色、いろいろの七十二候

62

桃始笑・菜の花

菜の花の芥子和え
こよみの色
啓蟄
ねこやなぎ色 #D2CC94
桃始笑
若葉色わかばいろ#B9D08B

ほんのりとした苦みと甘味があって、茹でてよし、炒めてよし、和洋どんな料理にもあう菜の花。芥子和えは酒の肴にも最高です。

花を食べる野菜はこの他にも、ブロッコリーやカリフラワーが知られています。食べ過ぎると忘れっぽくなるというウワサのミョウガも、花にあたるところを食べています。

花を食べるって、何か抵抗があるなあ、と思うかもしれませんが、そのものずばり、食用菊というものもありますし、桜の花や桃の花なども料理に使われます。
花を食べる習慣は世界各地にありまして、バラやハイビスカス、ラベンダーといった花や、サボテンの花などが古くから食用にされています。

「菜の花」というのは植物の種類を表す名前ではありません。菜っ葉の花だから菜の花、と思いがちですが、「菜」には、おかず・食べる植物といった意味があります。食べられる花なので、「菜の花」なのです。
そうなると、広義では食べられる花はみな菜の花、ということになりますが、一般的には食用にされる菜の花は、アブラナやセイヨウアブラナのそれです。

「菜種」というものもあります。ではこちらは食べられる種という意味か、と思いきや、アブラナ属の植物の総称です。この菜種の種から採れる油が、いわゆる菜種油です。

日本の菜種自給率はかつて100%でした。二宮尊徳の逸話でも有名なように、菜種油は灯の燃料にもなりました。しかし多くの作物のご多分にもれず、現在はそのほとんどが輸入でまかなわれるようになっています。

よく聞く「キャノーラ油」というのは、キャノーラ品種を用いた菜種油で、原料の菜種は90%以上がカナダから輸入されています。カナダの菜種の栽培面積の9割は遺伝子組換え品種と報じられています。輸入菜種による菜種油は、そのほとんどが遺伝子組換え品種で作られていると考えてよいでしょう(油の場合は、DNAが製品内に残らないということで、遺伝子組換え表記の義務付けがありませんから、表記を見てもわかりません)。

菜種を用いて油を搾った残りかすは、油かすとして肥料に使われます。
遺伝子組換え品種から作られた油かすには、組み替えられた遺伝子が残っています。
JASで定める有機農産物では、こうした油かすは使えないことになっています。

下は農林水産省の「その他の肥料及び土壌改良資材」の基準です。

植物の栄養に供すること又は土壌を改良することを目的として土地に施される物(生物を含む。)及び植物の栄養に供することを目的として植物に施される物(生物を含む。)であって、天然物質又は化学的処理を行っていない天然物質に由来するもの(燃焼、焼成、溶融、乾留又はけん化することにより製造されたもの及び化学的な方法によらずに製造されたものであって、組換えDNA技術を用いて製造されていないものに限る。)であり、かつ、病害虫の防除効果を有することが明らかなものでないこと。ただし、この資材は、この表に掲げる他の資材によっては土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進を図ることができない場合に限り、使用することができる。

肥料として使われた油かすは土中で分解され、一度無機物になってから作物に吸収されます。この分解の過程で遺伝子も無機物に分解されます。
作物がそのまま組み替えられた遺伝子を取り込む、ということはない、とされていますが、有機JASではこのように使用が禁止されています(もっとも、ただし書きが…)

さて、この遺伝子組換え菜種は、別のところで問題を起こしています。日本の港湾施設の近隣を中心に、自生している菜種(菜の花)に、遺伝子組換え品種がまざっているのです。農林水産省の調査では、18港の周辺のうち、12港から遺伝子組換え品種が見つかっています。

港の周辺で、トラックが通る道沿いから見つかっていることから、輸送中のこぼれ落ちに由来するもののようです。
農水省の調べては交雑個体は見つかっていない、とされていますが、少なくとも日本にも遺伝子組換え植物が管理されない状態で自生していることがわかっていますし、別の調査では交雑個体が発見されたという報告もあります。つまるところ、国内にも遺伝子組換え植物は存在している、ということです。

もっとも、たまたまトラックからこぼれ落ちている、ということで、おどろくべきことではないのかもしれません。
実のところ、遺伝子組換え作物の栽培の認可自体はすでにおりています。ただ、商用栽培としては行われていないだけなのです。

この一覧では、13品種の菜種が掲載されていて、うち8品種は栽培も可能とされています。今のところ、菜種類はグリホサート等の農薬への耐性を持つものと、雄性不稔及び稔性回復性といった、ようするに繁殖をさせなかったり、やっぱり繁殖できるようにしよう、というコントロールが出来る、というものです。

今は啓蟄。虫が冬ごもりから目覚めて土から出てくる頃、とされています。遺伝子組換え植物野の中には、虫を殺すタンパク質を持たされたものもあります。食べ物だったはずのものが毒になる。虫にしてみるとたまったものではありませんが、殺虫剤を使うよりは環境負荷が小さい、という意見もあります。
これから先、どんなことが起きるかはわかりませんし、何も起きないかもしれませんが、目を離せばいつのまにか、ということもありえます。注目しましょう。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年03月06日の過去記事より再掲載)