びおの珠玉記事
第12回
改めて、お盆。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2010年08月13日の過去記事より再掲載)
毎日暑いですね。
子どもたちや学生さんはもうとっくに夏休みが始まっていますが、多くの社会人にとっては、ようやく待ちに待った(?)夏休みの頃ですね。
この夏休みのことを、「お盆休み」ともいいます。
そう、この時期は先祖や亡くなった人の霊を迎え、供養する「お盆」の時期でもありますよね。
実は、お盆は、お正月と並んで日本人にとって最も重要な行事とされています。
「されていました」と言う方がしっくりくる方もいらっしゃるかもしれませんが…。
この時期に、お盆について、改めて目を向けてみます。
改めて、お盆とは
お盆は、先祖や亡くなった人の霊を家に迎え、供養する行事です。
盆供養の仕方は、地方によっていろいろな風習がありますが、一般的に、迎え火をたいて霊を迎え、座敷に「盆棚」(ぼんだな)を作って先祖を祭り食物を供え、僧を招いて「棚経」(たなぎょう)という盆のお経をあげてもらい、墓参りなどをし、送り火をたいて霊を送る、とされています。
お盆は、かつて旧暦の7月に行われていました。
現在では新暦で、月遅れの8月に行うところが多いようですが、7月に行う地域もあります。
盆行事の期間は、13日から15日までとする地方が一般的ですが、盆の始まりを1日とするところや7日とするところ、終わりを20日、24日の地蔵盆、30日とするところなどさまざまです。
もともとは7月の1か月全てが盆行事の月だったのですが、次第に短くなっていき、それにつれて盆の行事の一部だった七夕の行事が独立したものと考えられています。
なお、沖縄県では現在でも、昔どおり旧暦7月13日から15日までを守っています。
お盆の由来
一般に、盆は仏教の行事「盂蘭盆会」(うらぼんえ)の略だと考えられています。
しかし、日本には仏教が伝来する以前から、固有の信仰に基づく盆の行事がありました。
昔の日本人は1年を2つの季節に分けて考えていました。最初の季節の始まりが正月(立春の頃)であり、二つ目の季節の始まりが盆でした。
このことから、正月と盆は二大行事でした。盆は、正月と並んで日本人にとって最も重要な行事だったのです。
「盆と正月が一緒に来たよう」「正月三日、盆二日」などの言葉にも表れているように、盆と正月には昔から特別な意味があったのです。
正月には精霊(祖先の霊)を年神として祭り、盆には精霊を迎えて畑作の収穫を感謝したり秋の稲作の豊作を祈り、天に戻ってもらうという風習がありました。
本来の盆は、新しい季節の始まりにあたって祖先の霊を迎えて祭る祖霊祭りであり、正月と同じようにめでたい行事だったのです。
1年を2つに分けている正月と盆の行事がよく似ていることを示した表がありましたので、ご紹介します。
盆の行事 | 正月の行事 | |
---|---|---|
迎えるもの | 先祖、亡くなった家族 | 年神、お正月様 |
迎える準備 | 1.墓掃除 2.盆花市が立つ 3.盆花を飾る 4.墓や門口で迎え火を焚く |
1.煤はらい、大掃除 2.年の市が立つ 3.門松を立てる 4.新しい火を神社からもらう |
祭壇と飾り物 | 1.座敷に盆棚をつくる 2.門口や縁側に精霊棚をおく |
1.座敷に年棚をつくる 2.門口にしめ飾りを飾る |
祭壇の供え物 | 季節の野菜や果物を供える | 新米で餅をつき、供える |
お参りに行く | 寺に墓参りにいく | 神社や寺に初詣でにいく |
行事に参加する人 | 家族、親戚、親しい人 | 家族、親戚、親しい人 |
行事に行なわれる芸能 | 念仏踊り、盆踊り | 獅子舞、大黒舞、万歳(まんざい)、餅つき踊りなど |
