住まいのグラフィティ
Vol.8 奏でるSumai
アトリエ樫
ご主人はオーボエ、奥さんはフルートを奏でます。音楽好きの二人が求めたのは、音楽室を併設した小さな住まいでした。
今回の計画をスタートする以前に、ご夫婦が購入を検討された土地を、じつは二カ所ほど調査しています。偶然かもしれませんが、どちらも周囲に竹林が広がる、台地の縁のような場所でした。最終的に購入を決めたこの敷地の南側にも、深い竹林が広がり、周囲の環境からは隔絶した静けさがあります。「音楽室を併設した住まいを求める」という物理的な要求があるのと同時に、「静寂に包まれて、楽器を奏でたい」という内なる想いが、つねに二人にはあったのだと思います。
全体配置としては、音楽室を併設したこともあり、敷地南側の静寂に対して住まいを開き、散歩などの人通りのある敷地北側に対しては、少々閉じた構成となりました。音楽室は音場を考慮して不定形平面としています。
坂田卓也
- 気積を確保するため、音楽室は床組みを設けず、ベタ基礎コンクリートの天端を床仕上がりとする。床の段差が時に客席となる。
- 塗壁は施主工事。足場を設けず塗れる範囲を塗壁とした。結果的に低重心の印象。
- 音楽室と居間の中間に配置したキッチン。音楽室は時にセカンドリビングとして使われることも想定。
- 竹林のフィルターを介して届く、澄んだ柔らかい日差しが印象的。

天井高を低く抑えた2階部分。吹抜けを介し、1階の居間とつながる。

外部の明るさを室内に導く、白く塗り込めた軒天井。
撮影=坂田卓也