A retrouver pleinement la France もどりつつあるパリの日常
ところかわれば
| 森弘子
パリは先日30度を超える日が数日つづき、季節がめぐりすっかり夏らしくなり、カフェのテラス席では日差しを楽しむ人があふれています。A retrouver pleinement la Franceは6月14日のマクロン大統領の演説中にあった言葉で、「(我々は、仕事をしたり、アートを満喫したり、) フランスにおいて完全に生活を再開できる」という内容です。
6月末時点で、フランスにおけるコロナウイルスによる感染者数は死者数と共に確実に減少しており、パリも急速に元の姿にもどりつつあります。6月15日には6月22日に移行する予定だった第三フェーズが状況の改善を受けて繰り上げて開始され、パリも緑ゾーンになりました。緑ゾーンになったことで、パリではカフェやレストランがそれまでのテラス席のみの営業に加え、他人との距離を1mとることや店内の移動時にはマスクを着用するなどの安全基準を遵守した上での店内での飲食が可能になりました。大きな変化としては、EU圏内の渡航が自由となったことです。14日間の自主隔離もありません。7月1日からはEU圏外で、安全と認識された国への渡航も再開されます。ただ、フランス政府はコロナウイルスとの闘いは長期化するものであり、2020年の夏はこれまでの夏とは異なると宣言しており、引き続き予防措置をとりながらの生活となると注意喚起しています。
5月11日に外出制限が解除された時点で100km以内の移動は自由になりましたが、我が家では6月20日に外出制限後初めてパリ市街に出ました。パリからRER C線(在来線)で1時間ほど行った所に、エタンプという小さな町があり、今回は友人で俳優の野口卓磨さんが構成・演出・振付された野外演劇を観に訪れました。久しぶりの観劇です。
週末の日中ということもあり、メトロ、RER線ともに車内は比較的空いていました。メトロの車内では他人との距離が近くならないように「座らないでください」と書かれたステッカーが貼ってあります。フランスでは緑ゾーンにおいても、車内では1mの社会的距離をとること、そしてマスクの着用が義務付けられています。11歳以上は義務付けられており、着用していない場合135ユーロの罰金となります。
野口さんは2019年秋からエタンプにある演劇学校に留学されていますが、留学中にコロナウイルスによる外出制限にあい、学校も閉鎖。演劇学校の仲間たち数名と共に、自宅にいながらこの外出制限下だからこその制作ができないかと考え、外出制限解除後から稽古を始め、6月19, 20日にワークインプログレス版として上演されることになりました。野口さんは外出制限中、毎日許可された1時間の運動のための外出で、エタンプの駅の背後にあるエタンプ古城の周りをよく散歩していたそうで、毎日散歩するうちに古城の周りにある広場のようなスペースやかつてステージだったかもしれない場を発見し、ここを使えば外出制限後すぐに上演できる、と感じたそうです。
観劇した6月20日時点ではフランスにおいては6月21日まで公共の場での10人以上の集会が禁止されていたので、上演に際し、マスク着用、1mの社会的距離を確保することに加え、演者・スタッフ・観客が合計で10名以下となるように調整されていました。演劇は「Dream of a Common Language」と題され、出身国が異なる仲間からそれぞれの国のおとぎ話をかき集め、小作品をエタンプ古城の周りにある野口さんが散歩中に見つけ出した場を巡りながら観劇するものでした。それぞれのおとぎ話は、それ自体が国によって雰囲気も違う興味深いものでしたが、城を中心に自分の体で移動し巡ることで、ひとつながりのものを感じました。
現在では緑ゾーンでの公共の場での10人以上の集会も可能となりましたが、どのようにして安全を保ちながら文化を楽しむか、はこれからも課題となりそうです。パリでは6月15日以降映画館、美術館も再開されていますが、人数を制限するため事前予約が必要です。ルーブル美術館も7月6日に再開される予定ですが、全館が開館するわけではなく、一部の展示室は閉鎖となるようです。
レストランやカフェが再開し、パリもだいぶ元のにぎわいを取りもどしてきましたが、未だ閉店したままの店も見受けられ、店内ではマスクを着用するなど、よく見るとやはり完全には元どおりと言えません。それでもフランスらしく美術館や映画館など文化施設が再開したことは、日常がもどってくる気配を感じる良い知らせのように思えました。