びおの珠玉記事
第58回
体からの便り、ウンコ。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2010年05月16日の過去記事より再掲載)
ウンコとは?
ウンコ、ウンチ、クソ、糞、大便、などといろいろな呼ばれ方をする排泄物です。
ウンコ、ウンチという呼び方は、用を足す時に踏ん張るときの声からきているといわれています。
「糞」という字は、「米」と「異」からできていて、人間は米を食べて、異なるものにして排出する生き物なのだなあと実感します。
医学的には、「便」という言い方をします。これは、体からの「便り」という意味なのでしょう。
ウンコには、体からのメッセージが強く込められているのです。
ウンコを嫌わないで!
自分のからだから出てきたものなのに、人はウンコを毛嫌いします。ウンコは汚くて、臭いので物笑いの種にもされます。
臭いものにフタをするという言葉もあるくらいですが、その割に、お腹から湧き上がってきた便意には敏感です。慌ててトイレに入り、便座から力を込めると、切れの良い大きなウンコがドボンと落ちます。
ちゃんと出し切ったときの開放感はけっこういいものですが、トイレを出てしまうと、流した水と共に忘れてしまいます。
たまにはお尻を拭いたトイレットペーパーを被せないで、ウンコをよく眺めてください。便器に浮かぶそれは、あなたの分身であり、あなたのからだが綴った軌跡というか、リアルな情報が一杯に詰まっているのです。
ウンコの成分
ウンコは胃と腸で消化、吸収されなかった残りカスに消化液、消化管の粘膜や腸内の細菌などが混じってできたものです。
この内、腸内細菌の量はウンコ全体の30%以上を占め、またこれを含めた水分の量は80%にもなります。
ウンコの量
食べたものが出てくるまでの許容時間は、普通10時間から12時間。これより間隔が短いと下痢気味。逆に時間が掛かりすぎると便秘であることがわかります。日本人1人のウンコ量は1日150〜300g。多い少ないは、食事の内容によって違いますが、水分をたくさん吸収するもの、例えば野菜の煮物やジャガイモを食べると、大きくて重たいウンコが出ます。
ウンコ浮き沈み
便器にドボンと落ちるウンコ。
浮いたウンコには消化不良から生じるガスが多く含まれ、逆に沈んだウンコは脂肪分があるため、食事が肉寄りに偏っていたことがわかります。理想は、ゆっくりプクプクと沈んでゆくタイプです。
ウンコの臭い
ウンコの臭い成分は、腸内細菌が出す排泄物により、その日の食事や健康状態によって変わってきます。ちなみに肉食メインだと硫化水素などの腐敗臭が強く、また甘いものに偏っていると、腸内の発酵作用で酸っぱい臭いが混じってきます。
なお、バランスの取れた良質なウンコの臭いは露骨なものではなく、人によっては微かな郷愁さえ感じるとか……。
「善玉」と「悪玉」のバランス
腸の中には100種類以上、100兆個もの細菌が棲んでおり、主に「善玉菌」と「悪玉菌」の2種類にわけられます。ビフィズス菌や乳酸菌に代表される善玉菌は、腸の働きを活発にします。逆にウェルシュ菌などの悪玉菌は腸の働きを悪くするのですが、こうした菌も食物に含まれる外敵菌を排除するため、からだにとって必要なものです。
善玉菌と悪玉菌の比率は「7:3」が理想ですが、そのバランスは1日の食事ですぐに変化します。つまり、腸内が乱れていても、日々の改善で回復できるものなのです。例えば肉類を多く食べた翌日は、野菜や乳酸の入った食品を摂るように心がける—必要なのはバランスであり、それを意識した食生活を送ることが、良いウンコへと繋がるのです。
腸と脳の親密な関係
腸は「第2の脳」とも呼ばれています。脳の支配から独立し、まるで意思があるかのような働きをするからです。
例えば下痢。食物と一緒にからだに取り込まれた有害物質を外部に排出するため、腸自らが下痢を起こさせます。
脳と腸は自律神経によってネットワークを組み、密接な関わりを持っています。しかし、そのぶん腸は心理的なストレスにも反応してしまう、大変デリケートな存在でもあるのです。
「過敏性腸症候群」は、精神的な不安や、過度のストレスが引き金となって発症するとされ、不定期な下痢や便秘、めまいや睡眠障害、うつ状態なども引き起こす病気です。
