パリのマイクロモビリティシェアリングサービス
ところかわれば
| 森弘子
年の瀬12月、日本では師走で年末の慌ただしい雰囲気になりますが、パリでは12月はあちこちにクリスマスのデコレーションやイルミネーションがほどこされ、街がそわそわしはじめます。でも、今年はちょっと様子がちがいます。日本でも報道されているように、2019年12月5日に開始された年金制度改革に対する大規模なゼネストにより、この記事を書いている12月末時点で、パリ市内の公共交通機関は1ヶ月近くほとんど機能しておらず、街には徒歩で移動する市民が溢れ、どことなく疲れた雰囲気が流れています。メトロ1番線と14番線は無人運転なので通常運転しており、一部路線バスも本数を減らして運行していますが、それでも市民にとっては大打撃。通勤はもちろんのこと、12月のクリスマス商戦にぶつかったために各デパートや商店の売り上げも軒並み下落。こどものいる家庭では、メトロもバスもほとんど使えないので、こどもの送り迎えが難しく保育園をお休みしたり、徒歩で数十分かけて連れて行く、という状況になっています。
そんな公共交通機関が麻痺しているパリで今、大活躍しているのがシェア電動キックボードとシェア電動サイクル。パリには大きく分けて2種類のシェアサービスがあります。いずれも今回のストの前から展開していましたが、公共交通機関に代わる足として、利用者が急増しています。
一つ目はパリ市の運営するVelib(ヴェリブ)。2007年からつづく老舗のシェアシステムです。パリは自動車による公害が問題視されており、現在でもパリ市内から自動車を排除しようとする様々な対策が投じられており、10年以上前に開始されたこのシステムもその一環です。Velibは自転車を止めるための駐輪ポイント”station”(スタシオン)があり、出発と到着はそのポイントである必要があります。範囲としては、パリ市内に加え、La Petite Couronne(パリ近隣の三県、県といっても”市”のサイズ程度)までstationがあり、Velibで移動することができます。利用はstationにあるBorne(ボルヌ)という端末でチケットを購入することができます。短期と長期での利用方法があるので、旅行者でも利用が可能です。
二つ目は、ここ1〜2年急増した民間による電動キックボードと電動サイクルのシェアサービスです。現在少なくとも5種類以上の会社が参入しており、こちらはVelibと異なり駐輪ポイントがなく、街中で自由に乗り捨てができます。乗り降り自由で便利な反面、範囲はパリ市内のみ。市内を超えるとGPSによって認識され、減速してしまう上、市外には駐車できないので利用終了をアプリで設定することができず、市内まで戻る必要があります。駐輪する範囲も、セーヌ川沿いなど一部駐輪不可の場所があります。
筆者がよく利用するのは、電動サイクルと電動キックボード両方を運営している、車配車サービスやフードデリバリーでおなじみのUberによるJUMP。全てのサービスが同じアカウントでできるので、登録がスムースでした。JUMPは市内に展開する台数も最近増え、アプリを起動すると利用可能なキックボード、自転車両方が同時に確認できるので便利です。ちなみに自転車は電動アシスト付きで時速25kmまで出るのでとても速く移動できます。一方、電動キックボードは時速20km。度々歩道を走る人を見かけますが、電動のものは車道を走ることが義務付けられています。
これらのサービスでストのあるパリでもスムースに移動・・・とはいきません。利用者が集中してしまい、特にパリ市外にも出ることができるVelibは、通勤・帰宅時間には争奪戦になります。他の民間によるサービスもその時間帯は軒並み空きがなく、また利用者が急増したため、通常であれば利用者が少ない時間帯等に個々をトラック等で回収し、充電し街中に戻すというシステムになっているのですが、充電が追いつかず、アプリに表示されていても実際利用できないということもあります。また使用頻度が急増したので、故障しているものもよく見かけます。
それでも日中は比較的見つけやすく、わたしも何度か歩くのには遠い目的地までの移動に助けられました。Velibも民間のサービスも、登録はとても簡単にでき、操作方法も簡単なので、パリの観光にもうってつけです。2020年1月にはストも落ち着くだろうとの予測ですが、スト終了後も、パリの街並みをシェア電動キックボードやシェアサイクルで走ってみるのも良い想い出になるのではないでしょうか。
Velib https://www.velib-metropole.fr/en/map#/
JUMP(Uber) https://www.jump.com/fr/en/