びおの珠玉記事
第11回
難しくないキュウリのぬか漬け
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009/06/21の過去記事より再掲載)
キュウリには「白」と「黒」があった
キュウリというと、食べ方、品種ともあまり選び方がないように思いがちです。
キュウリの特徴ともいえる「いぼ」が、白いものと黒いものがあり、それぞれ本来は白は夏、黒は春のキュウリでした。
それぞれ旬が異なり共存していたのですが、どちらの品種もハウス栽培で年中出回る様になると、生食用の食感に勝るといわれる「白いぼ」に人気が集まり、今では市場に出回るほとんどが白いぼとなっています。
ブルーム(白い粉)
昔のキュウリは、白い粉のようなものがついていることが多かったのですが、最近のキュウリはピカピカです。この白い粉は、ブルームと言われるものですが、農薬と勘違いされ、消費者に嫌われることから、専用の台木に接ぎ木をして、ブルームのでないキュウリ(ブルームレスキュウリ)がつくられるようになりました。
本来、ブルームが出る品種では、収穫初期のブルームのないものがおいしいといわれていますが、ブルームレスでは、そもそもブルームが出ないので、ブルームの有無でおいしさをはかるのは難しいといえます。
生産者の手間も増え、消費者もブルームの有無で善し悪しを見分けることも出来なくなり、いったいこのブルームレスキュウリは誰にメリットがあるのでしょうか。
曲がったキュウリ
先のブルームの話と関連して、「曲がったキュウリ」問題があります。これも流通の課題です。
お店で品物を売る場合、ほとんどのキュウリは「1本いくら」という形で売られています。たとえば10cmのキュウリと25cmのキュウリがそれぞれ同じ値段で売るというわけにはいきにくく、規格を定め、取引をしやすくしているのです。これはキュウリに限らず農作物では一般的に行われていることです。
たとえば、キュウリの場合は、長さ、重量、曲がりといった項目が出荷基準があり、基準によってランクが決められます。同じ長さでも、曲がりが強ければランクが落ちてしまうのです。
こうした現象は何も日本に限った話ではなく、EUはより厳しい出荷基準があり、EU内では曲がったキュウリは売ることが出来ません。しかし、これはあまりにも行き過ぎた規制だということで、この7月から規制が緩和され、曲がったキュウリも販売出来る様になります。
ちなみにキュウリが曲がるのは、支柱や巻ひげがあたって曲がってしまったり、日射量不足、栄養の過不足、草勢と着果のバランス不足などが原因といわれています。
曲がったキュウリでも味は変わらない、という話を聞きます。しかし、日射や栄養の過不足が原因で曲がっているとすれば、味にも当然影響が出る様に思えます。
この「曲がったキュウリ」も、ブルーム付きと同じ様に、市場から嫌われてしまっているようです。
消費者のせい?
ブルームにしても、曲がったキュウリにしても、以前は普通に流通していたものが、「マーケットで受け入れられない」というような理由で、現在のようなことになってきています。
しかしながら、現在スーパーマーケットに行っても、ブルームがあるキュウリ、あるいは曲がったキュウリそのものが売っていないことが多いのです。お店を選べば売っているところもあるかもしれません。しかし、大多数の小売店では、「きれいな」キュウリが売られています。つまり、消費者は、受け入れる・受け入れないの選択も出来ない状態です。
八百屋で野菜を買えば、ブルームのことも、曲がったキュウリのことも教えてくれるでしょう。料理方法にあった品物選びのお手伝いをしてくれます。しかし、現在の流通の中では、大量におかれている野菜を自分だけで選別しなければならず、「見た目がきれい」を選ぶのも無理もないのかもしれません。
これは、消費者に責任があるのでしょうか? 「少し前の消費者」が、そういう選択をしたために、小売店はそれにあわせて、「きれい」を並べる様になったのだと思います。そこには、消費者の無知もあったのでしょうが、小売が説明を放棄したことも大きな要因です。
