女性彫刻家、シャナ・オルロフ

ところかわれば

森弘子

パリ南部の14区に、女性彫刻家の小さなアトリエ兼住宅があります。日本ではあまり知名度は高くないのですが、シャナ・オルロフ(1888-1968)というウクライナのユダヤ人家庭出身の女性彫刻家で、1910年代にフランスに移住、その後しばらくして彫刻を学びはじめます。まるい曲線のフォルムがあたたかい印象を与え、彼女の作品を特徴づけています。動物をモチーフとした作品も多いです。

シャナ・オルロフの彫刻

ギャラリーには所狭し、とシャナ・オルロフの作品が飾ってある


彫刻家として成功したのち、フランス国籍を取得、パリ14区にオーギュスト・ペレの設計によるアトリエ兼住宅を建設し、1926年からこの地に住み始めます。オルロフのアトリエのある通りはヴィラ・スーラと呼ばれ、サルヴァドール・ダリをはじめとした芸術家のアトリエが多く作られました。ここはアーティストの村を作ろうと考えた兄弟が土地を買い集め、アーティスをと呼び込みアトリエを建設していった、ちょっと特別な場所です。

間口は大きくないのですが、奥行きがあり、オーギュスト・ペレの得意とした機能的な鉄筋コンクリート造の住宅で、全面の大きな扉と上部の窓は、住宅内へ光を取り込むことと、彫刻作品の出し入れを目的としています。

シャナ・オルロフのアトリエ外観

開口部は大型の作品を搬出するため大きく開くことができる


内部に入ると小さな玄関から奥と左手に空間が広がり、ファサードを見るよりも想像以上に大きいアトリエ兼住宅であることがわかります。至る所においてある彼女の作品はどれも生き生きしていて、ストーリーを感じられ、じっくりみていくと時間が経つのも忘れてしまうほどです。オーギュスト・ペレの設計した空間は人のスケールに合っていて、オルロフの作品のようにあたたかみを感じます。
シャナ・オルロフのアトリエ

大きな開口部からは光が差し込み作品を照らす


その後第二次世界大戦になるとオルロフはユダヤ人であるために迫害からのがれ、スイスに移ります。終戦後パリに戻るとアトリエは荒れ果て、作品も多くが略奪されてしまっていましたが、精神的なダメージにも負けずにオルロフはさらに彫刻家として活躍していきます。

あまり知られていない彫刻家の小さなギャラリーですが、空間の居心地はとても良く、作品も見応えがあります。パリ中心部からもさほど遠くないので、少し足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。


Ateliers-Musée Chana Orloff
アトリエ-ミュゼ シャナ・オルロフ
7 bis villa Seurat,75014 Paris
メトロ 4番線Alésia駅、6番線Saint-JacquesまたはDenfert-Rochereau駅
RER B線 Denfert-Rochereau駅
https://www.chana-orloff.org/en