色、いろいろの七十二候
第104回
菊花開・おにぎりを持って公園へ
二十四節気
寒露
コスモス色 #F85CA2
七十二候
菊花開
二藍色 #915C8B
公園の役割には、都市環境の改善、防災といった視点もあれば、市民の憩いの場、コミュニティの場としての機能もあります。
近所の公園を覗いてみると、朝はジョギング・ウォーキングをする人で賑い、昼は食事をする親子連れや、駐車場で休憩するサラリーマン、釣り人などさまざまな人が訪れます。
他にも、バードウォッチングをする人、太極拳を披露する人、楽器の練習をする人、サイクリングを楽しむ人、などなど、さまざまな人達が訪れます。
夜には、ちょっとヤンチャな若者もいたりして…。休日になると、また来場者の層はがらりと変わって、とまあ、公園は本当に、老若男女の集う場所です。
人はなぜ公園に行くのか? ひとつ言えるのは、人は自然が好きだ、ということです。公園には、多かれ少なかれ緑があります。水辺があったりすることもあります。
公園の緑に人が投影しているものは、鬱蒼と茂った森林、というよりは、人為的な手が入った二次自然、いわゆる里山のイメージではないでしょうか。かつては燃料や食糧の調達元でもあり、なくてはならないものだった里山は、生活様式が一変することで無用のものとされ、放置、あるいは開発の対象となり、人の生活との縁が途切れてしまいました。
それでも、長年にわたって生活とともにあった自然の風景を、何とはなしに求めるからこそ、人は公園に出向くのではないでしょうか。
規制される公園
せっかくの公園ですが、行くと目につくのが「禁止」の二文字です。
草花の採取禁止、焚き火禁止、バーベキュー禁止、犬の放し飼い禁止、凧揚げ禁止、キャンプ禁止、花火禁止、野球禁止、ゴルフ禁止、ラジコン禁止、楽器禁止、自転車・オートバイの乗り入れ禁止、スケボー禁止、ボール遊び禁止、大声禁止…
なんだこれは。
こういう「ブラックリスト」方式で禁止をすると、禁止する側も、利用する側も、考える力がおかしくなります。リストにない「禁止されていないこと」はすなわち「許可されていること」と捉え、また禁止する側は、その行為も禁止。野球は禁止だがソフトボールは禁止されていない、とかいいだしたら、きりがないですよ…。
そのうち、公園での食事禁止とか、会話禁止とか、10分以上の滞在禁止とか、どんどんエスカレートしていきそうです。
では、公園そのものが嫌われているのか、というとそうではなくて、各都道府県での公園面積は、ほとんどのところで増加しつづけています。
近年は、公園マネジメントという言葉やら、コミュニティデザインという職業もあったりして、公園の新しい像を探ろうという動きもあります。いったい公園はどこに向かおうとしているのでしょうか。
つい先日、こんな出来事がありました。
このパークは、都市計画法でいう公園ではありませんが、地域の同好の士のコミュニティの場として成立していた場所です。これまでも、早朝使用への苦情などもあったようで、それに対する自治も行われていたようですが、最終的に不法な占拠という形で取り壊しという結論になったとのことです。
これは極端な例かもしれませんが、公園のあらゆる「禁止」には、近隣からの苦情(や、苦情を受けたくない行政)が背景にあることは容易に想像できます。
本来、憩いの場であり、住環境を向上させるための場でもある公園も、近隣住民にとっては迷惑施設にもなってしまうわけですが、なんだか社会の懐の狭さというか、余裕のなさを感じてしまう切ない例ですね。
「禁止」だらけの公園も、これから公園デビューをしようとする親子にとってみれば、ゴルフも花火も放し飼いの犬もいないほうが、安心ではあるのです。
例えれば、誰かにとっての赤信号は、誰かにとっての青信号。だからといって、信号だらけにすると、かえって円滑さは失われるのではないでしょうか。信号のない道を、回りをきちんと見ながら進むのが、成熟した大人だと思うのです。
公園デビュー
公園デビューという言葉、もう死語か、と思いきや、やっぱりはじめての人は緊張するようです。公園デビューをサポートするためのWEBサイトまであったりします。
牢名主のようなボスママがいて、いろんなルールを取り仕切っている、派閥があってルールに従わなければいじめられたり、というのがステレオタイプです。本当にそんなことがあるのか、というと、伝聞でも実体験でも、あるところにはある、というのが事実と言わざるを得ません。パブリックなはずの公園で、あれしちゃいけない、ああいうときはこうしろ、など…。
行政が出す禁止事項にしても、ママ友が仕切るルールにしても、全体の善し悪しはどこかにいってしまって、局部的なことばかりを問題視する、昨今の社会の風潮が顕著に反映されています。
でもね、家族以外の最初のコミュニティーといえる公園デビューで、そんな風潮に染まらずに、そこから変えていくことができたら、この国の未来は明るい、かもしれません。
おにぎりをもって、公園に行こう
締めは楽しい話にしましょう。
公園に持っていくランチは、なんといってもおにぎりにとどめを刺します。
ただでさえ、何故かおいしい手作りのおにぎりを、外で食べれば、何故かもっとおいしい。
家族と公園にいって、おにぎりを食べて、しばらくボーっとして帰ってくる。これ、最高でしょ?
公園には、また別の楽しみもあったりします。それは次回のお楽しみ。
(2013年10月08日の過去記事より再掲載)