パリのちょっと変わった複合文化施設CENTQUATRE
ところかわれば
| 森弘子
昨年11月からつづいていたパリのゼネストもようやく落ち着きはじめ、1月の第3週目頃からメトロも通常運行になりました。外出もメトロが使えなかったので遠くに行くことが難しかったのですが、ひさしぶりにパリ内を自由に動くことができるようになり、先日自宅からメトロを乗り継いで、パリ市内北東にある「CENTQUATRE(サンキャトル)」に行ってきました。
CENTQUATREは、2008年にオープンした、パリ19区にあるパリ市が運営する文化複合施設です。CENTQUATREは104という意味。この施設の住所番号が由来です。1870年代に建てられた建物をコンバージョンしたもので、現代アートなどの展示室、劇場、アーティストインレジデンス、スタートアップのためのスペースやフリースペースがあります。2008年オープン当初は来場者も少なく経営不振だったのですが、2010年に経営陣が変更され新たなディレクターが着任した後は来場者数も増え、現在ではパリの中でも重要な文化施設のひとつとなりました。
特徴は、広大な”フリースペース”があること。外部に閉じた印象の建物の正面から中に入ると、中央に大きな抜けた空間が広がります。そのホールと呼ばれる空間は、アマチュアからプロ、子どもから大人まで誰もが、ダンス、ジャグリング、演劇、歌・・・など自由に使うことができます。ホールには屋根があるので、天候に左右されず使えるのも人がたくさん訪れる理由。いつ訪れても渾然一体となった熱気が大きな空間を埋めつくしています。
この施設のユニークさは、このフリースペースだけでなく建物の歴史にもあります。実はこの複合施設、以前は葬儀場でした。1874年から1997年まで、約120年間もの長い間、毎日約150組の葬儀が行われて来ました。1874年にパリ大司教の命で建設され、1905年に国家と宗教(キリスト教)が分離したのちには、パリ市による市営となりました。1993年にパリにおける葬儀業の市による独占営業が終了すると、この葬儀場の営業は低迷し、1997年に約120年の歴史に幕がおります。葬儀場にこのような広大な空間が用意されたのは、葬儀場に棺を運ぶ霊柩車を駐車するためで、写真1枚目のスロープは地下にあった厩舎に馬を移動させるためのものでした。現在は主にフリースペースとして使われている広大なホールには、当時は葬儀に関連する装飾品やタペストリー、絵画などを売る商店も連なっていたそうです。その後2003年にこの建物の再利用が決定され、2008年に文化施設として生まれ変わりました。
今回訪れた目的は、施設の一角にある子どもたちのためのスペース「La maison des petits(小さい子どもたちの家)」。ここのところパリは雨が続いていて、なかなか広い空間で遊べないので、メトロが再開してさっそく行ってきました。このスペースでは、子どもたちが自由に遊んだり、創作できる場所があり、対象は新生児から5歳まで。オープン時間は月曜以外の14時半から18時までで、予約は不要ですが、入場制限があるので、確実に入るためにはオープン前から並ぶ必要があります。入場する際には、スタッフから年齢などの簡単な質問を受け、注意事項を説明してもらったのち、時間制限なく遊ぶことができます。中には子どもたちがよろこぶ仕掛けやおもちゃがいっぱい。スモックも用意されているので、家ではなかなかできない絵の具を思い切り使った創作も可能。子どもたちが遊ぶだけでなく、スタッフへの育児の相談や他の保護者の人と知り合い、会話ができるのもこの場所の魅力です。
昔は葬儀場として使われていた場は、今では子どもから大人まで、たくさんの人が集まる、生き生きとした自由な表現の場となっています。日本では葬儀場のコンバージョンはそのイメージから少しハードルが高そうですが、フランス人はどう受け止めているのでしょうか・・・?
Le CENTQUATRE PARIS http://www.104.fr/
5 rue Curial – 75019 Paris
Riquet, Metro line 7
rimée, Curial, Bus 45,54
Rosa Parks, RER 3, Tram 3b
営業時間 火曜〜金曜 12時〜19時
土曜、日曜 11時〜19時