びおの珠玉記事

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春分と春分の日、そしてお彼岸――ぼたもちも作ってみました

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2010年03月21日の過去記事より再掲載)

ぼた餅

二十四節気の「春分」。
そして国民の祝日「春分の日」、お彼岸の中日ちゅうにちでもあります。

春分と春分の日、そしてお彼岸にはどのような関係があるのでしょうか。
また、お彼岸には付き物の「ぼたもち」も作ってみました。

改めて、「春分」「秋分」とは何か

まず、「春分」・「秋分」とは何かということについて、見てみたいと思います。

太陽は星々の間を移動しています。その通り道を「黄道」といいます。
また、地球の赤道を天にまで延長したものを「天の赤道」といいます。

黄道と天の赤道は、それぞれが傾いているために2点で交わります。
その2つの交点のうち、太陽が南から北へ赤道を通過する点が「春分点」(黄経0度)、太陽が北から南へ赤道を通過する点が「秋分点」(黄経180度)です。

そして、太陽が春分点・秋分点の上を通過する瞬間が、それぞれ「春分」「秋分」と定義されます。
「春分」「秋分」を含む日のことを、それぞれ「春分日」「秋分日」と呼びます。

春分日・秋分日には、太陽は赤道の真上を通ります。
地球から見ると、太陽は真東から昇って真西に沈み、昼の長さと夜の長さがほぼ等しくなります。

春分日を境に、昼が少しずつ長くなっていきます。
また、秋分日の場合は、この日を境に、夜が少しずつ長くなっていきます。

地球の春分の日の太陽光の当たり方

春分の日の太陽光の当たり方。

春分・秋分と、国民の祝日としての「春分の日」・「秋分の日」

さて、一般的には、春分・秋分は「春分の日」・「秋分の日」という祝日として馴染み深いですよね。

国民の祝日としての春分の日・秋分の日は、1948(昭和23年)に公布・施行された「国民の祝日に関する法律」(祝日法)によって制定されました。

祝日法には春分の日・秋分の日の月日(何月何日か)は明記されておらず、春分の日は春分日を、秋分の日は秋分日を採用するとされています。
ちなみに、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」ことを、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ」ことを趣旨としています。

祝日としての春分の日・秋分の日の日付は、国立天文台が算出する春分日・秋分日を基にして閣議で決定され、前年の2月1日(2月のはじめの平日)に、春分の日・秋分の日の日付が明記された「暦要項れきようこう」が官報に掲載されることによって、正式に決まります。

昨年2009年2月1日の官報に掲載された暦要項によって、今年2010年の春分の日・秋分の日が正式に決まった、というわけですね。
今年の春分の日は3月21日、秋分の日は9月23日です。

なぜ春分・秋分の頃が「お彼岸」なのか

さて、春分・秋分の頃は、「お彼岸」でもありますよね。
春分・秋分の前後3日、計7日間を「お彼岸」といい、先祖を供養するためにお墓参りをしたり、仏壇にお供えものをしたり、故人を偲んだりします。

春分の日、秋分の日をお彼岸の「中日ちゅうにち」といいます。
また、お彼岸の最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸の明け」と呼んでいます。

ではなぜ、春分・秋分の頃がお彼岸なのでしょうか?

「彼岸」とは「向こう岸」という意味ですが、仏教では、死後の世界であり、現世(「此岸しがん」)に対して、煩悩(この世でのさまざまな欲や悩みなど、心を乱すもの)を捨て去ることができた人が到達する、悟りの世界のことをいいます。

仏教では、仏様や先祖の住む極楽浄土は西にあるとされます(「西方浄土」)。
そして、太陽が真西に沈む春分・秋分には、極楽浄土が近くなると考えられました。

そのため、この時期を「お彼岸」(正式には「彼岸会ひがんえ」といいます)として、お寺では仏様を供養する法要が行われ、家庭では先祖を供養するためにお墓参りをしたり、仏壇にお供えものをしたりするようになりました。
自らが今あることに感謝して、先祖を偲び供養をし、自分も彼岸=悟りの世界に到ることを願って精進する、という意味もあるようです。

また、春分・秋分は昼と夜の長さがほぼ等しい日であり、仏教の「中道」の教えに合うことから、この期間にお彼岸の法要を行う、という説もあります。

そして、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がありますが、この頃は季節の変わり目です。
昔、農家ではお彼岸を目安にして、春の種まきや秋の収穫の時期を決めていました。
今は仏教的な行事になっていますが、はるか昔には日本人の農耕生活に深く根付いた行事だったのではないか、とも言われているそうです。

