びおの珠玉記事

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現代の日本酒づくりを見てきました。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2010年03月26日の過去記事より再掲載)

日本酒
「ご飯」というと、食事全体を指す場合と、炊いた米を指す場合があります。
同様に、「酒」というと、酒類全体を指す場合と、「日本酒」を指すことの二通りがあります。
でも、「日本酒」といっても、一様ではないのです。
「日本」を冠したお酒、「日本酒」の話。

お酒の種類とは

酒税法ってご存知ですよね。ビール類の販売数の話題になると、よく出てきます。ビールと、それに似た発泡酒では税率が異なるため、販売価格に大きく影響が出ます。メーカーと国税庁のイタチごっことも言えるような、ビール類の酒税の変動に一喜一憂した方も多いでしょう。

酒税法上、日本のお酒は以下のように分類されています。

種類
種類 内訳(酒税法第 3条第 3号から第 6号まで)
発泡性酒類 ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(ビール及び発泡酒以外の酒類のうちアルコール分が 10度未満で発泡性を有するもの)
醸造酒類(注) 清酒、果実酒、その他の醸造酒
蒸溜酒類(注) 連続式蒸溜しょうちゅう、単式蒸溜しょうちゅう、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ
混成酒類(注) 合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒

(注)その他の発泡性酒類に該当するものは除かれます。

品目
品目 定義の概要(酒税法第 3条第 7号から第 23号まで)
清酒 米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が 22度未満のもの)米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が 22度未満のもの)
合成清酒 アルコール、しょうちゅう又は清酒とぶどう糖その他政令で定める物品を原料として製造した酒類で清酒に類似するもの(アルコール分が 16度未満でエキス分が 5度以上等のもの)
連続式蒸溜しょうちゅう アルコール含有物を連続式蒸溜機により蒸溜したもの(アルコール分が 36度未満のもの)
単式蒸溜しょうちゅう アルコール含有物を連続式蒸溜機以外の蒸溜機により蒸溜したもの(アルコール分が 45度以下のもの)
みりん 米、米こうじにしょうちゅう又はアルコール、その他政令で定める物品を加えてこしたもの(アルコール分が 15度未満でエキス分が 40度以上等のもの)
ビール 麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの(アルコール分が 20度未満のもの)麦芽、ホップ、水、麦その他政令で定める物品を原料として発酵させたもの(アルコール分が 20度未満のもの)
果実酒 果実を原料として発酵させたもの(アルコール分が 20度未満のもの)果実、糖類を原料として発酵させたもの(アルコール分が 15度未満のもの )
甘味果実酒 果実酒に糖類、ブランデー等を混和したもの
ウイスキー 発芽させた穀類、水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸溜したもの
ブランデー 果実、水を原料として発酵させたアルコール含有物を蒸溜したもの
原料用アルコール アルコール含有物を蒸溜したもの(アルコール分が 45度を超えるもの)
発泡酒 麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性を有するもの(アルコール分が 20度未満のもの)
その他の醸造酒 穀類、糖類等を原料として発酵させたもの(アルコール分が 20度未満でエキス分が 2度以上等のもの)
スピリッツ 上記のいずれにも該当しない酒類でエキス分が 2度未満のもの
リキュール 酒類と糖類等を原料とした酒類でエキス分が 2度以上のもの
粉末酒 溶解してアルコール分 1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの
雑酒 上記のいずれにも該当しない酒類


あれ? 「日本酒」がありませんね。
俗にいう「日本酒」は、酒税法上は「清酒」のことです。

上の表にあるように、清酒の定義は、

「米、米こうじ、水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が22度未満のもの)」
「米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が22度未満のもの)」

となっています。
みなさん御存知のとおり、日本酒は米からつくられます。酒税法上、米を原料とすることが明記されている酒は、「清酒」と「みりん」だけ。みりんは現在では飲み物としてよりも、調味料として用いられる方が多いですから、飲用の酒で、米を使うことが決められているのは日本酒だけ、といってもいいでしょう。

