色、いろいろの七十二候
第41回
朔風払葉・手編み
砂色 #DCD3B2
芥子色 #C8A65D
二十四節気は「小雪」、「冷ゆるが故に雨も雪と也てくだるが故也」とされる時期です。
二十四節気は新暦との差が指摘されますが、地域によっては実際にこの頃に初雪を観測するところもあります。寒がりの方には気が重くなってくる季節ですね。
手編みはどうして暖かい?
そんな寒がりにオススメなのが、「手編み」です。
いろんな人が口々に「手編みは暖かい」といいます。手づくりの気持ちがこもっているから、といいたいところですが、それを抜きにしても、手編みは暖かい、という理由があります。
これまで何度か述べているように、人体は強烈な発熱機関です。
冬でも大量の熱を放熱しています。冬に寒さを感じるのは、この放熱のペースが早くなったときで、冬物の衣類はその放熱ペースを遅らせるためのものです。
空気は、対流などによって熱を伝えますが、逆に動かさなければ断熱材として機能します。手編みの編み物は、空気をふっくらと含んでとどめておくことで、断熱性能を高めています。機械で編まれた整然としたものよりも、手編みのほうが暖かく感じるのには、こんなわけもあるようです。
衣食住
衣食住、という言葉があります。生活に必要なものをあらわした言葉です。
この3つは、人に必要な順に並んでいる、という話があります。
衣服は、ほとんどの時間に身につけて過ごしています。今日は服なしで過ごそう、というのは人間社会ではアウト、ですね。
食事は、多くの人が毎日3回欠かさず食べています。ちょっとぐらいは抜いても大丈夫、という点では、衣服よりも次に来る、という解釈でしょうか。
住居は、衣服や食事よりも緊急度は低いのかもしれません。しかし、実際に「泊まるところがない」ということを経験してみると、その心細さたるや。
日本でいう「衣食住」的な言葉は、英語ではFood, clothing and shelter と呼び、「Food」が一番に来ています。英語圏の人にとっては食は衣よりも優先度が高いのか、というと、そんなことはなさそうです。
順番というよりも、どれが欠けても人間らしい暮らしは出来ないものを表した言葉です。
そうした最低限であるはずの「衣食住」の多くが、自らの手を離れ、他人に委ねるようになっています。
日常的なものを除く
レジャー白書2013によると、「編物・織物・手芸」の人口は1480万人。
「洋裁・和裁」が920万人。
趣味人口で近いものは、日曜大工が1420万人。スポーツ観戦(テレビは除く)が1610万人。
園芸、庭いじりは3100万人と規模が倍ぐらいになります。音楽鑑賞は4000万人、映画鑑賞が4090万人で、このあたりが趣味としては「最大手」です。
なお、編み物・洋裁はどちらも女性比率が95%を超えていて、今のところ「手編み」はほぼ女性の特権になっているようです。
(ところで、この調査では「パソコン(ゲーム、趣味、通信など)」が6910万人で他を引き離して多い数値となっています。レジャー白書の調査は数年前からインターネット調査になっています。ですから、この「パソコン」が群をぬいて多いのは、少し割り引いて考えないといけない気もします)。
「編物・織物・手芸」と同じぐらいの規模の趣味に「料理(日常的なものは除く)」という項目があります。
「料理(日常的なものは除く)」の人口は1540万人。編物とほぼ同じぐらいです。
これらの趣味をあえて「衣食住」に分類してみると、「編物」「洋裁」などは「衣」、「料理(日常的なものは除く)」は「食」、「日曜大工」「庭いじり」は、「住」にくくってよいでしょう。
この中で、料理だけに(日常的なものは除く)という注意書きがついています。
つまるところ、「衣」も「住」も、日常的に自分でやるものではない、という裏返し、といえます。
たしかに、衣食住、すべて自分でなんとかする、なんていうことは、今の社会では現実的ではありません。
でも、全部のことは自分で出来ないかもしれないけれど、それぞれに、ちょっと手を入れてみることで、生活が愉しくなりますよね。
(2013年11月22日の過去記事より再掲載)