びおの珠玉記事

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お散歩以上、ジョギング未満。パワーウォーキングのススメ。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2008年10月18日の過去記事より再掲載)

お散歩

肘を90度に曲げ、頭をあげて、視線はおよそ5m先に。
イラスト:小野寺光子

予防医学的歩行

ヒポクラテス

ヒポクラテス
Hippocrates (紀元前460〜紀元前377年)


スポーツの秋です。運動不足を感じていても、なかなか体を動かすことが出来ない、と感じている人は多いのではないでしょうか。

医学の父・ヒポクラテスは、「歩くことは人間の最良の薬である」といっています。

気軽に出来て、お金もかからず、若い人でも高齢者でも出来る「歩く」こと。予防医学的視点から、歩くことに注目してみました。

歩行と人類

ペンギン

ペンギンの見た目は直立二足歩行ですが、お腹に隠れた大腿骨は水平になっており、人間とは異なります。


鳥や猿、熊やカンガルーなど、二足歩行を(一時的にでも)行なう生物は沢山いますが、直立二足歩行を行なえるのは、我々ヒトだけです。

進化の過程で、直立二足歩行によって喉の構造が変化し、発音の多様化から言語を獲得するに至り、そして脳が発達してきた、といわれています。

我々がいまのスタイルで「歩く」ことは、まさに人が人である所以といえるでしょう。

我々の祖先が二本足で歩いたからこそ、文字も生まれたし、インターネットもある、というわけです。ところが、「歩く」ことは、現代生活ではないがしろにされがちです。

アシモ

文明の進歩は、二足歩行ロボットも生み出しました。


自動車の普及やデスクワークの増加で、歩く時間は減っています。出かけるときに歩かなくなるだけでなく、ネットの普及で「出かけなくなる」ことも、歩かなくなる要因の一つになっています。
食生活の変化と相まって、肥満は増加し、国をあげての「メタボ検診」など、ヒポクラテスが見たら、さぞかしガッカリするであろう有様です。

歩行によって進化してきたヒトが、進化の極みで生み出した文明によって歩行から遠ざかっていく、ということは、なんだかそら恐ろしい気がします。

パワーウォーキングのススメ

現代社会に生きる以上、運動不足になるのは誰もがわかっています。わかっていても、仕事や、時間や、お金や、いろいろな事情で「運動不足解消」が出来ない人もまた多いのです。

でも、歩くだけなら、出来そうな気がしませんか? ドイツで生まれた「パワーウォーキング」は、散歩よりもアクティブに、でもジョギングほどに体に負担をかけない、健康づくりの歩き方です。

歴史と効用
参考書籍

パワーウォーキングを考案したのは、モスクワ五輪競歩の金メダリスト、ハートヴィッヒ・ガウダーさんです。ガウダーさんは、引退後に心臓病を患い、心臓移植手術をうけました。そのリハビリのために生み出したのが、パワーウォーキングです。
その特徴は、心拍数を測りながら歩くこと。最高心拍数(220から年齢を引いた数値)の60〜75%をキープしながら歩きます。心拍数は、歩く速度で調整します。また、肘を90度に曲げ、胸を張って腕を大きく振り、頭をあげて、目線はおよそ5メートル先を。つま先で地面を後ろに蹴って歩きます。
これによって、血行がよくなり、代謝量が増え、太りにくい体質になるといわれています。

パワーウォーキング体験記

そんなわけで、やってみました、パワーウォーキング。
私サヅカは、季節の良いときには自転車通勤をすることもありますが、普段の移動はほとんどオートバイ。仕事はほとんどデスクワークで、一日あたりの歩行距離は、カナリ少ないです。

「びお」編集部は、佐鳴湖という湖のほとりにあります。実は日本で一番汚濁度の高い湖という不名誉な記録をもっている湖ですが、周辺は遊歩道の整備が進み、朝夕を問わず、多くの人の憩いの場になっています。

ある程度の距離を歩かないとつまらないし、せっかくなら、達成感のある佐鳴湖一周にしよう!

腕を振るのが恥ずかしい?

公園

公園には多くの人が歩いています。恥ずかしがる必要なし!


パワーウォーキングでは、肘を90度にまげて大きく振りながら歩くのですが、これが、最初は結構気恥ずかしい。別に誰もこちらのことなんか気にしていない、とわかってはいるものの、人とすれ違うときには手の振りを小さくしちゃったりして。
でも、しばらくやっていたらそれにも慣れてきて、10月にしては暖かい陽気の中、汗をかきながらの湖一周です。

脈拍を気にする

パワーウォーキングで理想の心拍数は、前述の通り、最高心拍数(220/分から年齢を引いた数値)の60%から75%。私の場合は、120前後が適切です。

心拍計などは持っていませんし、はじめてのことでペースもよくわからず、ときおり手首に手をあてて、脈拍を気にしながら歩いてみました。

120ぐらいの心拍を保とうとすると、結構なペースでの歩行になります。けれど走っているわけではないので、心臓がバクバクいうようなこともなく、また膝にも負担は感じません。

ちょっと寄り道をしたりする

せっかくだからカメラも持ってきました。

川鵜

川鵜が飛んでいました。


前述のとおり、汚濁が進んだとされる湖ですが、そんなことを感じさせない風光明媚な部分も持っています。水鳥や魚のはねる様子なども見られます。毎日続けると、七十二候でいわれるような、ちょっとした気候の変化にも、より敏感になるんだろうなあ。

こういうことをしていると心拍数が下がってきてしまいます。ちょっとペースをあげて再スタート。

なんとか一周成功

あちこち撮影で寄り道しながら、およそ一時間後、なんとかゴール。

写真は撮ったけど特に休憩もせず、なんとか歩ききることができました。ふくらはぎに疲れた感じがあるものの、膝や足首等、関節には、やはりそれほど負担もないようです。

今回の歩行ルートを、auの「Run&Walk」というサービスを使って記録してみました。Run&Walkは、心拍数こそはかれませんが、GPS内蔵の携帯電話を持って歩くことで、地図が表示されたり、歩行のペースを教えてくれたり、消費カロリーが表示されたりします。データはインターネット上で確認出来、同時間に歩いて(走って)いる人の人数が表示されたりするので、なかなか励みになります。


佐鳴湖

今回の記録よると、今回の歩行距離は6.3km、消費カロリーは172kcal(餃子4つ分にもならない!)。
実際に歩いてみると、直接カロリーを消費するための運動というよりも、代謝機能や心肺機能を高めて健康を持続するための運動なんだ、ということが実感出来ました。ちょっと疲れて、よく眠れそうです。
「ジョギング三日坊主」の私ですが、これなら続けられそう。またやろう!