余談ですが、この酒税法、条文に目的条項がありません。
現政権の主張では、健康確保を目的とする税とするため、アルコール度数に比例した税制とすることを検討する、としています。
果たしてどうなるか。酒飲みには気になる話ですね。

一般酒と特定名称酒

「純米酒」とか「本醸造酒」などという言葉を聞いたことがありませんか? これらは、その製法、原料に決まりがあり、その決まりを守ることではじめてそういった表示ができる「特定名称酒」です。

特定名称 使用原料 精米歩合 こうじ米使用割合 香味等の要件
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒 米、米こうじ (定めなし) 15%以上 香味、色沢が良好
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下 15%以上 香味、色沢が良好
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好

共通事項として、

・農産物検査法によって3等以上に格付けされた玄米、またはこれに相当する玄米を精米して使用すること
・醸造アルコールについては、白米の重量の10%以下とすることという項目があります。

日本酒のラベル

「本醸造」「特別純米酒」などの特定名称酒は、その製法と原料が法律で定められています。


これら8種類だけが、「特定名称酒」として製品に表示出来ます。
それ以外の清酒は、「一般酒(普通酒)」として売られています。
製法・原料から、特定名称酒と一般酒の違いを見ていきましょう。

原料

水以外には、米、米こうじ、醸造アルコールのみが認められています。

清酒の原料としては、それ以外に「清酒かすその他政令で定める物品」が認められていますが、特定名称酒にはこれらは使用出来ません。

「山田錦」に代表される酒造好適米が使われることが多く、日本酒につかう米は、必ずしも食べておいしい米ではありません。「精米歩合」という項目があるように、日本酒の味には精米の割合が関わってきます。玄米の状態から、表層部の糠を削り取り残った白米の割合が「精米歩合」です。米の表層部にはたんぱく質、ビタミンなどが多く含まれますが、多すぎると雑味が出てしまいます。
純米酒以外の特定名称酒は70%以下の精米歩合が定められています。普段食べる白米の精米歩合は92%程度ですから、日本酒用にはかなりの精米をすることがわかります。

精米

精米歩合35%の米

米こうじ

米に麹菌を繁殖させた米こうじは、日本酒の製造には欠かせません。特定名称酒では、こうじ米(米こうじの製造に使用する白米)の使用割合が15%以上と定められています。麹の生産する酵素によって、酒の発酵具合が左右されます。15%という数字は、この発酵がうまくいくための数値として定められています。

吟醸造り

「吟醸造り」とは、読んで字のごとく、「吟味して醸造する」ことです。
厳選した材料を用いて、細心の注意を払ってつくるお酒です。

醸造アルコール

純米酒以外に添加が認められている醸造アルコールとは、食品由来の発酵・蒸留したアルコールです。

醸造アルコールは、酒好きの中でも議論が分かれるところです。

かつて、第二次大戦後の物資不足の時代に、少ない米からたくさんの酒をつくるために、三倍増醸法が生れました。この方法では、まずアルコール、糖類を混ぜて調味液をつくり、発酵が終了したもろみに調味液を添加して増量をはかるわけです。当然、日本酒本来の味ではありません。
その後、物資が豊かになっても、なぜか三倍増醸酒はなくならず、このときのイメージで、日本酒が嫌いになったり、現在の醸造アルコールを嫌う人もいるようです(現在は三倍増醸酒は清酒として認められていません)。

一方、さかのぼって江戸時代には、日本酒の保存性を高めるために、よりアルコール度の高い焼酎を添加する「柱焼酎」という手法が用いられていました。現代の醸造アルコールにも、これと似た効果を期待する声もあります。
米由来のアルコールや焼酎を添加する方法も生まれています。

日本酒論になると必ずといっていいほど出てくる醸造アルコール論争。
「びお」では答えを出しません。あなたはどちらを支持しますか?

一般酒はいけないの?

