色彩のフィールドワーク:もてなす緑
第14回
緑を感じる外装色
—メンズ・ウエアショップの店先にて
サクラの季節が終わり、あっという間に新緑の季節となりました。明るく柔らかな新緑はこの季節ならではの光と風を浴び、本当に気持ちが良いものです。
この時期の緑は四季の中で鮮やかさが高く、まちなみに華やかさをもたらしています。職場に向かう途中、目黒川沿いを歩いていると、ひと際色気を感じる建物が見えてきました。近づくにつれ、隣の建物との間にあるシマトネリコの枝が外観に彩りや動きを添えているかのようで、絵になる景色だなと感じました。さらに、明るい日差しが川沿いの木々を通し、ファサードに動きのある陰影をつくりだしています。
季候が快適である、ということはお店の構え方にも変化をもたらします。気持ちの良い風や陽射しを取り入れるため、出入り口をオープンにしているお店を多く見かけました。この季節ならではの開放的な雰囲気が、まちなみに躍動感や活気を与える重要な要素となっている、と感じます。気温が徐々に高くなり、夏に向け新しいシャツを買おうかな、という気持ちに誘われた若い人たちが(……恐らく)、次々とお店に入っていく様子が、何とも楽しく感じられました。
外装色は明度が低めのイエロー系で、扉にはさらに一段渋い、いわゆるカーキ色が用いられています。新緑の緑は黄緑系ですから、外装色とは色相(色味)が隣同士の関係、ということになります。外装色と緑が持つ色味はかなり近しい関係にあり、例えるなら「それぞれの色同士が呼び合っている=互いに近づくことで馴染んで見える」状態にある、といえるでしょう。
ところで観察しているうちに気が付いたのですが、店舗向かって右側にあるこのシマトネリコはどうやら隣の敷地のもののようです。外観の色調とのコーディネートがすっかり(ちゃっかり?)整えられていて、こうした取り込み方もあるのだなあ、としみじみ感心していまいました。物理的に植物がふんだんに植えられていなくても、充分に緑を「感じる」ことができ、その緑の印象がまちなみのつながりやまとまりにも貢献しているのではないか、と感じます。
お店の方、あるいは外観をデザインされた方がどこまでこの現象を意識していたか、はさておき。ちゃっかり万歳! と思ってしまいました。
ウエルカム感 ★★★★
ボリューム感 ★★★★
全体のカラフル感 ★★★★★
※ごく個人的な判定ですが、この3つの指標に記録をして行きます。必ずしも★が多いことが良いという訳ではなく、シンプルでもカラフル度が高くて楽しいなど、演出のポイントや効果の発見に繋がると面白いなと考えています。