お彼岸にお供えする「ぼたもち」と「おはぎ」

さて、お彼岸といえば、「ぼたもち」「おはぎ」が付き物ですよね。
お彼岸の時期になると、お店にもたくさん並びます。

■「ぼたもち」と「おはぎ」

ぼたもちとおはぎ――2つの名前がありますが、違うものでしょうか?
大きく括って、基本的には同じものと考えてよいでしょう。お餅を小豆の餡でくるんだ和菓子です。
記者は、これまで「ぼたもち」と「おはぎ」という言葉を、特に区別して使っていませんでした。

では、なぜ2つの名前があるのでしょうか。
その季節に咲く花にたとえて、春、牡丹が咲く頃のものを「牡丹餅」、秋、萩の花が咲く頃のものを「お萩」と呼ぶ、というのが最もポピュラーな説ですが、その他にも諸説あります。

・こしあんがぼたもち、粒あんがおはぎ(またはその逆)

・大きいものがぼたもち、小さいものがおはぎ
・小豆餡をまぶしたものがぼたもち、黄な粉を用いたものがおはぎ
・中の米の種類によって区別し、もち米で作るとぼたもち、うるち米で作るとおはぎ
・中の米の状態によって区別し、完全に餅の状態まで搗いたもの(「皆殺し」)をぼたもち、搗いた米の粒が残っているもの(「半殺し」)をおはぎ 

等々。

また、「ぼたもち」の名前の由来として、

・「ぼた」とは稲を脱穀した時のわら屑に混じる二級米のことで、米のつぶが割れたものを「ぼた」と呼び、そのような米を利用して作ったので「ぼたもち」

・サンスクリットの「bhukta」やパーリ語の「bhutta」などの「飯」の意味の言葉から「ぼた」となり、「mridn’ mudu」などの「やわらかい」の意味の言葉から「もち」となり、「ぼたもち」となった

などの説もあるようです。

■お彼岸にぼたもち・おはぎを食べるのは?

では、お彼岸にぼたもち・おはぎを食べるということには、どんな由来があるのでしょうか。

小豆の赤い色は、古来より、邪気を祓う、災難を除けると信じられていました。
この信仰が、先祖の供養と結びついたといわれています。

以前に「びお」で、6月晦日の「夏越しの祓(なごしのはらえ)」の際に食べる「水無月」という和菓子をご紹介しましたが、この「水無月」に使われる小豆にも、同じ意味合いがありました。

そして、昔は、米はハレの日の食べ物でしたし、砂糖は貴重品であったことなどから仏様や先祖に供えるものでした。
砂糖が庶民にも流通し始めた江戸時代頃から、お彼岸にぼたもち・おはぎをお供えし、食べるという風習が定着していったようです。

また、先にも少しふれましたが、春のお彼岸は農作業を始める時期で、秋の彼岸は収穫の時期にあたりました。そのため、春には収穫をもたらしてくれる山の神などをお迎えし収穫を祈念するために、秋には収穫を感謝するために、ぼたもちやおはぎを作ったとも言われています。

お彼岸に、仏壇やお墓に供えて先祖の供養をするというのが本来の意味で、私たちはそのお下がりをいただくのですね。

「棚からぼたもち」のような「ぼたもち」という言葉を使うことわざ、ぼたもちが登場する民話などは数多くあって、ぼたもちが日本人にとって身近な存在であったことが窺えます。

ぼたもちを作ってみました!

春のお彼岸にあわせて、粒あんのぼたもちを作ってみました。

お恥ずかしながら、記者はこれまで自分で小豆を炊いてあんこを作ったことも、ぼたもちを作ったこともありませんでした。
そこで、まずはWebで作り方を調べてみたところ、かなりの情報がありました。
作り方の基本的なところは大体同じと言っていいと思いますが、工程の細かいところは人によって様々。
どうしたものか…と思いましたが、いろいろな作り方を参考に「こうしてみたらよさそうかな」と思う方法をピックアップして、また、ぼたもちを作ったことのある先輩からアドバイスをいただいて、挑戦してみました。

そのようなわけで、「これは私の作り方と違っているな」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そう思われる方は、ぜひコメントをいただけたらと思います。
これからぼたもち作りに挑戦してみよう!という方にとって、よきアドバイスになると思いますので。

■材料

次の材料を使いました。

<ぼたもち 約18個分>

  • もち米  2合
  • うるち米 0.5合(七分搗きの米を使いました)
  • 小豆   250g(北海道産)
  • 砂糖   170g(「和砂糖」を使いました)
  • 塩    適量

