びおの珠玉記事

172

6月は梅仕事の季節です

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年06月05日の過去記事より再掲載)
梅

気温と湿度が上がってじめじめする梅雨、そして暑い夏。食欲が落ちてしまいがちですが、そんな時、梅干しがおすすめです。
梅干しの酸味が食欲を呼んでくれます。梅干しは、胃腸の働きを活発にし、唾液の分泌を促して消化を助けるのです。食欲増進に効果抜群です。
また、梅干しには強い殺菌力がありますから、食中毒の防止にも役立ちます。
夏はたくさん汗をかき、塩分やミネラルが身体の外に出て行ってしまいますが、梅干しを食べることで補給できます。

6月は、そんな梅干しを作り始める季節です。
6月が近くなると、店先に梅仕事用のいろいろな商品が並び始めます。ガラス瓶、陶製のかめ、重石、竹製のざる、等々。塩に氷砂糖にホワイトリカー(焼酎)。そして何より、梅。
梅が出回る時期は、梅の種類によっても異なりますが、最近は以前よりも早まっているようです。今年2009年、びお編集部のある静岡県浜松市では、5月半ばくらいからスーパーの店頭で梅を見掛けるようになりました。

昨年の夏「梅の土用干し」を体験し、「来年は最初から梅干しづくりにチャレンジしてみよう!」と決めた私・記者Y。その季節がやってきました。昨年もお世話になった、自然食品店を営むSさんに教えていただきながら、梅干しづくりに初挑戦です。

まずは、梅の収穫

静岡県浜松市にて、5月末の梅の様子

静岡県浜松市にて、5月末の梅の様子


記者の実家に一本の梅の木があります。小さな木で、特に手もかけていないのですが、今年も実をつけてくれました。
この梅の実で梅干しを作ろう!ということで、まずは梅の収穫作業からスタートです。
脚立に乗り、梅の実に手を伸ばします。実をつかんで、ほんの少し力を入れると、「ぷつっ」という小さな音と手ごたえがあり、簡単に実が枝から離れます。強い力も要らず、簡単に枝から取れるので、収穫作業はどんどん進みました。だんだんと袋がいっぱいになっていきます。
収穫

収穫する作業は楽しく、何か豊かな気持ちになりました

この収穫する作業は思いのほか楽しく、自然から恵みをいただくことだからなのでしょうか、何か豊かな気持ちをもたらしてくれました。自然に任せて特に手をかけていないものでもそのような気持ちになるのですから、手塩に掛けて育てた作物を収穫する時の気持ちはいかばかりか…と思いが及びました。
収穫の成果が目に見えるのもうれしいです。実際に採ってみると、木に実がなっているのを見て予想したよりも、はるかに多くの梅の実が収穫できました。
収穫した梅の実

収穫した梅の実


数日後、いよいよ梅仕事です。たくさんの梅が採れたので、梅干しの他、梅酒と梅シロップを作ることにしました。
梅干しには黄色く熟した梅を、梅酒・梅シロップには青い梅を使います。そこで梅を、黄色く熟したものと、青いものとに分けました。
熟した梅と青い梅

黄色く熟した梅と、青い梅を分けました

梅干しづくり : 梅の塩漬け

はじめに、黄色く熟した梅で、梅干しづくり、梅の塩漬けをしました。
今回使った材料は次のとおりです。

・梅 4kg
・塩 720g(梅の重さの18%)(沖縄の海水塩)
・焼酎 80cc(35度のもの)(玄米焼酎)


①まず、竹串を使って、梅のへたを取り除きます。

梅のへた取り

梅のへたを取り除きます


②流水で洗います。
洗うために梅を水につけますが、この時、思いがけない美しい梅の姿を見ることができます。Sさんからそのことをあらかじめ聞いていたものの、それを目の当たりにして、思わず、「本当だ、キレイ~」と声が出ました。
梅が水をはじいて、まるで透明なガラス玉のように見えるのです!
空気の層で覆われた梅の実

思いがけない美しい梅の姿(青梅の写真です)


ガラスみたいな見た目

梅が水をはじいて、まるで透明なガラス玉のように見えます


Sさんは、「赤じその紫色のアク汁もそうですが、梅干しを作る中で、こういう美しい瞬間に、何度か遭遇するんです」とおっしゃっていました。

③その後、アク抜きをするため、また実離れをよくする(実を種から離れやすくする)ため、2時間ほど梅を水につけておきました。
④ざるに空けて水を切り、清潔なふきんで梅についている水を拭き取ります。

タオルふきんで拭く

梅についている水を拭き取ります


⑤梅を漬ける容器(陶製のかめ)、ふた、重石を消毒します。
沸かして、熱湯消毒をしました。次に、焼酎をかめの中に入れ、手で全体に行き渡らせ、アルコール消毒をしました。ふたの内側と重石も、同じように焼酎で消毒します。
この焼酎は後で梅の消毒に使いますので、ボウルに移しておきます。
カメにお湯をかける

