「ていねいな暮らし」カタログ
第29回
健康的で“可以”な生活とは ——
『可以』
今回は、北京の書店で発見した『可以(日本語では、よいやできるを指す言葉)』という雑誌を取り上げてみたいと思います。私は、「ていねいな暮らし」の描かれ方を気にするようになってからというもの、国内外を問わず、出先で本屋を見つけるとすぐに暮らし系雑誌を探してしまうのですが、北京で『可以』を見つけた時には思わず飛び上がりそうになりました。遠目からでも、「暮らし系雑誌だ!」とわかってしまったからです。
まずは、この表紙を見てください。初期『ku:nel』を彷彿とさせる表紙だと思いませんか。上部1/5のところに白地に黒のタイトル、それ以外は食べ物の素材を構成した写真となっています。内容を示す文字は、「健康生活/エコ農場」の2語のみ。素材そのものの写真でありますが、何かの図形を描くように規則的に素材が並べられ、真上から写真を撮られています。フラットレイ型とスプレッド型の組み合わせです。おそらくは、これらの素材は「有機農園」で作られたものたちと思われますが、素材の形や発色で絵を描くようなそんな雰囲気も感じられます。
次に内容についてですが、文字を見ればなんとなく内容がわかるとはいえ、完全にはわからないので、留学生の方に訳してもらったものをもとに、内容をご紹介したいと思います 1。表紙をめくると、「可以生活(よい生活)」というタイトルの文章が書かれています。
「よい」、それは態度を示す言葉であり、気持ちを表す言葉でもあるが、ここでは「生活」の修飾語として挙げたい。「よい」生活とははたしてどのような生活なのだろうか。多数の人に対して、自分の暮らしが「よい」生活だと言えないだろう。/ここでの「よい」生活は健康的でなければならない。それは、食べるものも、愛読する本も、生き方もすべてを含む。2
「よい生活」という簡潔な表現でもって本誌が伝えたいと思うことは、「健康的な生活」とは何かということだ。体の健康は、食べるものによって作られ、本を読むことによっても得られるものであると言います。『可以3』の目次には、さまざまなエコ農場の記録の特集を筆頭に、中国の独立系書店のこと、音楽、パーソナルな思い出の物についてなど、「健康的な生活」を営む上で必要不可欠とおぼしきテーマが並んでいます。来月は、これらの内容について、もう少し詳しくお伝えします。
(2)薛容「可以生活」『可以3』2015年6月