色、いろいろの七十二候
第11回
菖蒲華・ホタル
鴇色 #F4B3C2
桔梗色 #5654A2
各地で「ホタルまつり」が開催されています。ホタルが集団で舞う様は圧巻で、まさに吹雪のようです。
最近は「蛍の光」が卒業式などでも歌われなくなってきていて、閉店のテーマソングのようになってきているようですが、もともとは勉学の詞です。歌詞の「蛍の光 窓の雪」は、夏は蛍の光を、冬は窓の雪の反射する光を頼りに勉強をした、という、中国の故事が元になっています。
随の二代皇帝・煬帝が作らせた庭園に、ホタルがいたらなおよいだろうと、ホタルを集めさせました。大量のホタルが集められ、あたりはホタルの光であふれたといわれています。
同じようなことは今も行われています。
先に挙げた「ホタルまつり」もさまざまで、ホタルが自生しているところに出かけて行って、そっとホタルを見てきましょう、というものばかりではありません。養殖したホタルを見せるところもあります。
ホタルは、イベント用に販売もされていて、通販で全国何処でもお取り寄せが可能です。
イベントで放たれたホタルはどうなるのでしょうか。その場で死に絶えるのか、あるいはその場で殖え続けるのか。
例えば、日本のゲンジボタルの場合は、遺伝子型が東北、関東、中部、西日本、北九州、南九州の6つにわけられるといいます。
これらをまたいでホタルを移動させ、そこで交雑があれば、いわゆる遺伝子攪乱が起こってしまいます。
遺伝子攪乱があったからといって、ホタルが全然別の生き物に変わってしまう、というわけではありません。けれど、イベントの、商売の結果、本来そこにはいないであろう種が交じり合ってしまう、と考えると、とうていどんどんやれ、といえるものではありません。
ホタルの最大の魅力、それはホタルが棲み、増えることが出来る環境そのものではないでしょうか。ホタルは清流に棲み、カワニナなどを食べて生きます。当然のことながら、ホタルを食べる生物もいます。そうした環境の中で、成虫まで生き残ったホタルが光を放ち、僅かな寿命を全うします。ホタル以外のたくさんの生き物がいて、はじめてホタルが飛んで光るのです。
けれど、どうしても「飛んで光る」が目立ちます。そこだけを切り取ってしまいがちです。
そういう事情はわかっていても、ホタルの光は美しいもので、見てみたい、という情動に駆られます。煬帝は暴君として有名でしたが、一方で詩人でもありました。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2015年6月22日の過去記事より再掲載)