びおの珠玉記事
第104回
ほうれんそう・好き?嫌い?食べさせたい?
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2014年01月15日の過去記事より再掲載)
ほうれんそうの旬と栄養
ほうれんそうも、他の多くの野菜と同じように通年出荷されていますが、元々は低温性で、冬が旬の野菜です。
ビタミンCが豊富な野菜です。このビタミンCが、夏採りと冬採りを比べると、冬採りのほうが多く含まれます。五訂増補日本食品標準成分表によると、生のほうれんそうに含まれるビタミンCは100gあたり35mgとされていますが、注釈がついていて、夏採りの場合は20mg、冬採りの場合は60mg、とされています。夏と冬とでは、同じ量を食べてもビタミンCの含有量が3倍も違うのです。
ビタミンCが多い、というイメージのレモンが、全果で同100mg、果汁(全果に対する30%)で50mgですから、冬採りほうれんそうはレモン果汁以上のビタミンC含有量、ということになります。
この他にも、寒さに耐えて自らの糖度を高めるため、寒い時期のほうれんそうは、甘味もあっておいしいのです。
通年食べられるものでも、旬の時期か、そうでないかで栄養価がこんなにも違います。近頃は、野菜が美味しくなくなった、という声を聞くことがあります。今はハウス栽培や輸送技術などのおかげで、全国何処でも通年食べられるものが増えました。
品種の違いや肥料の違いなどもあって、昔と今とを簡単には比べられませんが、旬を外した時期に食べると、昔の野菜より美味しくなくなった、という印象をうけるのかもしれません。
「食べさせたい」は、アレの影響?
下の表は、カゴメ株式会社が2011年に実施した「子どもの野菜の好き嫌いに関する調査報告書」から抜粋したものです。
■ 子どもの好きな野菜(10位まで)
順位 | 好き | 回答数 | % |
---|---|---|---|
1 | とうもろこし | 618 | 77.3 |
2 | じゃがいも | 574 | 71.8 |
3 | えだまめ | 565 | 70.6 |
4 | さつまいも | 554 | 69.3 |
5 | きゅうり | 532 | 66.5 |
6 | トマト | 503 | 62.9 |
7 | ブロッコリー | 472 | 59.0 |
8 | にんじん | 470 | 58.8 |
9 | かぼちゃ | 452 | 56.5 |
10 | だいこん | 426 | 53.3 |
■ 子どもが食べてくれない野菜(10位まで)
順位 | 好き | 回答数 | % |
---|---|---|---|
1 | なす | 260 | 32.5 |
2 | ピーマン | 208 | 26.0 |
3 | しいたけ | 208 | 26.0 |
4 | 水菜 | 183 | 22.9 |
5 | オクラ | 174 | 21.8 |
6 | ニラ | 166 | 20.8 |
7 | エリンギ | 155 | 19.4 |
8 | ねぎ | 149 | 18.6 |
9 | トマト | 148 | 18.5 |
10 | アスパラガス | 140 | 17.5 |
■ 子どもに食べてもらいたい野菜(10位まで)
順位 | 好き | 回答数 | % |
---|---|---|---|
1 | ほんれんそう | 117 | 14.6 |
2 | トマト | 83 | 10.4 |
3 | ピーマン | 64 | 8.0 |
4 | しいたけ | 51 | 6.4 |
5 | にんじん | 49 | 6.1 |
6 | なす | 47 | 5.9 |
7 | かぼちゃ | 41 | 5.1 |
8 | キャベツ | 33 | 4.1 |
9 | ブロッコリー | 22 | 2.8 |
10 | ねぎ | 22 | 2.8 |
好き・食べてくれないは複数回答となっていますが、「好き」は1位のとうもろこし(77.3%)から、10位のだいこん(53.3%)まで、多くの回答を集めています。
一方の「食べてくれない」では、1位のなすが32.5%、10位のアスパラガスは17.5%と、「好き」ほどには票は集中していません。「好き」にも「食べてくれない」のランクにも、ほうれんそうは入っていませんが、「子どもに食べてもらいたい野菜」の1位(単一回答)が、ほうれん草なのです。
食べてくれないわけでもなく、好きでもないのになぜ食べてもらいたいのでしょうか。ほうれんそうは、前述のように栄養豊富な野菜ですが、それでも単独1位に輝くにはわけがあるのでは…。そう、きっと例のアレです。
ほうれんそうが体にいい、ほうれんそうを食べると強い体になる、という刷り込みが、親の世代にあるからではないでしょうか。だとすると、やっぱり、このアニメの影響が少なからずあるのではないでしょうか。
今だったらほうれんそう缶詰メーカーのステマだと揶揄されそうですし、パイプをくゆらし、入れ墨をした腕を見せるポパイは、地上波で放送するのはもう難しそうな気もします。ですから、今の子どもたちには、親がどうしてほうれんそうを食べさせようとするのかわからないかもしれませんね。
こういうことですよ、わかったかい、君達。
「ほうれん草の最期」
「ほうれん草の最期(スタン・ドライヤー)」
こちらは、ほうれんそうが嫌いな子どもたちによる可笑しくも恐ろしいお話。1981年に発表された短編で、「20世紀SF<5>」に収録されています。
アメリカのとある少年たちが、父親が利用しているコンピュータのパスワードを想像して突破、そこでアクセスできる土地利用計画プログラムに対して、自分たちの嫌いなほうれんそうの生産割当を下限目一杯まで減らすよう指示をするのです。
短編ですから詳しいことまでは避けますが、やっぱりアメリカの子どもたちにとっては、ほうれんそう、というのは食べたくない野菜なのでしょうか。
日本の調査だと、決して不人気ではないのに、不思議ですね。
たしかにアメリカの、缶詰ほうれんそうは、見た目もあんまり美味しそうではありません。
ほうれんそうには独特の苦みがあって、それがいいという人もいれば、それが苦手な人もいます。アメリカの子どもは苦手なのでしょうか。この苦みも、茹でることで随分へるのですが、最近では生でも苦みが少ない種類も流通しています。
ほうれんそうは、旬と美味しさ、栄養の関係を如実にしめす野菜です。今、日本で旬のほうれんそうが食べられることは幸せなことですね。