最近の消費者の調査では、形の悪い野菜でも、味が同じなら買う、安ければ買う、という傾向も見られます。
まっすぐでブルームのないキュウリばかりに触れて来た我々には、キュウリの目利きは大変かもしれません。けれど、消費者も勉強して、必要な食材を滴価で手に入れられる様にしたいですし、流通段階では、「説明」を放棄せず、また「規格外」も売りきる仕組みをいっそう励んでいただきたいと思います。
きゅうりのぬか漬け
キュウリはその食感から生食で利用されることが多い野菜ですが、中華料理では炒め物にも使われますし、大きくなりすぎたキュウリは煮物にするなどの利用方法もあります。
その中でも、旬な食べ方、ということで考えると、ぬか漬けにとどめを刺します。
ぬか漬けは、ぬか床の中の乳酸菌や酵母菌によってうまれる旨味が特徴です。
ぬか床には、ぬか漬けに必要な好気性の乳酸菌や酵母菌のほかにも、嫌気性の腐敗菌も含まれるため、かき混ぜることで好気性の菌を助け、嫌気性の菌の繁殖をおさえます。
この手入れと、手につくぬかの臭いのせいか、どうも敬遠されることが多いようで、核家族化とあいまってぬか漬けをつくる家は減ってしまい、全く食べないか、食べるとしてもお店で買ってくる、という人が増えました。
でもね、ぬか漬けは自分でつけることをお勧めします。紹介するお手軽方式でやればそんなに大変ではないし、味もコントロール出来るし、何より安い。よくぬか漬けを食べるなら、自分で漬けましょう。
気負わずできるぬか漬けの作り方
ぬか床は、原則として毎日の手入れが必要です。これが面倒でやりたくない、という人も多いでしょう。とくに夏場はちょっと放っておくだけで、接着剤のような刺激臭を放つ様になってしまいます。
かくいう私も、過去に何度か夏場にぬか床をダメにしてしまいました。
でもどうしてもぬか漬けが食べたい!
というわけで、夏場は冷蔵庫を活用しています。
菌をコントロールする面白さ
ぬか床の適温は20度前後といわれています。冷蔵庫の温度は5度程度、野菜室でも10度以下程度なので、冷蔵庫では温度が低すぎます。
しかし、ゆっくりではあるけれど、冷蔵庫でも菌の熟成はすすみ、ぬか漬けをつくることができます。
ちょっと邪道な感じもしますが、初心者の方は、最初は完全に冷蔵庫だけでつくるつもりで挑戦してもいいでしょう。
慣れてきたら、(冷蔵庫の)外にも出してあげてください。
日中は冷蔵庫に入れておき、夜だけ出しておくやり方や、手入れがしやすい週末だけ出しておくほうほうなどもあります。
ただ、温度があまり頻繁に変わる状況だと、漬け時間の判断が難しくなりますから、自分のリズムを作った方がいいでしょう。
我が家では、何度かの失敗を経て、ようやく数年持たせているぬか床が出来ました。
今年はまだ涼しいこともあり、あまり冷蔵庫に入れていません。
我が家のぬか床では、夕食後に一部皮をむいて板ずりしたキュウリを漬けて、翌朝にちょうどいいぐらいです。
これがしばらく冷蔵庫においていたものだともっと長くなりますし、気温があがればもう少し早くなります。
なんどか漬けているうちに野菜の水気でぬか床が緩くなりますから、ぬかを足したり、塩を足したりして調節します。この加減でも、漬け時間は変わってきます。
面白いのは、同じぬかからでも、家によって味が変わること。家によって、いる菌が違うんですね。うまくいっているぬか床をもらってきても、我が家でおなじように漬かるかどうかはわかりません。
ぬか漬けにマニュアルはありません。キュウリは何時間、ナスは何時間、などというのは目安でしかなく、ぬか床の健康状態と野菜の下処理で、全然変わってくるものなのです。ぬか床に手を入れて、温度や味をみて、「ああ、今日はこのぐらいでつかりそうだな」との予想があたって、うまいぬか漬けが出来たときの醍醐味!
そんなわけで、少しぐらい手を抜いても、ぬか漬けは作れます。もちろん手を入れれば入れる程、よいぬか漬けが出来る様になります。手をかけて出来たぬか床は、家の大切な財産です。
自分で漬けた旬のキュウリをボリボリっと食べる。贅沢ではないですが、幸せですね。