びおの珠玉記事

169

グリーンもホワイトもあるアスパラガス

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年05月21日の過去記事より再掲載)

ホワイトアスパラとグリーンアスパラ

アスパラガスは、枝や葉が出る前の若い茎を食用にします。グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスがありますが、これは品種が違うわけではなく、栽培方法が違うだけです。グリーンアスパラガスは若芽を自然のままに日に当てて育てたものです。日に当たることで葉緑素ができて、グリーンになります。ホワイトアスパラガスは発芽したら盛り土をして日に当てないようにして育て、白く軟化させたものです。
グリーンはホワイトより栄養価が高く、ビタミン類、特にビタミンAは、グリーンの方が豊富です。日に当たって育つと、緑黄色野菜特有の栄養素が加わるのです。香りや風味もホワイトより勝っています。
ホワイトは香りは控えめですが、その分うまみがあり、やわらかく味もまろやかです。特有の甘みとほろ苦さがあります。
かつてはアスパラガスといえばホワイトのことでしたが、現在はグリーンが主流で、栄養価が高い健康野菜として、私たちの食生活に定着しています。和洋中を問わずいろいろな料理に活用できるのも、人気の理由ではないでしょうか。ホワイトは缶詰に加工されたものがほとんどでしたが、最近は生のものも出回り始めています。

アスパラガスの歴史

アスパラガスは地中海沿岸地方の原産で、ヨーロッパでは紀元前から栽培されていました。自生のものも含めて、主に薬用として利用されていたようです。
ヨーロッパではアスパラガスといえばホワイトアスパラガスで、春を告げる野菜、春の風物詩として、大切にされてきました。ヨーロッパの春には、日本の「桜前線」のような「ホワイトアスパラガス前線」があり、ホワイトアスパラガスを食べることで春を感じるそうです。
日本に入ってきたのは18世紀後半、江戸時代の中期で、オランダ人によって長崎にもたらされました。「オランダきじかくし」、「西洋うど」、「松葉うど」など様々な和名がつけられました。最初は葉を楽しむ観賞用でしたが、明治時代に食用となりました。北海道開拓の中でアメリカやフランスから種を輸入して栽培の研究が進められ、大正12年、北海道の岩内において、本格的なホワイトアスパラガスの栽培が始まりました。ホワイトアスパラガスはすぐに組織がかたくなって苦味も出てくるため、採取後すぐに加工する必要があり、2年後にはアジア最初の缶詰工場も生産を開始しました。
といっても、一般家庭で食べられるようになるのはもっと先のことです。昭和初期には高級レストランなどでお目にかかる程度、第二次世界大戦中は主食である米やイモの生産に重点が置かれ、ホワイトアスパラガスの生産は激減しました。戦後、供給が復活してからもドイツなどに輸出はしても、一般家庭には普及しませんでした。
しかし昭和30年代に入って食生活の洋風化が進み、それに伴ってアスパラガスの国内消費が増えていきました。当時はアスパラガスといえばホワイトアスパラガスの缶詰でしたが、昭和30年代後半頃から、グリーンアスパラガスも食卓に進出し始めました。生産者側が栽培が楽なグリーンアスパラガスへの転換を図ったことや、緑黄色野菜が健康食品として注目されるようになったことなどから、グリーンアスパラガスの生産量が増え、昭和55年頃にはホワイトとグリーンの生産量が逆転しました。

収穫までに3年

アスパラ畑

アスパラ畑  写真:photoAC

アスパラガスは、種をまいてから収穫まで、なんと3年もかかります。
種から苗を育てて、仮植して1年ほど養成し、そのあと本畑に定植します。さらに1年、茎を伸ばして根株を養成し、3年目にして収穫が可能になります。3年目以降は10~15年ほど収穫できますが、古くなると収穫量が減り、病気にもかかりやすくなるので、10年をめどに改植が必要になります。古株の根は地下1m以上に伸びており、改植は簡単ではありません。
そのように時間と手間をかけて育てられたアスパラガス。ありがたくいただきたいと思います。

