F・LL・ライトに学ぶ
ヴィンテージな家づくり
第11回
岩の上のキャビン
Walker邸 (1948)
この家は太平洋に面したカーメル湾の波打ち際の岩の上にあります。Walker夫人のための週末住宅です。夫人は「優美ではなくシンプルにつくってください」とライトに要望したとのこと。内外とも装飾的なディテールはありません。まるで船の先端のよう。平面は一辺4フィートの平行四辺形モジュールで展開され、小ぶりですが伸び伸びとしたプランです。
居間は六角形で5面がガラス窓、段々に外側にせり出しています。残りの一面が屋根を支える大きな暖炉。ガラス面の柱は4本の細い斜めの鉄柱だけ。嵐の時は屋根が揺れることもあるとか。中に入るとすぐ目の前に海が広がり、太平洋に乗り出す船の中にいるような感じがします。ガラスの垂直面は全てはめ殺しです。せり出した平らなガラスは少し外側に勾配がついていて下向きに開きます。窓枠を見せず波のしぶきを避けて風を通すデザインです。
トイレの入り口は大きな人は入れないくらい狭いのですが、横板張りの押縁にトップライトの光が陰を落とし、美しく魅力的な洗面所です。ドアを開けたとたん息を呑んでしまいました。トイレといえども全く手を抜いていません。
ライトは、一番の作品は?と問われると、常に“Next one”と答えたそうですが、この家はかなり気に入っていたようで、“岩の上のキャビン“と名付けました。