今回は、水飴(玄米水飴)も少し入れてみました

■もち米とうるち米を洗い、一晩水に漬けておきます

左がもち米、右がうるち米

左がもち米、右がうるち米

もち米とうるち米の割合は、うるち米が全体の2割になるようにしました。(もち米8:うるち米2)
もち米だけだと次の日には固くなってしまうとのこと。うるち米を入れることで、固くなりにくくなるそうです。

もち米とうるち米を合わせて洗い、通常ごはんを炊くときと同じ水加減で、一晩水に漬けておきます。

■小豆をざっと洗い、たっぷりの水を入れて煮ます

小豆

小豆はかたく、つるつる、つやつやです。
たくさんの小豆の粒をさわっていると、それだけで何やら幸せで、癒されるような気がしました。

虫食い、ゴミなどを取り除き、小豆をざっと洗います。
鍋に小豆とたっぷりの水(小豆の4~5倍くらい)を入れ、中火で煮ます。

今回は土鍋を使いました。
土鍋は、小豆にゆっくり火を通し、豆をふっくら仕上げるのに適しているそうです。

小豆を水に漬けるかどうかについては、「一晩水に漬ける」「小豆については、水に漬ける必要はない」「30~60分くらい水に浸しておく」などいろいろな意見がありましたが、今回は水に漬けずに、ざっと洗うだけですぐに煮ました。

小豆を煮ていると、だんだん水が茶色くなっていきます。

■沸騰してきたら、さし水をします

沸騰してきたら、浮いてきた豆が沈むまで差し水をしました。
これを「びっくり水」または「しわのばし」ともいうそうです。

急激な熱で表面の皮だけふやけて付いたシワをのばし、豆の芯までよく火を通すために、差し水をするとよい、という情報を目にしたので、やってみました。
そしてまた沸騰したら差し水、とこれを2~3回繰り返して、沸騰しても豆が浮いてこなくなるまで繰り返す…ということだったのですが、3回差し水をしてもどんどん豆が浮いてきてしまって、最終的には「まあいいや」とあまりこだわらないことにしました。

■再び沸騰し、しばらく煮たら、一度水を捨てます(ゆでこぼし)

小豆の煮汁

その後、再び沸騰し、しばらく煮ると、水はこんな色になりました。かなり濃い茶色で、アクも浮いています。
この水を、一度捨てます(ゆでこぼす)。

これをすることで小豆のえぐみ(渋み)を取れるのだそうです。
(この作業を「渋きり」というそうです。)

水を捨てると、辺りに小豆のいい匂いが漂います。

煮た小豆

■新たにたっぷり水を入れて、アクを取りながら、弱火で小豆がやわらかくなるまで煮ます

新たにたっぷり水を入れて(小豆の4~5倍)、中火にかけ、沸騰したら弱火(ほたる火、ごく弱い火)で小豆がやわらかくなるまで煮ます。

小豆がやわらかくなるまで煮ます

たくさんアクが出てきますので、取ります。

■(適当なタイミングで)お米を炊きます

小豆を煮ながら、適当なタイミングでお米を炊きます。
炊飯器、スイッチオン!

■お米が炊けたら、少し蒸らし、熱いうちにすりこぎで半搗きにします

餅をはんつき

お米が炊けて少し蒸らした後、熱いうちに、水にぬらしたすりこぎで半搗きにします。
搗き具合は、お好みで。

■お米をぼたもちの形にまるめておきます

丸く形成

お米を半搗きにしたら、ぼたもちの形に丸めておきます。
はじめに、作りたいぼたもちの数に応じて、お米をおおよその分量に分けておき、それから丸めました。

このとき、お米が手にくっつかないように手を水(湯冷まし)でぬらすのですが、この水を塩水にすると甘さが引き立っておいしくなる、という情報があったので、そうしてみました。

■小豆がやわらかくなったら、味をみながら、数回に分けて砂糖を入れます

さて、小豆に戻ります。
弱火でじっくり煮て、小豆がやわらかくなったら、味をみながら、数回に分けて砂糖を入れ、木べらでまぜます。

やわらかさの目安は、小豆を指でつまむと簡単につぶれるくらいまで。
さらに、芯がないかどうか、食べてみました。

小豆がまだやわらかくなっていないうちに砂糖を入れてしまうと、小豆がやわらかくならないそうです。
要注意です。

砂糖は、味をみながら少しずつ入れました。
実は当初、230g用意していたのですが、かなり甘くなったと思ったところで入れるのをやめました。
実際に入れたのは170gほど。