アスパラガスの栄養と効能

アスパラガスはビタミンやミネラルを豊富に含む健康的な野菜です。ビタミンA・B・C・E・ルチン・葉酸などのビタミン類、カルシウム・リン・鉄・亜鉛などのミネラルが含まれています。
アスパラガスに含まれる栄養素の中で特徴的なのが、「アスパラギン酸」です。アスパラギン酸はタンパク質を合成するアミノ酸の一種で、うま味の素でもあります。最初にアスパラガスから発見されたので、この名前がつきました。アスパラガスの他にも、じゃがいも、豆類、大豆もやし、砂糖きび、牛肉などの食品に含まれています。
アスパラギン酸は新陳代謝を活発にして、細胞を活性化させます。また、利尿作用や、体内でカリウムやマグネシウムなどのミネラルを運ぶ働きもあります。これらのことから、疲労回復やだるさの解消、スタミナの増強、また美肌の効果もあると言われています。栄養ドリンク剤に含まれていることでも知られています。
また、アスパラガスの穂先にはルチンが含まれています。ルチンには毛細血管を丈夫にする働きがあり、高血圧や動脈硬化の予防に効果があります。ビタミンCと一緒に摂取すると効果が高まりますが、ルチンもビタミンCも水溶性なので、ゆでるときは短時間にする方がよいでしょう。ルチンはポリフェノールのひとつで、抗酸化作用も強いです。また、利尿作用もあります。
さらにアスパラガスは赤血球をつくるのに働く葉酸や鉄分も多く含んでいますので、貧血防止にも有効です。
このように、アスパラガスは栄養価の高い、とても健康的な野菜と言えるでしょう。

アスパラガスの選び方

グリーンアスパラガスは、緑色が鮮やかで濃く、穂先が締まっているものを選びましょう。切り口が乾いていない、みずみずしいものが新鮮です。太くてまっすぐなもの、全体につやのあるものがおいしいです。
ホワイトアスパラガスは、たいてい缶詰として流通していますが、最近は生のものも出回り始めています。太さが均一でまっすぐなものを選びましょう。生のホワイトアスパラガスは缶詰のものより甘みがあり、ほどよい歯ごたえと、ほろ苦い独特の風味があります。
アスパラガスは鮮度が命です。アスパラガスは収穫した後も生長を続け、中の栄養分を使ってしまいます。そのため栄養分はどんどん少なくなり、味も落ちてしまうのです。ですので、新鮮で状態のいいものを選び、買ってきたらなるべく早く食べるのが基本です。
輸入されたものも出回っていますが、外国産のものは流通期間が長くかかりますので、国内産のものがおすすめです。特に、旬の時期の、露地栽培のものを楽しみたいですね。とりたてのアスパラガスは驚くほど甘くて、味も抜群なのです。

アスパラガスの花と実

あまり知られていませんが、アスパラガスの花と実をご紹介します。
アスパラガスは雄株と雌株が別の、雌雄異株植物です。雌株は秋になると赤い実をつけます。

アスパラガスの花と実

アスパラガスの花と実

◆ブログ「晴れたらいいね!」より
アスパラガスの花と実
http://28239hana.blog55.fc2.com/blog-entry-857.html

雌株は実をつけるため消耗が激しく、翌年の萌芽がよくありません。しかし雄株は実をつけないので多くの養分が蓄えており、雌株より多くの新芽が収穫できます。新芽を食用にしている人間から見ると、雄株の方が生産性が高いということになります。そこで生産現場ではバイオ技術を利用して、雄だけのアスパラガスを生み出すことも行われています。

【参考資料】
「アスパラガスの絵本 そだたてあそぼう[48]」
元木悟 編、山福アケミ 絵 農山漁村文化協会、2003年
「旬と薬効 食べもの百科」
保健同人社編集部 編 保健同人社、1993年
「花図鑑 野菜+果物」
芦澤正和、内田正宏、小崎格 監修 草土出版、2008年
「旬の食材 春・夏の野菜」
講談社 編 講談社、2004年
「野菜と果物を『安心』して食べる知恵」徳江千代子 監修 二見書房、2008年

【関連記事】
びおの珠玉記事123回  旬のデータ 春の野菜と果物