色、いろいろの七十二候

103

鴻雁来・金木犀

キンモクセイ
こよみの色

二十四節気

しゅうぶん

寒露
コスモス色    #F85CA2

秋桜の字が当てられ、花弁は紫がかったピンク。明治20年頃渡来したといわれる。

七十二候

こうがんきたる

鴻雁来
江戸紫色えどむらさきいろ #745399

濃い青みを帯びた紫。江戸時代に武蔵野に自生するムラサキ科ムラサキソウで染められたことから名付いた。江戸を代表する染め色。京紫は赤みが強く、江戸紫は青みが強い。歌舞伎の人気演目『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』で、主人公の助六が巻く鉢巻きの色が代表的。
金木犀の匂うころ
あなたと出会い
沈丁花の匂うころ
あなたと別れた

という詩を書いたのは、詩人・エッセイストであり、環境問題研究家の森下礼さんです。東大で、リスク論で知られる中西準子さんのもとで「トリハロメタン」の研究をなさいました。トリハロメタンは肝障害や腎障害を引き起こす物質として知られており、発癌性や催奇形性も疑われています。森下さんは、浄水場と水道水中のトリハロメタンについて研究されました。
この詩には、環境の微細な変化に敏感な研究者をうかがわせるものがあります。金木犀がつよい芳香を漂わせるのは秋で、沈丁花が匂うのは春です。森下さんの出逢いと別れは、秋から春にかけてのことだったのですね。

この二つの樹の匂いは、ジャスミンと並んで、トイレに置く芳香剤の代表的なもので、子どもは、この樹の前を通り、つよい匂いに接すると「トイレの臭いがする」というそうです。本物は、合成化学のニオイとは違うと思うのですが、そんなことになっています。
森下礼さんは、この詩を紹介した文章の中で、「刑務所の近くで沈丁花があり、囚人たちが、看守に頼みこみます。言うには『“女性”を感じる・連想する香りだから我々には、きつい。伐って欲しい』というものだったそうです。分る気がします。

金木犀の中国名は「丹桂たんけい」です。中国酒に桂花陳酒けいかちんしゅがありますが、花冠を白ワインに漬けてつくられるお酒です。茶に混ぜると桂花茶という花茶になります。
金木犀の「犀」は、サイと読みます。
サイ科の哺乳類の総称で、陸生の草食動物では象に次いで大きく、四肢は太く短く、表皮は硬く、毛はほとんどありません。鼻の上または額に一または二本の角を持っています。薄褐色の幹の紋が、犀の皮に似ていることから付けられたのですが、よく思いついたものだと思います。
金木犀は秋の季語、沈丁花は春の季語です。
やはり、どの句も匂いに関係していますね。

木犀の昼はさめたる香炉かな
  嵐雪
木犀の香にあけたての障子かな
  高浜虚子
木犀の香や純白の犬二匹
  高野素十
文/小池一三
※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2011年10月09日の過去記事より再掲載)