現代に「野の家」を。
ベーシックな暮らしを叶える家のかたち
Vol.3 太陽を活かす、片流れの大屋根
「野の家」3軒めは、迫 英德さんが設計する住宅です。
「シンケンスタイル」として打ち出すそのプランは、空気集熱式床暖房※を採用し、片流れの大屋根によるひとつながりの空間で構成されています。
平屋のようにコンパクト。でも、大きく伸びやかに暮らせるベーシックな家です。
「シンケンスタイル」として打ち出すそのプランは、空気集熱式床暖房※を採用し、片流れの大屋根によるひとつながりの空間で構成されています。
平屋のようにコンパクト。でも、大きく伸びやかに暮らせるベーシックな家です。
サーファーが集う江口浜を眼下に望むこの家は、2003年の竣工からやがて15年を迎える。嬉しいことにこの家も時間の経過の中で、次第にその魅力を増してきたように思う。特別なものは何もないが、大切なことがいっぱい詰まったこの空間を住まい手が意のままに使い、暮らしを楽しんでいる様がその証である。
空気集熱式床暖房に出会って30年、太陽からの無償の施しに味をしめてその数は1,500棟を数えるまでになった。
太陽からの無償のエネルギーを活かし、床下から家中に満遍なく行き渡る新鮮空気によって家は健康を保つ。片流れの大屋根によるひとつながりの空間は、住まい手の自由な発想に柔軟に適応してくれる。
太陽の恩恵を受け入れることを優先すると、自ずと屋根勾配が上がり、小屋裏付近に十分な高さを得ることができる。登り梁で屋根の荷重を支える構造である。それは平屋とは一味違う、新しい家のかたち「シンケンスタイル」だ。実践の中からしか得られない経験と試行錯誤を重ねる中で見いだした「シンケンスタイル」。その私の住まい創りの方法は、何よりも住まい手の誇りと満足という「生の声」に支えられている。
迫 英德(シンケン)
表題写真/2階ホールよりダイニングを見下ろす。十分な高さを得ながらも、太陽熱の床暖房で屋内の温度は均一に保たれる。

竣工時。敷地ではなく「太陽の軌道」を考慮して建物を配置する。冬の夕陽を取り込む。

竣工時、東外観。片流れの大屋根で太陽のエネルギーを取り入れる。

海に開く家。建物は斜に構えて、夏の西日を入れない角度に。(撮影=北田英治)

2階と1階は吹き抜けでつながる。大きなひとつながりの空間は住まい手の自由な発想に応えてくれる。

勾配屋根をそのままに、木構造が表しの大胆な構成。2階下の寝室は硝子の天井。

大きな空と、西の海。開放的な木のお風呂。

キッチンからの夕焼けの空、夕暮れから日没までの至福の時間。
※太陽熱で暖めた空気を床下のコンクリート蓄熱槽に送り込み、その放射熱で室内をくまなく暖める仕組み。