現代に「野の家」を。
ベーシックな暮らしを叶える家のかたち
2019年5月1日に元号が変わるといいます。新しい元号の日本はどんな国になっているでしょうか。まさに時代の転換期に生きる私たちは、どのような住まいを手にすることができるでしょうか。
これからの時代基本となる家の形は、平屋あるいは平屋に似た素朴なものなのかもしれません。地面にしっかりと張り付いて、風景の起伏になじむ大きさ。農地に影を落とさない小さくも大きく暮らせる家。それは、都市と地方という二極化した暮らしのあり様ではなく、新しく農との関わりを生む家を私たちは求めるようになると考えるからです。
そんな、私たちのベーシックな暮らしを叶えてくれる住宅を、びおでは「野の家」と名付けました。ここに、3人の建築家による「ベーシックな暮らしを叶える家のかたち」を紹介します。
Vol.3 太陽を活かす、片流れの大屋根
「シンケンスタイル」として打ち出すそのプランは、空気集熱式床暖房※を採用し、片流れの大屋根によるひとつながりの空間で構成されています。
平屋のようにコンパクト。でも、大きく伸びやかに暮らせるベーシックな家です。
サーファーが集う江口浜を眼下に望むこの家は、2003年の竣工からやがて15年を迎える。嬉しいことにこの家も時間の経過の中で、次第にその魅力を増してきたように思う。特別なものは何もないが、大切なことがいっぱい詰まったこの空間を住まい手が意のままに使い、暮らしを楽しんでいる様がその証である。
空気集熱式床暖房に出会って30年、太陽からの無償の施しに味をしめてその数は1,500棟を数えるまでになった。
太陽からの無償のエネルギーを活かし、床下から家中に満遍なく行き渡る新鮮空気によって家は健康を保つ。片流れの大屋根によるひとつながりの空間は、住まい手の自由な発想に柔軟に適応してくれる。
太陽の恩恵を受け入れることを優先すると、自ずと屋根勾配が上がり、小屋裏付近に十分な高さを得ることができる。登り梁で屋根の荷重を支える構造である。それは平屋とは一味違う、新しい家のかたち「シンケンスタイル」だ。実践の中からしか得られない経験と試行錯誤を重ねる中で見いだした「シンケンスタイル」。その私の住まい創りの方法は、何よりも住まい手の誇りと満足という「生の声」に支えられている。