つまり腸と脳の間で不和が生じ、からだのバランスが崩れてしまった状態を表しています。
こうした疾患には「食事をする」「適度に動く」「よく笑い、よく寝る」の3点に根ざした日常のリズムを程よく整えることが、第一の予防法です。
ウンコの色
ウンコの色にはそれぞれ意味があり、からだの状態を明確に表しています。食べたものによって、変わった色が出ることもありますが、ときには注意が必要な場合もあります。色の意味を知れば、普段からウンコに対する関心も高まります。
①茶色の場合
ウンコがウンコたる色です。この色は肝臓から生成される胆汁という黄土色の物質が作用したもので、これを基本に、栄養や体調の具合によって色が変わります。食べ物の色素によっても違いが出ます。
②黄土色の場合
からだと心が非常に充実した状態の色です。赤ちゃんや成長期の子どもによく見られるウンコですが、安定した食事バランスと生活リズム保つことで、大人でも出すことができます。
③ほとんど白に近い色の場合
胆汁が少ないと、ウンコは白っぽくなり、同時に黄疸が出て顔が黄色くなります。これは胆汁の通り道である総胆管が結石やがんなどで狭くなって起こる現象です。バリウムを飲むと似た色になりますが、もちろんこちらは無害です。
④茶から黒っぽくなっていく場合
主にウンコが腸内に留まり、胆汁が時間と共に変化していった色です。多くは便秘の状態を示し、ウンコに含まれる不要なものまで吸収してしまいます。肌荒れやアトピー性皮膚炎の原因にもなりますので、注意が必要です。
⑤やけに黒っぽい場合
食道動脈瘤破裂、胃潰瘍や胃がん、十二指腸潰瘍による出血を伴うタール便の恐れがあります。貧血予防で鉄剤を飲んでいる人も真っ黒いウンコが出ますが、こちらは心配ありません。
⑥赤色になっている場合
いわゆる血便です。大腸や肛門付近で起こる出血で、痔や重いストレス、食中毒などが考えられます。また大腸炎やその付近の潰瘍、がんなどでも同じ色になります。大腸がんの場合は赤黒い出血になります。
⑦緑色の場合
急性腸炎や食中毒にかかったときの色ですが、ほぼ野菜のみの食生活でもこうしたウンコになります。ただし鮮やかな緑色の下痢便を日に十数回も排出する場合は、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎という危険な病気のおそれがあります。
ウンコの形と硬さ
口に入れた食物が、各消化器官をめぐって出てくるウンコ。正常であれば、すんなり出口までたどり着きますが、途中で渋滞が起き、硬くなったり、変色することがあります。ウンコにとって、体内は天候の変わりやすい山道なのです。ゆえに出てくる形もまた、体内の状態を細かに物語っています。
バナナ状
からだが健康、かつ正常な状態で出てくる標準的なウンコ。食事のバランスも良く、各消化器官が正しく機能していることがわかります。
ヒョロヒョロ または ゲル状
からだの不調で消化不良が起こると、ウンコは水分を多く含んで外に出てきます。肉食や大酒家に多く、長く続けば、腸が荒れているおそれも。
コロコロ状
ウンコが腸に長く留まり、カチコチになった状態。これが細かいポロポロ状であると、過敏性腸症候群にかかっている可能性があります。
便器の話
現在新築される家のほぼ100%に、洋式便器が設置されているといわれています。リフォーム希望箇所でも常に和式便器はターゲットにあがっていて、和式便器が日本の家庭から消え去る日も遠くないのかもしれません。
和式便器のニーズは、不特定多数の出入する場所にほぼ限られています。知らない人が座った便座に肌をつけたくない、という人が多いからだとか、掃除が楽だからなどの理由があるようです。
一方、家庭で和式が嫌われるのは、その姿勢からくる足腰への負担が主な理由のようですが、反面、そのことで日本人の足腰は鍛えられていたのでは、という説もあります。ウンコの状態や色を確かめるには、和式の方が便利なのですが、家庭の和式トイレはもはや絶滅危惧種です。和の回帰がさまざまなところで起こっていますが、さて、トイレにもその波はくる日はあるのでしょうか。
ともあれ、ウンコを観察して自分の体調を把握して、健康に過ごしましょう!