送る行事 | 柱松明を燃やす、大文字送り火、灯籠流し | 左義長、とんど焼き、賽の神を燃やす |
このような日本古来の祖霊祭や農耕儀礼と、仏教の「盂蘭盆会」とが一緒になって、民間に普及していったと考えられています。
「盆」という言葉についても、「盂蘭盆会」の略だとする説と、精霊を迎えるときのお供え物をのせる器「瓮(ほとぎ)」を昔の日本語で「ボニ」と言ったのが、「ボン」となったという説があり、お盆の由来が二通りあることが窺えます。
なお、「盂蘭盆会」とはサンスクリット語(梵語、古代インド語)のullambana(ウランバナ。「逆さ吊り」と訳され、大変な苦しみのことを意味します)が語源で、これを漢字で音写したものです。
逆さに吊り下げられるようなひどい苦しみを受けている死者を救うための法要、という意味で、釈迦の弟子、目連(もくれん)が、死んだ母が餓鬼道(がきどう)に落ち苦しんでいるのを救おうとして、釈迦に教えを請い、7月15日に供養をしたのが起源だとされています。
この中国の盂蘭盆会が、仏教伝来とともに日本に入ってきました。
日本で記録に残っている最初の盂蘭盆会は、推古天皇の時代(7世紀はじめ)に行なわれました。
お盆行事は長い間、主に貴族、僧侶、武家などの上層階級によって催されていました。日本にもとからあった先祖の霊を祭る行事と一緒になって、正月と並ぶ二大行事として定着し、現在のような形になったのは江戸時代の頃だといわれています。
江戸時代に入ると庶民の間にも仏壇やお盆行事が普及し、ろうそくや提灯が大量生産されたこともあって、一般の人々の間に定着しました。
お盆は貴重な休日
また、お盆は、休暇の少なかった当時において、重要な休日でもありました。
正月とお盆には、職人や商店に仕える奉公人が親元に帰ることを許されました。それ以外には休みらしい休みはなかったようです。これを「藪入り」(やぶいり)と呼び、正月の藪入りに対して、お盆のものを「後(のち)の藪入り」ともいいました。
このことからも、お盆が正月と並ぶ重要な行事であったことを窺うことができます。
また、旧暦の七夕からお盆の時期は農作業が暇な時期で、農民にとっても安心して休める貴重な時期だったようです。
現在の「お盆休み」も貴重な休日、国民的な休日であることは変わりませんね。
お盆に迎える精霊の種類
さて、亡くなった人の霊魂は、一般的に仏様、精霊様と言われます。お盆の行事は、それを迎えて祭る死者供養、先祖供養のためのものですが、その死者の霊魂には三種類あるとされます。
まず、先祖全ての霊、祖霊で、「精霊」(しょうりょう)、「本仏」(ほんぼとけ)と呼ばれます。
祖霊は子孫の安全と繁栄を守ってくれる霊とされ、祖霊を迎えて祭ることは家族の安全と繁栄を祈ることになります。
次に、前年の盆の後に亡くなった人の霊、死霊(しりょう)です。
死霊は死んで間がなく、まだ十分に精霊化していないので、場合によっては災いをもたらすことがあるとされます。
この仏様は「新仏」(にいぼとけ)、「新精霊」(あらじょうりょう)、「新尊霊」(あらそんりょう)などと呼ばれます。
早く子孫を守る祖霊となれるよう、「新盆」(にいぼん)といって、特別に丁重に祭ります。
もう一つ、家とは関係のない「外精霊」(そとしょうりょう)とか「無縁仏」、「餓鬼仏」と呼ばれる、祭ってくれる人のない霊や、事故や災難に遭って亡くなった人の霊があります。
これは、病気や災難をもたらす好ましくない霊とされていて、この霊を慰め、災厄を起こさないように送り出してしまうためにも、特別な「施餓鬼会」(せがきえ)の行事が必要とされます。
お盆の準備と供養
お盆の準備や供養については、地方によって本当にさまざまなやり方や風習がありますが、ここでは一般的なものを挙げておきます。
<お墓の掃除>