実は、日本で流通している日本酒のうち、70〜80%程度が一般酒(普通酒)です。
特定名称酒に比べると原料の規制が少ないので、程度が低い、おいしくないと思われるかもしれません。

でも、ちょっと待って。

日本酒は、原料はもちろん、その製造手法に仕上がりが大きく左右される酒です。

特定名称酒の条件を満たさなくても、おいしくつくれる可能性があります。一方で、特定名称酒であっても、ちっともおいしくない酒も存在してしまうのです(もちろん個人の好みがありますが)。

同じ酒蔵でつくっている酒なら、酒の分類によって傾向が想像出来ますが、酒蔵が変わればガラッと変わるのが日本酒です。ですから、酒の分類だけで、あまり色眼鏡でみると、ちょっと損してしまうかも。
とにかく、飲んでみないとね!

日本酒が出来るまで

愛知県北設楽郡の酒蔵、関谷醸造さんのご協力で、日本酒づくりの工程をご紹介します。

関谷醸造は、日本酒の可能性を柔軟に追求し、高品質な酒造りを目指している地域の酒蔵です。出荷先のほとんどが地元・東三河で、酒蔵に併設する販売所では、生原酒の量り売りも行われています。近隣のコンビニでも取り扱われている、地元密着型酒蔵です。

生原酒の量り売り

生原酒の量り売り。要冷蔵です。


工程のうち、労力のかかるところは積極的な機械化を行っています。
人の手をかける作業に細やかな目配りをするための配慮です。このため、伝統的な酒蔵の風情はありませんが、そこでつくられている酒は地元を中心に評価が高く、全国にファンがいます。

さて、酒造りを工程ごとに追っていきます。
酒造りの工程

精米

酒質を決めるもっとも大事な要素の一つが米です。米の中心部を使い、お酒をつくります。

玄米

玄米

白米

白米


玄米を精米します。精米歩合は酒によって異なります。写真上が玄米。下は精米歩合40%。

洗米・浸漬

米を洗い、時間を計りながら浸漬(吸水)を行います。
洗った直後の米は米粒の表面だけ水を吸った状態にあるため、一晩低温庫に置いて翌日使用します。
浸漬は、米の使用目的(麹・酒母・もろみの各段階)や米の品種・精米歩合、水の温度に応じて時間を変えながら行い、目的の水分量になるように調整します。

蒸米

こしきを使い、せいろと同じような要領で蒸します。このときの蒸米能力、およそ1トン。
蒸し機
蒸気が上に上がってくるまで30分程度、そこから30分ほど蒸します。
蒸した米を放冷機に移して冷まします。
こしきを蒸米反転装置に移動します。

このとき、蒸し上った米を練り(「ひねりもち」という)、形や感触を確かめたり、食べてみることで、放冷機でどのぐらい冷ますか、また次の米の洗い方、浸漬の時間などの検討をします。

昔は蒸し上った米を担いで運んでいましたが、その工程は機械化されています。その分、米の蒸し上りの検討などに人が集中できるようになっています。
蒸した米
いただいてみました。
通常食べる白米のように柔らかくはなく、やや固め。精米されて丸く小さくなっているので、口の中で丸い粒々を感じました。これがお酒になるんですね。

製麹

蒸した米のうちの一部は、種麹を撒って、麹にしたてます。麹をつくる部屋(麹室)は、温度・湿度を調整し、麹菌が繁殖しやすい環境にしています。
蒸し米
蒸した米は半透明ですが、麹菌が繁殖すると白くなります。
麹菌で真っ白になった精米
2日程度で出来上がりますが、米の状況によって時間は変ります。
そのままでは麹菌が繁殖しすぎるので、麹室から出して、広げて冷ますことで、麹菌の増殖を止めます。
麹菌の見た目、香り、温度や湿度などの状態から判断する
麹づくりは、酒造りの中でも最も大切といえる工程です。見た目、香り、温度や湿度などの状態から判断するため、経験を積まないとコントロール出来ません。

酒母造り

発酵に必要な酵母を、もろみに使用できる状態まで培養する工程です。2週間ほどかけて、酵母が増殖し、アルコールや酸ができて、酒母が完成します。酒母室は、6~8℃の低めの温度に保たれています。

酒母造り

酒母造り


タンクにムシロを巻いたり外したりしながら、温度を調整して酒母をつくります。
酒「空」のタンク

こ、これは「空(くう)」!