熱いときは多少甘さを感じにくく、冷めたときの方が甘さを感じるそうなので、その点も考慮しました。

一方で、あんこの段階では甘く感じても、最終的にお米と合わせたときにはお米で甘さが薄まります。お米と合わせたときにも、それなりの甘さがないと物足りなくなってしまいます。
ですから、この段階ではそれ相応の甘さが必要。その点も考え合わせました。

また、「砂糖を少しだけ減らしてその分水飴を入れると、あんこにツヤが出ておいしくなる」という情報がありましたので、砂糖の後、小さじ山もり2杯ほど、玄米水飴を入れてみました。

■煮つめて水分をとばし、水分が少なくなったら塩で味を調えます。さらに水分をとばします

砂糖を入れた後、さらに弱火で煮つめて、水分をとばします。
水分が少なくなったら、塩少々を入れて、味を調えます。

水分が少なくなると焦げやすくなります。この段階くらいから、鍋にはりついて、木べらで鍋底の小豆をはがすようにしながら、さらに水分をとばしていきます。

あんこになりつつある

大分、水分が少なくなってきました

■適当な固さになったら火を止めます

つぶあん

木べらで横に一文字を書いたときに、一回鍋底が見え、すぐに小豆が戻って見えなくなるくらいの固さになったら、火を止めます。

小豆は、冷めると、熱い状態のときよりかたくなりますので、少しゆるいぐらいで大丈夫なのだそうです。

あんこ完成

あんこが出来上がりました!

■あんこを広げ、丸めておいたお米をのせ、あんこで包みます

晒(てぬぐい)でぼたもちに形成

サラシがなかったので手ぬぐいを使いました。
手ぬぐいを水にぬらし、そこにぼたもち1個分のあんこを広げ、丸めておいたお米をのせ、あんこで包んでいきます。

はじめに、お米のときと同じように、作りたい数のぼたもちに合わせて、あんこを大体の分量で分けておきました。

あんこを大体の分量で分ける

お米全体を包むように、手ぬぐいの上から指で押して、あんこを広げていきます。

この作業を手でやってもいいですし、ラップを使ってもいいですが、手ぬぐいを使うと包みやすかったです。手でやるより、きれいにできるように思います。

■きな粉のぼたもちも作りました

きな粉のぼたもちも作りました。

水にぬらした手ぬぐいの上に、ぼたもち1個分のお米を広げます。
1個分のあんこを丸めてお米の上にのせ、あんこをお米で包みます。

その後、表面にきな粉をまぶして出来上がりです。

今回、きな粉には砂糖も塩も入れませんでした。
あんこが甘いので、きな粉に砂糖を入れると甘すぎになってしまうかもしれないのと、砂糖を入れた場合、時間が経つと水分が出てべとべとになってしまうとのことでしたので。

ぼたもち、出来上がりました!

ぼた餅

■ぼたもちを作ってみて

今回、初めてぼたもちを作りましたが、なかなか楽しかったです。

今回は初めてだったので少し手間取りましたが、慣れてこれば、そんなに難しくなく、わりと手軽に作れるように思います。

自分で作ると、あんこの甘さやお米の搗き具合など、自分の好みに合わせて調整できるのがいいなと思います。

わりとたくさんの数のぼたもちができますので、家族で食べたり、親戚や友人、ご近所などにお裾分けするのもいいですよね。
自分で作ったぼたもちをご先祖さまにお供えするというのも、いいなと思います。

あんこときなこのぼたもち

今回作ったぼたもち、甘さ控えめで、なかなかおいしくできたかなと思います。
初めてにしては上出来。(自画自賛ですみません…)
いろいろな人に食べていただきましたが、好評を得て、うれしかったです。
人に喜んでいただけるというのが、またうれしいものですね。

これから、お彼岸のときに、時々作ってみようかなと思っています。
みなさんも、ぼたもち作り、いかがですか?

著者について

益子義弘

益子義弘ますこ・よしひろ
建築家・益子アトリエ主宰
1940年 東京に生まれる。1964年 東京藝術大学建築科卒業。1966年、同大学院修了。 吉村研究室助手を経て、永田昌民とM&N設計室を開設し、建築家として活動。 東京藝術大学名誉教授。
主な著書 /『建築への思索-場所を紡ぐ』(建築資料研究社) 『湖上の家、土中の家-世界の住まい環境を測る』(農文協) 『住風景を創る』(彰国社)ほか

連載について

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