墓地の草を刈り取って、お墓の掃除をします。
<盆棚(ぼんだな)作り>
迎えた祖霊は、多くは仏壇とは別に作られた「盆棚」に祭られます。
盆棚は「魂棚」(たまだな)、「精霊棚」(しょうりょうだな)、「先祖棚」などとも呼ばれます。
盆棚の作り方は地域によって異なりますが、笹竹で棚を囲い、竹の上部に注連縄を張ります。その縄にほおずき、昆布、そうめん、杉の葉などをかけます。真菰(まこも)のござを敷きます。
棚の奥中央に位牌を置き、その前に盆花、きゅうりの馬となすの牛、季節の野菜や果物、お供え物などを置きます。また、線香立てと線香を置き、お清めのために線香を焚きます。
・盆花
先祖の霊、祖霊の依代としての花を野山からとってくることを「盆花迎え」、または「盆花取り」、「花迎え」といいます。
盆花は「仏花」(ほとけばな)、「精霊花」、「盆供」(ぼんく)などとも言われ、地方によって異なりますが、桔梗、女郎花(おみなえし)、萩、山百合、ほおずき、みそはぎ、撫子などを供えます。
・ほおずき
先祖の霊は、迎え火や提灯の灯りを目印にして帰ってくるといわれていることから、ほおずきを提灯に見立てて盆棚に飾ります。
・きゅうりの馬となすの牛(精霊馬)
きゅうりは足の速い馬を表現し、先祖の霊が早く家に帰って来られるようにという意味が込められています。
なすは足の遅い牛を表現し、先祖の霊にゆっくり戻ってもらえるようにという意味が込められています。
また、先祖の霊が馬に乗って、荷物を牛に背負わせて帰ってくる、ともいわれます。
わら細工の牛馬を飾る場合もあります。
・お供え物
お盆期間中、迎え団子・おはぎ・そうめん・送り団子など、毎日お供え物を変える地方もあるようです。
なお、現在では、仏壇の中に祭ったり、仏壇の前に小机を置いて盆棚を作ったりすることが多いようです。
<迎え火>
精霊を迎えるために、普通は13日の夜に家の前で焚く火を「迎え火」と言います。
先祖の霊が家までの道に迷わないように、という意味が込められています。
また、火を焚くことのできない家では、電気の提灯を軒先に下げれば霊をお迎えできる、とされています。
<お墓参り、親戚の盆棚へお参り>
できれば家族揃って、お墓参りに行きます。
また、親戚の盆棚へお参りに行きます。
<送り火>
お盆の終わる15日の夕方、または16日の朝に、迎えていた先祖の霊が無事にあの世へ戻れるように、迎え火と同じ場所で送り火を焚きます。
京都や箱根など各地で行われる「大文字焼」も、もとは盆の精霊を送る火祭りの行事です。
また、仏教の108の煩悩に基づく108本の松明をともす「百八燈」(ひゃくはったい)、多くの灯籠に灯をともす「万灯籠」(まんどろ)などの行事も各地で行われます。
<精霊流し>
お盆の最後の日の夕刻に、「精霊流し」、「灯籠流し」を行う地方があります。
わらや木などで作った「精霊舟」、「灯籠舟」に盆棚の飾り物や供え物をのせて川や海に流し、祖先の霊を送り出す儀礼の一つです。
精霊は海のかなたにあるあの世から舟に乗ってやってきて、盆が終わるとまた舟に乗って西方浄土へ帰っていく、と信じられていました。
<新盆(にいぼん)>
前年のお盆以降に死者が出た家では、「新盆」(にいぼん)、あるいは「初盆」(はつぼん)、「新盆」(あらぼん)といって、通常のお盆よりも手厚く供養します。
新盆のときは、通常のお盆よりも早くから用意をして、遅くまで行事が続きます。
また、盆棚も「新棚」(にいだな)といって、通常のものより特別に立派に作ります。
その他にも、新盆の家には近所の人や親戚などが提灯を贈ったり、盆見舞いをしたりします。
<施餓鬼(せがき)供養>
先に触れたように、祭ってくれる人のない「無縁仏」や、事故や災害に遭って亡くなり成仏できない「餓鬼」は、病気や災難をもたらす特に危険な存在とされ、丁寧に祭られます。
