色、いろいろの七十二候
第67回
玄鳥至・山菜
画/たかだみつみ
こよみの色
二十四節気
清明
幹色 #f2d88c
幹色 #f2d88c
七十二候
玄鳥至
桜色 #FEF4F4
桜色 #FEF4F4
土筆なつかし一銭玉の生きゐし日
加藤楸邨
加藤楸邨
セリ、ミツバ、フキ、ウド、たらのめなどは、栽培ものとして出回っていますが、つくし(土筆)は、ほとんど野生のものです。山菜として、とりわけつくしを好むわけではありませんが、楸邨の句にあるように、一銭玉の時代にも、今も、そしてこれからも野生であろうという一点において、わたしはつくしをひいきします。
つくしは、日当たりの良い南斜面の土手や、畑や原っぱの、やわらかそうな土を破って芽を出します。
つくしんぼの先の胞子穂は、形状が「筆」に似ていますが、ぜんまいなどに比べると脆くて、ひ弱です。植物の研究者がいうには、顕微鏡下で観察すると、息を吹きかけるだけで、つくしは、瞬時に形を変化させるといいます。
わたしは、しばらく杉菜(スギナ)茶を健康茶として飲んでいましたが、つくしは、茶色の胞子茎で3月頃に採れるのに対し、杉菜は、緑色の細い葉をいい、収穫は4月頃だそうですね。
土筆煮て飯くふ夜の台所
正岡子規
正岡子規
妹よ来よここの土筆は摘まで置く
高浜虚子
高浜虚子
土筆野やよろこぶ母につみあます
長谷川かな女
長谷川かな女
子のたちしあとの淋しさ土筆摘む
杉田久女
杉田久女
まま事の飯もおさいも土筆かな
星野立子
星野立子
山菜は、いずれも灰汁が出ます。つくしの灰汁も案外つよく、よく灰汁抜きしてからいただきます。山菜の灰汁は、冬中、体内に蓄積された老廃物を清める役割を持っているとのことです。
食用山菜一覧表(「清良記」)
正月 | 萱(かや)草、蕪菜、大根、なずな、芹、はこべ、ふきのとう、たびら子、仏の座、苣(ちさ)、野大根、つは、蒜、千根(ちもと)、芥子の葉、三葉芹、蓮根、葛の根、蕨の根、防風、いびら、嫁がはぎ、ゆり、ほど、野老(ところ)、たんぽぽ、子持菜、高菜まめ葉 |
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二月 | 芹、なずな、土筆、おばこ、韮、わらびな、防風、苣、嫁がはぎ、雉の尾、榎の葉、藤の葉、はきぎ、たびら子、仏の座、田にし、すぎな、子持葉、たんぽぽ、よもぎな、蒜、野びる、かづらな、芥子の葉、椎茸、蓮根、仙大黄、いびら、河苣、ぜんまい、ほど、野老、山芋、百合、葛の根、蕨の根、うど、三月大根、芋の子、葛の葉 |
三月 | 蒜、野びる、苣、韮、嫁がはぎ、うど、はらび菜、みょうが、芹、紫竹の子、うはぎな、よもぎな、杉菜、芥子の葉、漆の葉、つは、あさみ、はじの葉、むくげの葉、榎の葉、枌(にれ)の葉、藤の葉、くこ、うこぎ、仙大黄、のみの実、いたどり、おばこ、河苣、さんきらい、いちご、雉の尾、たんぽぽ |
四月 | つは、韮、苣、芹、茶、菽の葉、ひともじ、くこ、うこぎ、竹の子、あざみ、野そばの葉、ひゆ、あかざ、あんず、梅実、木槿の葉、榎の葉、枌の葉、仙大黄葉、いちご、くちなし、おばこ、蕗、みょうが、しその葉、いもづる、はなだの葉、さんきらい、のみの実、嫁がはぎ、よもぎな |
五月 | 夕顔、ひともじ、芋の葉、蕗、菽の葉、苣、夏菜、晩梅実、ひゆ、ずへりひゆ、野そばの葉、あかざ、ふろうの葉、百合、芹、節くづれ、おばこ、いちご、韮、枇杷の実、忍びくさ、かまつか、いもづる |
六月 | 芋、豆葉、夕顔、韮、苣、百合、山桃、すもも、いもづる、ひともじ、みょうが |
七月 | 芋、夕顔、みょうがの子、しょうが、蕨の根、苣、韮、むかご、小きび、ひゆ、百合の実 |
八月 | しょうが、菽、くるみ、夕顔、みょうがの子、韮、松茸、椎茸、しめじ類、かやの実、夏菜、栗実、柿実、銀杏、梨実、むかご、山芋実、小秬、高秬、粟、稗、苣 |
九月 | 粟、稗、栗実、柿実、梨子、椎子、樫子、山芋、ほど、野老、じれん芋、百合、あざみ、あかざの実、掃草子、あけび、ぶどう、ひし、くわい、たで穂、とち実、かやの実、なつめ、櫟子、柚、ひともじ、防ぶら、はきき |
十月 | 山芋、野老、ほど、苣、ひし、くわい、あざみ、くはつろ子、晩梨、かやの実、ねぎ、樫子、椎子、櫟子、とちの実 |
十一月 | 山芋、ほど、百合、蕨の根、葛の根、ひともじ、苣、樫の実、椎子、櫟子、はこべ、芹、なずな、野老 |
十二月 | 山芋、ほど、野老、百合、蕨の根、葛の根、苣、芥子の葉、芹、なずな、はこべ、ふきのとう |
文/小池一三
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年04月04日の過去記事より再掲載)
(2012年04月04日の過去記事より再掲載)