財産であるけれど、一方で町に責任を持っているという考え方です。防犯も同様で、個別の家としてのハードウェア的防犯だけでなく、その地域で防犯をどう考えていくかという両面が必要ではないでしょうか。
家は、その土地に建っている、ということを忘れないように!