無縁仏や餓鬼を祭るには、「餓鬼棚」(がきだな)という特別の盆棚を作ります。
また、寺では、無縁仏や餓鬼を送り出すために「施餓鬼供養」を行います。
お施餓鬼とは、自分のみが幸せであればそれでよいという考えを見直すことの大切さを意味しているとされます。
各地のお盆行事
さて、お盆にまつわる行事、風習は、全国各地に実にさまざまなものがあります。
その一部をご紹介します。
<盆花市>
盆が近付くと、盆花市が立ちます。
<長崎のむかえ盆>(長崎県長崎市/8月13日)
墓地に提灯を飾り、夕方に火をともして家族そろって先祖を迎えます。
<精霊流し>(長崎県長崎市/8月15日)
盛大に行われる行事として有名です。竹や木、ワラなどで作った舟を提灯や花で豪華に飾り立てます。これを「どーい、どーい」の掛け声と大きな爆竹の音とともに、大勢の男たちが市中を引き回します。
▼「ナガジン」発見!長崎の歩き方:「長崎的盆風景」
http://www.at-nagasaki.jp/nagazine/hakken0308/index.html
<お砂盛り>(神奈川県秦野市など/7月から8月の盆の期間)
門口に木箱をおいて階段をつけ、それに砂を盛って造花やお供え物をのせます。盆の精霊を迎える祭壇です。
<千灯(せんどう)供養>(京都府/8月23日、仏野念仏寺)
無縁仏の霊を慰めるために石仏や石塔に一つ一つ蝋燭をともします。
<五山送り火>(京都府京都市/8月16日)
室町時代ごろから続く精霊送り。京都を囲む五山に「舟形」「妙法」「大文字」「左大文字」「鳥居形」をかたどった送り火を焚きます。
▼京都新聞:五山送り火
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/gozan/
<地蔵盆>(関西地方)
盆の最後を飾る大切な行事として、「地蔵盆」があります。関西地方で盛んで、旧暦7月24日、あるいは8月24日頃に行なわれます。地蔵は子供を守護する仏様なので、この日の行事は子どもが中心です。
中でも、8月23日、24日に京都市で行われる地蔵盆は有名です。
町ごとに辻に安置してある地蔵の前に屋台を組み、花、餅、芋などを供えます。地蔵像を洗い清め、新しい前垂れに掛け替えて、化粧をさせて飾り付けて綺麗にします。お地蔵さんの祠や会場の周囲には、地蔵盆独特の赤い提灯が多く飾られます。
子どもたちが大勢集まり、地蔵堂にお参りし、百万遍の経を唱えたり、数珠を繰ったりした後、みんなでお菓子やごちそうを食べて遊びます。
北陸から近畿にかけては、地蔵に美しく化粧をほどこして「化粧地蔵」と呼び、同じような行事を行います。
▼CAMEL:化粧地蔵
http://camel.jugem.cc/?eid=516
▼AZAIGOUホームページ:おじぞうさんとお化粧
http://www015.upp.so-net.ne.jp/AZAIGOU/jizo/index_C.html
また、
・花背松上げ(京都府京都市/8月15日)
・玉淀水天宮祭(埼玉県寄居町/8月第1土曜日)
・火おんどり(愛知県新城市/8月15日)
・秋田竿燈祭り(秋田県秋田市/8月3~6日)
・あばれ祭り(石川県能都町/7月第1金、土、日曜日)
・弘前ねぷた祭り(青森県弘前市/8月1~7日)
・青森ねぶた(青森県青森市/8月2~7日)
など、さまざまな夏の夜の火祭りは、盆の迎え火、送り火から始まったとも言われています。
念仏踊り・盆踊り
お盆の時期になると、全国各地で盆踊りが行われ、夏の風物詩となっています。
浴衣などを着て楽しく踊り、地域の親睦を深める行事として定着していますが、もともとは、お盆にこの世に戻ってきた先祖の霊を迎え慰め、またあの世に送るために行なわれた踊りでした。