石鹸の泡のよう

中はこんな感じ。発酵により泡立っています。


昔の蔵は開放的だったので、寒い時期しか酒造りが出来ませんでしたが、今は空調があるので、夏場以外は酒造りが出来るようになっています。

もろみ

酒母をタンクに移し、麹・水・蒸米を、通常4日間かけて、それぞれ3回に分けてタンクに仕込みます。これを「三段仕込」といいます。
一番最初は少し、次は多めに、最後は一番多く仕込みます。

もろみは微妙な温度管理が必要なので、タンクの周りに冷水ジャケットを通し、温度を調整出来るようにしてあります。
発酵して出る泡の出方や表面の状態、味、匂いなどをもとに、発酵状態を確かめて調整します。

大きな泡がブクブクと見える

こちらは、仕込んでから10日目のタンク。大きい泡が出ています。もう甘い香りが漂っています。

発酵中の酒

こちらは仕込んでから15日目のタンク。10日目に比べると泡は小さいですが、たくさん出ています。


タンクの中はガスが充満していて、呼吸も出来ないほどです。万が一、中に落ちてしまったら、声もあげられず、まず助からないとか…ちゃんと落下防止の柵がありましたが、ちょっとゾッとしました。

もろみによって異なりますが、大体25日〜40日ほどで、もろみができ上ります。

上槽(搾り)

酒と酒粕を分ける工程です。無数の布を通し、空気で押すようにして搾ります。
布を通ったものが「酒」、通らなかったものが「酒粕」です。
もろみを圧搾装置に入れるのが3時間ほど、搾り切るのは翌日までかかります。
もろみを圧搾装置に入れるのが3時間ほど、搾り切るのは翌日までかかります。
搾りたての酒をいただきました。
搾りたての酒をいただきました。
酵母が生きていて、発酵したガスがかなり含まれています。一般の日本酒からは想像出来ないほどガスがあり、鼻に抜ける感じです。荒さはあるがフレッシュで、甘みや旨みが感じられました(とは、同行したSの談。サヅカは運転手のため、現場では一切飲めず。まさに断腸の思い!)

酒粕

搾りたての酒粕をいただいてみました…が、普通に想像する酒粕とは似ても似つかない味。苦くて歯にくっついて、おいしいものではありません。しかし、これを空気に触れないように保存し熟成させると、おなじみのドロッとした酒粕に変わるのです。発酵って、本当に不思議ですね。
酒粕

ろ過・火入れ

搾った状態の酒はささ濁りで、まだ酵母や微生物由来の酵素が生きています。
このままの酒(生酒)は、これらの働きで品質が変化しやすく、低温での管理が必要です。
そこで、ろ過をして透明にして火入れをすることで、保存性を高めます。

貯蔵・熟成

生酒は-5℃で保管、火入れをしたものも温度調整のできるステンレスタンクで貯蔵します。
火入れ・濾過

貯蔵時、酒中の成分が反応して熟成が進みますが、過度の熟成を防ぐため貯蔵温度を制御します。
長い場合は3年近く貯蔵します。低温でじっくり熟成させることで、苦渋みや荒さがとれ、まろやかな酒ができ上ります。
半年ほどの短期貯蔵のものもあります。
短いもので半年、長いものは3年近く貯蔵
この後、壜詰めをして出荷です。

壜詰め・出荷

壜詰め後の商品も、温度管理された倉庫に保管され、出荷されます。
保冷車を使っての配送、クール便の使用、商店にも冷蔵管理のお願いをしています。
日本酒は常温でも長持ちするように思われがちですが、とてもデリケートな飲み物です。家庭でも冷蔵管理をしたい、と改めて感じました。

