びおの七十二候
第33回
鷹乃学習・たかすなわちわざをならう
小暑の末候、鷹乃学習です。タカの幼鳥が飛び立ち獲物を捕ることを覚える時期というのですが、動物園でしか見たことがない人が大半です。しかし、日本には22種のタカがいて、日本野鳥の会その他の調査によると、31都道府県から繁殖の情報(1993年)が伝えられています。北日本にやや多く生息しているようですが、日本全国の平地から山地の森林で繁殖しているそうです。秋や冬には、人里や農耕地の近くの林でも見ることができるとのこと。もしそれが本当なら、双眼鏡を買い求めて、バードウォッチングするのも悪くありません。タカは飛翔力に優れていて、力強く軽快そのもので、大空と樹の間を自由に飛び交って、最高で時速80kmにも達するスピードで、獲物を急襲するそうです。獲物は鋭い爪でつかみます。そしてくちばしで引き裂いて食べます。獲物はおもに小型の鳥ですが、リスやキツネ、野ねずみ,ウサギなども獲ります。
巣は、アカマツ、モミ、スギ、カラマツ、ヒノキなどの樹に巣をかけます。樹の高所に小枝を積み重ねてつくります。卵を産む時期は5月から6月で、一腹、2~4個の数を産み、35日~38日で孵化します。孵化してすぐの幼鳥はヒヨコ程度。15日でハトと同じ程度。30日を過ぎると親鳥とおなじ位の大きさに成長します。
鷹匠※1は、初夏、巣立ち前後のヒナを捕えてならすといいます。人になれやすく、野に逃げ帰ることが少ないからです。
【鷹乃学習】とは、巣外の育雛期から巣立ちするかどうか、という時期にあたります。
そうみると、鷹技を習うというのは、言い得て妙ですね。
タカは、食物連鎖の頂点にいます。
ということは、生態系の自然が健全でないと生息できなくなります。
現在、オオタカは環境省のレッドリストの、準絶滅危惧種(NT)に指定されています。準絶滅危惧種とは、生息条件の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性があるものをいいます。絶滅危惧II類(VU)に指定された時期もありましたが、2006年のレッドリスト改訂で、準絶滅危惧種に変更されました。とはいえ、依然として希少な鳥であるといえるでしょう。
レッドリストとは、野生生物の保全のためには、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、一般への理解を広める必要があることから、環境省が刊行している本です。レッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)と、これを基にしたレッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等)がまとめられています。
※1:タカを飼育や訓練をする専門家のこと。
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2008年07月20日の過去記事より再掲載)