かめを熱湯消毒します


焼酎をかける

熱湯消毒の後、焼酎でアルコール消毒します


⑥かめの底に塩をふります。
塩をふる

かめの底に塩をふります


⑦先ほどの焼酎を入れたボウルに、少しずつ梅を入れ、転がして梅全体に焼酎をからめます。その後、梅に塩をすりこみます。
焼酎をからませることで梅が殺菌され、塩もなじみやすくなるそうです。
梅に塩をすりこむ

梅に焼酎をからめ、塩をすりこみます


⑧焼酎をからめ、塩をすりこんだ梅を、かめの中に並べていきます。一段並べ終わったら、上から塩をふります。そしてその上に、また梅を並べていき、一段並べ終わったら塩をふります。この繰り返しで、梅をかめの中に詰めていきます。
塩はだんだん下に沈んでいきますので、上へ行くほど多くふるようにします。最後は、残った塩を全部ふります。
梅を塩をカメに入れる

梅をかめの中に並べ、上から塩をふるのを繰り返します


塩で蓋をする

最後は、残った塩を全部ふります


⑩上から、梅の重さと同じくらいの重さの重しをのせます。
重しを乗せる

梅の重さと同じくらいの重さの重しをのせます


⑪ふたをして、上から紙をかぶせて覆い、ひもで結んでおきます。
紙に日付や分量を書いておくとよいそうです。
紙の蓋に日付と内容を記載

ふたをして、上から紙をかぶせて覆い、ひもで結んでおきます


これで梅の塩漬けの作業は完了です。
かめは家のいちばん涼しい場所に置いておきます。1日に1回くらい、かめの中の様子を見るようにします。塩漬けしてから4~5日後には白梅酢が上がってくるそうです。楽しみです。
白梅酢が上がったら、重石を半分に減らします。そして赤じそが出回る頃まで、そのまま保存しておきます。時々かめの中の様子を確認します。

この後、赤じそが出回り始めたら、赤じそで色をつける「赤じそ漬け」の作業、そして梅雨が明けて夏の土用になったら、「梅の土用干し」の作業が待っています!
初挑戦の梅干し、果たしてどんな梅干しが出来上がるのか、わくわくします。

梅酒・梅シロップづくり

梅の塩漬けが終わった後、青い梅を使って、梅酒と梅シロップも作ってみました。下準備として、梅干しの時と同じように、梅のへたを取り、流水で洗って水を切り、梅についた水をふきんで拭き取ります。水に漬けておく必要はないそうです。

まずは梅酒。今回使った材料は次のとおりです。

・梅   1.5kg
・砂糖  500g(和砂糖)
・焼酎  1.8ℓ(玄米焼酎)

砂糖は、氷砂糖を使うのが一般的ですが、今回は和砂糖を使ってみました。また、この分量ですと砂糖は600gくらいが一般的なようですが、甘さ控えめということで少し減らして、500gにしてみました。

ガラス瓶に梅と砂糖を入れる

今回は和砂糖を使ってみました


消毒したガラス瓶に、梅・砂糖・焼酎の順番で入れ、ふたをし、少し揺すってなじませます。これで完了です。梅干しに比べると簡単です。
やはり家のいちばん涼しい場所に置いておきます。時々、瓶を揺すって、溶けた砂糖を平均するように混ぜるとよいそうです。
3ヶ月後から飲めますが、長くねかせるほど味が深まり、まろやかになり、おいしくなるので、3年以上ねかせるのが望ましいそうです。3年……待ちきれないような気がします。
次に、梅シロップを作りました。
一つ一つの梅に、上から下まで、包丁で十字に切れ込みをいれます。こうすると、梅のエキスが早く抽出されるそうです。
消毒したガラス瓶に、切り込みを入れた梅と、蜂蜜を入れます。砂糖を使う場合も多いようですが、今回は蜂蜜にしてみました。今回の分量は、梅2kg、蜂蜜1050g。実は梅の分量に対して蜂蜜が足りなかったのですが、とりあえずこれでやってみることにしました。
梅シロップは、10日くらいすれば、梅のエキスが抽出されて飲めるようになるそうです。梅酒を長い時間ねかせて、おいしくなるのをじっと待つのも楽しみですが、漬け込んで少しの時間が経てば飲めるようになる梅シロップも、うれしい存在です。
10日くらいして梅のエキスが抽出されたら、鍋に移して、液の表面が静かに動く程度の火加減で15分くらい加熱して殺菌すると、発酵せず、アルコール化することもなくて、よいそうです。
飲む時には水で薄めます。暑い日には氷を浮かべるのもいいですね。記者の実家では夏の定番で、これを「梅ジュース」と呼んでいます。暑い夏においしく飲めて、元気が出ます。
梅酒と梅シロップ

右が梅酒、左が梅シロップです


以上の梅仕事、朝から始めて夕方まで、1日がかりでした。なかなか大変ではありましたが、とても充実した1日でした。
毎年やってくる梅仕事の季節。旬の梅を使って、手間と長い時間をかけて、おいしく身体によいものを作る。とても贅沢で、そして豊かなことのように思います。
梅仕事を毎年の習慣にできたらいいな、と思いました。