米と水、材料の話

関谷醸造で主に使っている米は、酒造好適米として有名な「山田錦」と、地元で主に作られている、山間地に向いた酒造好適米「夢山水」。最近では、高齢化で稲作が出来なくなった地元農家の田んぼを借りて、自社での米作りにも取り組んでいます。

米と並んで重要な水は、自社所有の山の湧き水。カルシウムやカリウムの少ない、超軟水です。

関谷酒蔵の酒は、甘めのものが多いのですが、これはこの超軟水に由来します。軟水は、もろみがやや発酵しにくいことがありますが、淡麗でやさしい品質の酒造りには適しています。地域ごとに異なる酒の味は、その技術の違いももちろんですが、水によるところも大きいのです。

また、醸造アルコールについても、出来るだけ自社の、地元のもので賄えないかと考え、上槽工程で出来る酒粕を使って粕取り焼酎をつくり、これを醸造アルコールに代えて使うことにも取り組んでいます。かつて、江戸時代の「柱焼酎」がありました。
これに限らず、技術者として、よいことがあれば積極的に取り組みたいと語っていただきました。

さて、今回ご案内してくださったのは、関谷醸造株式会社・製造部の村松隆広さん。
関谷醸造株式会社・製造部の村松隆広さん
実はもともとそれほど日本酒が好きではなかった、という村松さんですが、
ひょんなことから関谷醸造の手伝いをすることになり、社長に認められて正式に入社、製造を担当するようになりました。
実際に酒造りに携わると、その難しさ、深さにはまっていったといいます。今でも「どうしてこうなったんだろう?」「こうしたらどうなるだろう?」の連続です。
酒造りは、こまめな状態の確認と対応が必要な仕事ですから、なかなか休みをとることもままならなかったといいます。今では会社の体制整備も進み、交代で休みをとれるようになったものの、休みの日でも、携帯電話のメールで工場からの写真をチェックし、指示を出すこともあるといいます。

酒造りは、温度・湿度に影響されるため、いつも天気を気にしている、という村松さんでした。

取材を終えて

さて、こうして見てみると、酒造りには微妙な調整をする余地が沢山あることがわかります。同じ醸造酒であるワインは、ぶどうの出来栄えに大きく左右され、年によって味が異なることが、あたり前になっています。一方の日本酒は、もちろん年によって米の違いや天候の違いがあるものの、醸造技術によって、毎年同じ味をつくるために努力するという風潮が強いようです(もちろん、日本酒にも年による出来不出来がありますが、ワインほどは言われません)。
「いつもの味」を楽しめるのも素敵ですが、日本酒ファンとしては、日本酒にも、「今年は当たり年だ」という声を、もっとあげてもらってもいいのではないか、などと思ってしまいます。もっとも、毎年当たってほしいのですが…

日本酒を飲もう

実は、日本人の酒類全体の消費量は、減少傾向にあります。飲酒運転の厳罰化や、景気の低迷などの要素が考えられますが、実は特に苦戦しているのが日本酒です。日本酒の販売量は、平成7年以降ずっと下落しており、平成19年には、7年の半分程度まで落ち込んでいます。
背景には、焼酎ブームや発泡酒などの価格の安い酒の普及があるのかもしれません。

外で飲むのはお金がかかる、ということで、「家飲」ブームの昨今です。晩酌にはビール、というのがお約束かもしれませんが、日本酒は、米で出来ていることもあってか、ご飯がすすむ料理との相性は抜群です。

芸術品といってもいいような工程を経て生まれてくる日本酒。おいしいお酒は料理の味も引き立ててくれますし、おいしい料理はまた酒の味も引き立てます。

旬の食材で料理をしたら、そのお供に、ちょっと日本酒をたしなんでみませんか。

取材協力 関谷醸造株式会社
http://www.houraisen.co.jp/