びおの珠玉記事

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左利きの日[8月13日]

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年08月12日の過去記事より再掲載)

左手

1年に2回ある左利きの日。

「左利きの日」は、なぜか1年に2回あります。
ひとつは、8月13日。もう一つは、2月10日。
8月13日はイギリスで提唱され、その提唱者の誕生日からきています。
一方の2月10日は、0210を、0(レ)2(フ)10(ト)と読むという語呂合わせです。

8月13日はお盆の時期なのでイベントが行いにくい、ということで2月10日案が生まれたようですが、「びお」では世界基準(?)の8月13日にあわせての左利き特集です。

左利きの著名人

左利き人口は、1割程度といわれます。宗教、文化観によって右利きに矯正されてしまうこともありますが、左利きが生まれてくる割合としては、洋の東西を問わず1割前後とのことです。
一方、社会での成功者・何かに突出した人には左利きが多いと言われます。
その例を見てみましょう。

政治家
アレクサンダー大王
ジュリアス・シーザー
ナポレン・ボナパルト
ウィンストン・チャーチル
フィデル・カストロ

歴史的な政治家が名を連ねています。

アメリカ大統領には左利きが多いのも有名です。

バラク・オバマ

バラク・オバマ
Creative Commons. Some Rights Reserved. Photo by whitehouse.gov


フォード(38代)
レーガン(40代)
ブッシュ(父)(41代)
クリントン(42代)
オバマ(44代)

1974年就任のフォード以降、7人中、5人が左利き。右利きの大統領はカーター(39代)とブッシュ(子)(43代)の2人だけです。
アルカイダの指導者、オサマ・ビンラディンも左利きだとか…

学者
ニュートン
ダーウィン
キュリー夫人
エジソン

これもまた歴史的な学者が並びます。アインシュタインも左利きだったと言われていますが、右利き説もあります。

芸術家
ベートーべン

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン


ミケランジェロ
ラファエロ
ダ・ビンチ
ピカソ
エッシャー
ゲーテ
バッハ
モーツァルト
ベートーベン
ボブ・ディラン
ジミ・ヘンドリックス
ポール・マッカートニー
リンゴ・スター
ポール・サイモン
坂本龍一
実業家
ヘンリー・フォード(フォード)
ビル・ゲイツ(マイクロソフト)
スティーブ・ジョブズ(アップル・自称両利き)

ホリエモン(堀江貴文)も、元は左利きだったとか。

さて、そうそうたる面々がならんでいます。
もちろん、右利きでこれらの人々に匹敵する実績の人もいることを忘れてはいけませんが、改めてこうして並べてみると、左利きって「何かあるのかも」と思いませんか?

みなさんの周り(あるいはご本人)にも左利きの人がいることでしょう。その人たちの顔を思い出して、「確かにそうだ」と思うのか、「そんなはずないよ」と思うのでしょうか。

なぜ左利きになるのか?

利き手が発生する決定的な理由というのは、実はまだわかっていません。
統計によると、両親とも右利きの場合は、左利きの子どもが生まれる可能性は9.5%であるのに対して、親のどちらかが左利きの場合は19%、両親とも左利きの場合には26%と高くなります。

こうしてみると、左利きは遺伝的に受け継がれるといっていいのでしょうが、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、利き手が違うこともあり、左利きの原因を決定づける結論はまだ出ていません。

左利きは不便だ

社会の成功者に左利きが多いとはいえ、左利き人口自体は少ないですから、世の中は左利きに対してあまり配慮をしていません。

カメラ

カメラ

シャッター操作は右手に限定される

完全に右手中心の操作です。一眼レフの場合は左手でピント合わせやズームを行い、右手でシャッター速度、絞りを決めてシャッターを押します。右手の方があきらかに「やること」が多いですね。コンパクトカメラになると尚更で、左手は最早添えているだけです。それどころか、最近のカメラには手ぶれ防止機能もついていますので、右手だけで撮る、なんていうのも珍しくありません。
左手だけでカメラを使うのは、ほぼ無理です。
ビデオカメラもしかり。右手をはめて使うように出来ていて、左手で使うことは一切考えられていません。

バイキング形式の食事

バイキング形式の食事では、それぞれの料理のところに箸やスプーンなどが置かれています。左利きの人が使うと、この向きが左右入れ替わってしまうので、いちいちまた右利き向けに置き直したりします。これは多少のアクションが増えるだけなのでなんとかなりますが、致命的なのは「横口レードル」。バイキング形式のスープによく用いられています。こんなの左手でどう使えというのでしょうか…

スポーツの世界では左利きが有利?

