まちの中の建築スケッチ

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大崎八幡宮
——杜の中の伊達の社——

このたび、第12回JIA東北住宅大賞2018に応募した、唐丹小白浜とうにこじらはまの「潮見第」が、奨励賞を受賞した。その授賞式に呼ばれ、設計者、棟梁とともに、建築主として参列した。日本建築家協会の東北支部には、建築基本法制定の活動でもお世話になっているが、唐丹プロジェクトの拠点ができたのも、建築基本法制定準備会の支援のもとでの成果であり、それが評価されたのは嬉しい。ただ審査評には、「意気込みは感じられたが拠点としてはいささか中途半端な印象」とある。確かにこれからの展開こそが求められると素直に受け取った。それにしても、三陸での大災害の後の復興をうたう住宅が他に見あたらなかったのは寂しい限りである。ほとんどがハウスメーカによる地域性の見えない住宅による復興がなされているということを暗に示しているようでもある。潮見第が、三陸漁村における住宅の一つのモデルになると良いと思うのだが、なかなかそんな運動を展開するのもなかなか容易でない。

神田順 まちの中の建築スケッチ 大崎八幡宮

ということで半年ぶりの仙台で、少し時間を作って大崎八幡宮を訪ねた。仙台市の北西は鬼門にあたる方角、蛇行する広瀬川を少し上る位置でもある。杜の中に、伊達藩の守り神として正宗の時代から鎮座している立派な御社である。
由来を見ると、坂上田村麻呂の東夷征伐にまで遡るようだ。室町時代に奥州管領の大崎氏が祠を移し、さらに伊達政宗が仙台に城を構えて後、今の台地に祀ったのだという。
バスで仙台駅から大通りとビル群の中を約20分で到着する。国道48号線に面した大きな一之鳥居をくぐると、緑の杜の中に入る。98段の石段を登り、さらに石畳の参道を行くと長床と呼ばれる門の役割をもった建物をくぐって、社殿が現れる。本殿は、こけら葺きで、初夏の強い陽射しが曲面を輝かせている。正面の破風も鳳凰が舞う豪華な装飾、屋根を支える梁や長押にも極彩色の彫り物がみられる。柱や長押から下はすべて黒塗りで、白砂と周囲の深い緑の中に神々しく建っている。
あらゆる部分に伝統技術としての芸術が認められるのに、外から眺めて400年前を想像するだけで、丁寧に見ることもなく早々に引き上げることを申し訳なく思った。日光東照宮と建築形式的に同様の権現造りと説明されるが、学生時代の思い出は、ブルーノ・タウトの評価した桂離宮との比較から、日本の美の原型は、東照宮よりは桂離宮にあり、というイメージが根底にあって、極彩色の装飾に対して少し見下すような偏見から抜けられずにいた思いを、少し揺り戻すことができたかもしれない。