我輩は歌丸である。
第58回
はたらく車に恋しちゃった僕
前回のお話では歌丸の大冒険を書きましたが、今回はその続きになります。
大冒険をして無事帰還した歌丸の様子が少し変わった気がしました。
歌丸はお外をじっくり見るタイプではなかったのに、勝手口の窓から、リビングの窓から、暇さえあればお外を眺める様になったのです。
きっとまた冒険に行きたいのだろうと思っていましたが視線の先にはいつも重機がいる事に気が付きました。
昼間は豪快に動く重機を見つめ、夜はひっそりと佇む重機を見つめています。
その姿はなんだか艶やかで切ないのです。歌丸?まさか恋していないかい?
重機を操る職人さんの腕が良かったのでしょう。まるで生き物の様に動く重機に興味を持つのはわかります。しかし重機を見つめているその目は観察をする目ではありません。
明らかに恋焦がれた目をしているのです!
変化のなかった毎日が急に輝きだしたのでしょう!歌丸は暇さえあれば窓際へ行くようになりました。
ストーカーまがいの行動が日常になったある日、いつもは遠くで作業していた重機が窓にかなり近い所まで来ました!
これは興奮してしまいますね!冷静を装いジーっと見つめているその後頭部の可愛い事!
数日後、工事は無事終了し重機は去っていきました。別れが突然なのは世の常なのです。さよならを告げる事さえできなかった歌丸の淡い恋は儚く散ったのでした。
しばらくは外を眺める日が続きましたがだんだん減っていきました。
そんなある日一回り小さくなった重機がやってきたのです!
すぐさま歌丸に伝え窓際に連れて行くと目をギラギラさせ見つめていたのですが、それきりでした。
どうしたの?歌丸?重機だよ。重機が来たよ!
誰でもいい訳じゃないのよ。あの重機が好きなの!ねぇどこ行っちゃったのよぉぉぉ。
歌丸。人生は思い通りにならない事ばかりなのよ。
月並みなアドバイスしか出来ない私なのでした。それではまた来月!それはまた別のお話。