また、先祖への感謝や生きている喜びを表し、自らの災厄を祓うという意味合いもありました。
平安時代に空也(くうや、903~972年)という僧によって始められ、鎌倉時代に時宗(じしゅう)の開祖・一遍上人が広めた「念仏踊り」が、この盆踊りの起源の踊りだとされています。
これに、室町時代から江戸時代にかけて庶民の間ではやった伊勢踊りや小町踊りの要素が加わり、さらにお盆の先祖供養と結びつき、江戸時代以降、にぎやかな盆踊りが全国に広まりました。
現在行われている念仏踊りには、次のようなものがあります。
(「学習に役立つわたしたちの年中行事 8月」(芳賀日出男 著、クレオ、2006年)より)
<永井の大念仏剣舞(けんばい)>(岩手県盛岡市/8月盆の日)
盆に、大きな笠をかぶった人が念仏を唱えながらやってきます。先祖は、この笠に乗って来ると信じられています。
<二子鬼(ふたごおに)剣舞(けんばい)>(岩手県北上市/8月盆の日)
鬼の面をつけた若者たちが、盆をする家で踊ります。先祖を迎え、悪魔を追い払います。
<大海放下(おおみほうか)>(愛知県新城市泉昌寺/8月14~15日)
「放下」の念仏踊りをする人たちは、「大」「念」「仏」の文字の大きなうちわを背中につけ、念仏を唱えて踊ります。
<かんこ踊り>(三重県伊勢市正覚寺/8月15日)
白いウマの尾の毛をかぶった若者が、小太鼓を打ち鳴らしながら念仏踊りをして、秋の豊作を祈ります。
<六斎(ろくさい)念仏>(京都府/8月8日~30日までの6日間)
各地の寺で仏教の教えを伝えて、おとなや子どもが笛、太鼓、鉦(かね)を合奏します。
<盆あんがまあ>(沖縄県石垣市/旧暦7月13日~15日)
盆の夜におじいさんとおばあさんの仮面をつけた「あんがまあ」が家々を訪れ、先祖の踊りをします。
<遠州大念仏>(静岡県浜松市/8月13日~15日)
若者の打つ太鼓や笛、鉦が鳴り響き、念仏を唱え、踊り、初盆の家を巡ります。
この遠州大念仏の様子を少しご紹介します。
さて、現在の盆踊りでは広場や公園、寺の境内などに櫓を建て、それを囲んで輪になって踊るというのが普通に見られますが、もともとは、町の辻々で群れ集まって踊ったり、列をなして練り歩きながら踊り家々を回っていくというものであったようです。
盆踊りは昔の人たちが文字に頼らず、身振りなど体の動きで覚え、子や孫に代々伝えてきたもので、地方によってさまざまな特色があります。
笛や太鼓、鉦(かね)、三味線などの音に合わせて簡単な振りで踊るのが一般的です。
踊り方は、先に触れたように、行列形式の踊りと輪踊りとに分けられます。
全国的に知られている盆踊りには、次のようなものがあります。
(「学習に役立つわたしたちの年中行事 8月」(芳賀日出男 著、クレオ、2006年)および「家族で楽しむ日本の行事としきたり」(石田繁美 編、ポプラ社、2005年)より)
<阿波踊り>(徳島県徳島市/8月12~15日)
数十人が「連」と呼ばれる組を作り、三味線、囃子に合わせ、独特の振りで踊ります。
「同じ阿呆なら踊らにゃ損、損」という陽気な節回しで有名です。
<郡上(ぐじょう)踊り>(岐阜県郡上市八幡町/7月中旬~9月上旬)
毎年7月中旬から9月上旬まで続きますが、8月13~16日は徹夜で歌い踊ります。
音頭を取る踊り屋台をとりまいて、数百人の踊り手が下駄を踏み鳴らして踊ります。
<西馬音内(にしもない)盆踊り>(秋田県羽後町/8月16~18日)
神秘的な「彦三(ひこさ)頭巾」、美しい「端縫(はぬ)い」衣装と、洗練された踊りが特徴です。
<新野(にいの)の盆踊り>(長野県阿南町/8月14~16日)
三日間徹夜で踊られる盆踊りは、囃子を使わず声だけで踊る古風なものです。
夜明かしで激しく踊り、終わると、亡霊にとりつかれないようにと、後ろを振り向かずに走って家に帰ります。
