現代に「野の家」を。
ベーシックな暮らしを叶える家のかたち
Vol.2 大きな傘の下に育まれる
2人の家/みんなの家
「野の家」2軒めとして紹介するのは、三澤文子さん設計の住宅です。
傘を広げたように、家の真ん中に大黒柱中心柱があり、屋根が空間を包みます。
夫婦2人の家ではなくみんなの家になるように、おおらかな関係性をつくりだしています。
傘を広げたように、家の真ん中に大黒柱中心柱があり、屋根が空間を包みます。
夫婦2人の家ではなくみんなの家になるように、おおらかな関係性をつくりだしています。
施主が定年を迎えた時期に建てた「傘の家」。その家は、夫妻の生きがいを育んでくれる場になった。IT関連の企業で長らく勤め、かねてより「時間が出来たら楽しみたい」という茶道を始めた夫妻。木の家に住んで、四季を暮らしに取りこむ作法も楽しみに変わった。実家の蔵にあった古いものを綺麗にして大切に仕舞い、丁寧な暮らしも出来るようになった。夫は冬に備えて、年中、薪の調達に策をめぐらし、そのことから山の人達とのつながりも出来た。年に2回は、離れの茶室でお茶会。その時の懐石の場になる和室は夫妻の寝室である。
普段は夫妻の落ち着いた暮らし。ときどき、この家になってから、やけにマメに来てくれる、すでに巣立った子どもたちやら、お茶仲間、山の人達が、なんやかやと集まってくれる。「傘の家」は、2人の家でもあり、みんなの家でもある。
三澤文子(Ms建築設計事務所)

南のキッチンから北庭を見る。4間半×4間半の正方形を4つの空間で分割。8帖間より少しゆとりがある広さ。建具のみの仕切なので、大きな空間になる。北庭の向こうに離れの茶室。
- 中心に立つ柱は径300の10角形柱。この柱から4隅に架かる梁がブレースの役目を果たす。頬杖は漆塗りで、色はベンガラ。
- 北面の軒先空間。軒の出が1.8メートルに対し、ヒノキの濡れ縁は奥行き1.5メートル。小雨の日でも座ることが出来る。

西外観。濡れ縁の手前に玄関がある。4間半角の正方形の空間から西側に出張った水廻り部分を一枚屋根の中に収めているため屋根が変形して見えるが、その形もこの平屋の特徴の一つ。

竣工直後の南外観。緩やかな方形の屋根が見える。南庭にはその後、小さな畑と愛犬の犬小屋が出来た。南側の台所からもアプローチしやすく、濡れ縁は台所道具や洗濯物を干すなどして生活感のある空間になった。