スポーツの世界では左利きが有利だと言われます。これは、左利きの人数が絶対的に少ないことから、相手が「慣れ」にくいためです。

プロや、本格的なスポーツならそうかもしれません。しかし、対戦型ではないスポーツや、素人がたまに遊びでやる程度だと、やはり左利きは不利なことが多いんです。

ボウリング
ボウリングの球
本格的にやる左利きの人は、マイボウルを持っているでしょう。でも、そうでない多くの左利きは、ボウリングに行っても無理矢理左手を差し込むか、泣く泣く右手で投げるか。

野球
グローブ
自分の道具を持っていれば、これも問題ありません。左打者は一塁に近いことから有利で、右利きでも左打をする人もいます。しかし、たまたま有りものの道具だけで野球をやろうとすると、左利き用グローブを誰も持っていなかったりしますし、捕球から送球への体の位置からセカンド、ショート、サードは守らせてもらえません。

左利き専用グッズの功罪

今は左利き専用グッズがたくさん売られるようになってきました。これって左利きにはありがたいようでいて、実はそうでもないこともあるんです。

たとえば、左利き用ハサミ。左手で右利き用ハサミをつかうのは、かなり困難です。ですから左利き用ハサミの存在は一見ありがたいのですが、そのハサミがない場合(誰かにハサミを借りるとき等)に、結局右手用のハサミを使わなければならなくなります。
そんなふうに、我慢してきた左利きは多いのです。

「左利き専用グッズ」は、自宅でしか使わない道具や、あるジャンルでプロフェッショナルとして必要な道具としてはなくてはならないものですが、一方で、先に述べたように、左利きの不便さを増す結果にもなりかねません。

嫌われ者の左手

イスラム教では、左手は不浄とされ、食事には使わず、教典を左手だけで持つことも避けられています。
ヒンズー教でも、同様に左手は不浄で、食事や握手には使われません。
英語のsinister[縁起の悪い・不吉な]の語源は、ラテン語で「左」を意味しています。
left-handedは「左利きの」という意味の他に、「不器用な、下手な」「疑わしい、あいまいな、どちらにも解される、誠意のない」などという意味もあります。

左手、可哀想ですね。

左利きとユニバーサルデザイン

「ユニバーサルデザイン」が言われて久しいですが、世の中はまだまだユニバーサルではありません。

ユニバーサルデザインの7原則
  • どんな人でも公平に使えること
  • 使う上で自由度が高いこと
  • 使い方が簡単で、すぐに分かること
  • 必要な情報がすぐに分かること
  • うっかりミスが危険につながらないこと
  • 身体への負担(弱い力でも使えること)
  • 接近や利用するための十分な大きさと空間を確保すること

1割も存在する左利きでさえ不便を感じるのですから、より少数のマイノリティーには、相当の不便があることでしょう。左利き程度の不便さではない不便さが、世の中には溢れていて、これを解決するのは簡単なことではありません。

デザインするには体験することから、ということで、妊婦体験ジャケットや高齢者疑似体験サポーターなどのアイテムもあります。
右利きの人が左手を使う、というのは、これらの疑似体験とは異なりますが、それでも、社会は左手にあまりやさしくないことがわかるでしょう。

「左利きの日」を機に、「他を想う」、ということを感じでいただければ幸いです。

左手で字を書いてみる

当記事執筆者の私、サヅカは左利きです。今のところアレクサンダー大王にもビル・ゲイツにもなれそうもありませんが、左利きのおかげで不自由もしましたし、話題になって場がつながったこともあります。
よく左利きは「器用だね〜」なんて感心されますが、一般的に右手でやることを左手でやるので「そう見える」だけで、不器用な左利きだっていくらでもいます。

とはいえ、左利きは、利き手ではない右手を使わざるを得ないケースが多いので、右利きの人が左手を使うことに比べると、利き手ではない方の手もそれなりに使える、ということはあるかもしれません。

普段不便な思いをしている左利きとしては、たまには右利きをイジめてみたい! というわけではありませんが、右利きの人に左手で字を書いてもらいました。

左手で書いた文字

上から、右手(利き手)、左手(時間制限無し)、左手(制限時間約9秒)

普段左手で字を書く機会がありませんから、当然のように左手で書いたものは、力の入り加減が難しく、時間もかかります。上から2番目は時間制限無しで左手で書いてもらったものですが、かなりの時間がかかっています。一番下は、時間を制限して書いてもらいました。おそらく右手なら十分書ききれる時間だったのですが、わずかしか書けませんでした。

左利き体験は、妊婦や高齢者体験とは違って、「慣れ」の問題が大きいため、単に左手で何かをしても、それが「左」だから不便なのか、慣れていないから不便なのかが区別しにくいようです。

最初は慣れずに困っていた被験者のみなさんも、なんどかやるうちにだいぶ慣れたようです(画像は慣れる前の一回目)。

左手は右脳、右手は左脳がつかさどり、それぞれ右脳は芸術的、左脳は論理的であるといわれています。先の著名人リストにもあったように、左利きに天才肌の人が多いのは、もしかするとそのため?
その真偽はさておき、普段右利きの人も、たまに左手を使ってみることは、左利き体験、というよりも、むしろ脳の刺激になってよいのかもしれません。