<白石踊り>(岡山県笠岡市/8月14~16日)
瀬戸内海の白石島に伝わる、古式ゆかしい盆踊りは、古い念仏踊りの様子を残しています。
源平水島合戦の死者を慰める男踊り、女踊り、笠踊り、娘踊りなど、同じ歌で違った踊りをするのが珍しいといわれます。
<山鹿灯籠祭り>(熊本県山鹿市/8月15日~16日)
紙で作った金銀の灯籠を頭にかぶった少女たちの千人灯籠踊りが町を練り歩きます。
灯が渦を巻いて揺れ動くのは幻想的です。
<沖縄全島エイサー祭り>(沖縄県沖縄市/旧暦7月の盆明けの日曜日)
エイサーは沖縄の盆踊り。「エイサー」の掛け声で、先祖の霊を慰めて踊ります。太鼓を抱えた若者が力強くバチでたたき、飛び跳ねて踊ります。
大勢の人びとが集い、ともに楽しむのが盆踊りの醍醐味です。
盆踊りは、故郷に集まった人びとが心を通わせる行事として、全国各地で受け継がれています。
お盆のお供え物、きゅうりとなすの精霊馬を作ってみました
お盆のお供え物、きゅうりとなすの精霊馬づくりに挑戦してみました。
精霊馬に込められた意味など、下調べはバッチリ!なのですが…お恥ずかしながら、30代後半だというのに、お盆のお供え物を目にしたことは何度もあれど、自分で準備したことは一度もなかったため、実家の母に教わりながら作りました。
8月上旬、まずスーパーへ足を運んでみると、まさにお盆用品のコーナーが設けられていました。
それぞれの品の使い方を図示した大きなカラーのポスターが掲げられ、持ち帰ることのできる「お盆用品の使用方法」というチラシも用意されていて、初心者への気遣いが感じられます。
中には、初めて見る品もありましたが…。
いろいろと物色した結果、麻がら、真菰のござ、迎え火・送り火用の松明、かわらけ(小)を購入。
馬と牛も売られていました。
こういう馬と牛を利用してもいいんですね。
では、きゅうりとなすの精霊馬づくり、開始です!
まず材料を揃えます。
なす、きゅうり。そして…
・麻がらを適当な長さに切ったもの:8本(足になります)
・小豆:4粒(目になります)
・南天の小さい葉:4枚(耳になります)
・エノコログサ:本当は2本必要ですが、1本しか見つかりませんでした(尻尾になります)
以上のものを揃えます。
なすときゅうりに足をつけるだけだと思っていたのですが、目や耳や尻尾も…意外に多くの材料が必要で、びっくりです。
さんざん探したのですが、エノコログサが1本しか見つからなくて残念。普段、探していない時は、いくらでもその辺にありそうな気がするのですが…。
まず、なすの牛から作りました。
なすのどの辺に足をつけるかを決めて、4か所、箸を使って穴を開けます。
穴を開けたところに、麻がらの足を差し込みます。
実はこれが意外と難しい!
ただ差し込むだけなら簡単なんですが、4本の足のバランスをうまくとって、ちゃんと立てるようにしてあげなくちゃいけません。
体(なす)から少し外側に広がるように傾けて足を差し込むこと(4本足で踏ん張っている感じ)、そして出ている足の長さを揃えることがポイントでしょうか。
足を4本差し込んだら、立たせてみます。
そうすると、なんだか一部の足が浮いてしまっていたり、体が傾いてしまっていたり…あらあら。
ちょっと調整して、また立たせてみて、を数回くり返しました。
足と体が安定したら、目をつける場所を決めて、2か所、箸を使って穴を開けます。
そこへ小豆を1粒ずつ入れ込みます。
次に、目の後ろ側に、包丁を使って、耳を差し込むための切り込みを入れます。
切り込みを入れたところに、南天の葉を差し込みます。
これがなかなかうまく差し込めなくて、手間取りました。
おお、なんだかすっかり顔らしく、そして牛らしくなってきました。
最後に、お尻の部分に、箸を使って穴を開けます。
…ちょっと失礼!
そこに、エノコログサの尻尾を差し込みます。
これで完成です!
同様の方法で、きゅうりの馬を作ります。
足をつけ、目をつけ…なんてやっていると、不思議なもので、なんだか人格(馬格?)を感じるようになってきます。
耳を差し込む切り込みを入れるとき、先ほど南天の葉をなかなかうまく差し込めなかったこともあって、ちょっと大きく切りすぎてしまいました。
と、つい「ごめんね、大きく切りすぎたね~痛かったね~」なんて言葉が出てきてしまうのです!
自分でビックリ。
ちょっと痛々しいですけれど、なんとか耳も差し込めました。
エノコログサが足りないので、尻尾なしで完成です!
きゅうりが長くて、尻尾をつけたら下に引きずってしまう状態だったので、ちょうど尻尾なしでよかったかもしれません。
牛と馬は出来上がりました。
初めてにしては、なかなかうまくできたのではないかと、自己満足。
次に、牛と馬の食べ物をご用意しましょう。
里芋の小さい葉を取ってきます。
これを、食べ物をのせるお皿にします。
しなびてしまうといけないので、水につけておきました。
なすを細かい(7~8mmくらいの)角切りにして、水でさっとあらって、里芋の葉の上に載せます。
次に、そうめんをほんの少しだけ茹でて、かわらけの上に載せます。
この2つが、牛と馬の食べ物になります。
買っておいた真菰のござを敷いて、牛と馬、食べ物を並べます。
これで完成!
記者の実家では、特に盆棚は設けず、仏壇にこれらをお供えします。
実際に仏壇にお供えしてみました。
やっぱり、仏壇の方が、雰囲気が出るような気がします。
仏壇に向かい、蝋燭に火をともし、お線香をあげて、手を合わせます。
心の中で、祈りの言葉とともに、「今日はお盆じゃないんだけど、これこれこういう訳でね…」と事情を説明しておきました。
お盆の本質とは?
今回、お盆についていろいろと調べてみて、もちろん自身の知識不足もあるのですが、知らなかったことがいろいろとあり、そうだったのか…と気づかされることが多々ありました。
お盆が、日本人にとってそれほど重要な意味を持ち、大切な行事だったということを、初めて認識しました。
また、ここには到底書き切れないほど、全国各地にお盆に関するいろいろな風習や行事があり、それはそれだけ重要な行事であるということの現れなのでしょうが、その奥深さに圧倒されました。
お盆のお供え物、きゅうりとなすの精霊馬を実際に作って設えてみて、先祖や亡くなった人の霊を迎え、供養するという行いや気持ちの一端に、触れられたような気がします。
おそらく自身がもっと若い頃であれば、ただ面倒に思い、関心を持つこともなかったのではないかと想像できるのですが、今回は、お盆にまつわるいろいろなことをとても興味深く感じている、また敬虔な気持ちになっている、自らに気がつきました。
お盆は、先祖や故人を偲び、供養し、そのことによって、今ある自分を顧みる、見つめ直す、今自分がここにあることを喜び感謝する、そういう時間なのではないかと思います。
古来から脈々と受け継がれてきたお盆ですが、そういったお盆の本質とでもいうべきものは、今も昔も変わらないのではないでしょうか。
これから、お盆の過ごし方、その心持ちが、少し、変わりそうです。
・日本の年中行事百科 3 夏 民具で見る日本人の暮らし Q&A(岩井宏實 監修、河出書房新社、1997年)
・学習に役立つわたしたちの年中行事〔8月〕(芳賀日出男 著、クレオ、2006年)
・子どもに伝えたい年中行事・記念日(萌文書林編集部 編、萌文書林、2005年)
・和ごよみと四季の暮らし 写真でつづる「やさしい」暮らし歳時記(新谷尚紀 監修、日本文芸社、2006年)
・家族で楽しむ日本の行事としきたり(石田繁美 編、ポプラ社、2005年)