びおの珠玉記事

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ゴーヤーで夏バテを吹き飛ばそう!

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年07月23日の過去記事より再掲載)

ゴーヤー

濃い緑色に、表面のイボイボ。ゴーヤーは独特の苦みとコリコリとした食感が特徴の夏野菜です。どうも、あの苦みが苦手で…という方もいらっしゃることと思いますが、実はゴーヤーは栄養豊富で、夏バテ防止に効果抜群。

暑い日が続きますが、ゴーヤーで夏バテを吹き飛ばそう!ということで、今回はゴーヤーをご紹介。いろいろな料理にも挑戦してみました。

ゴーヤーの歴史

ゴーヤーの原産地は熱帯アジアです。15〜16世紀(明の時代)に南方から中国へ伝わり、華南、華中、華北へと北上しながら広まっていったとされています。
日本へは16世紀末頃に、中国から伝わったと考えられています。当初は食用より、観賞用や日陰をつくるための遮光植物として育てられることが多かったようです。また、独自に中国と交易をしていた沖縄(琉球)へは、その過程で伝播したか、あるいは南方から別のルートで直接伝わったと考えられています。沖縄では独自のゴーヤーの食文化が育まれました。

「ゴーヤー」と「にがうり」

この野菜は、一般に「ゴーヤー」「ゴーヤ」または「にがうり」と呼ばれています。植物名は「ツルレイシ(蔓茘枝)」です。沖縄や九州を中心に栽培され、食用とされてきた地方野菜のひとつです。

「ゴーヤー」は沖縄の方言です。栽培を始めた人が「合屋(ごうや)」という姓だったのが名前の由来、という話が伝わっているそうです。
なお、「ゴーヤー」は主に沖縄本島の呼び方で、石垣島や西表島などの八重山地方の方言では語尾を伸ばさずに「ゴーヤ」と言い、宮古島では「ゴーラ」と言うそうです。

九州では一般に「にがうり」と呼ばれています。方言で、福岡では「にがごうり」、鹿児島では「にがごい」、熊本では「にがごり」とも呼ぶそうです。いずれも「にがうり(苦瓜)」の訛りです。

以上のように沖縄と九州では呼び方が異なりますが、形状など品種の系統も異なり、食べ方にも違いが見られます。文化圏の違いを表していると言えるでしょう。
品種の系統について大まかに見てみますと、沖縄のものは、紡錘形の系統がほとんどで、ぽってりとした肉太な形をしています。九州のものに比べると苦みは穏やかです。九州のものは円筒形で、沖縄のものに比べて細長く、苦みが強いのです。しかし、ゴーヤーの人気が高まるとともに品種改良が進められ、穏やかな苦みのものが多くなりました。

【ご参考】
■にがうり倶楽部:にがうりの種類
http://www2u.biglobe.ne.jp/~bird-st/f_what.htm

白いにがうり、「白れいし」もあります。苦みは淡くて、食べやすいそうです。
■Akko’s favorite:白いにがごり
http://akfavorite.exblog.jp/2280059/

そして、食べ方にもそれぞれの文化があります。
沖縄でのゴーヤーの料理といえば、何といってもゴーヤーチャンプルーが代表です。夏の暑さが厳しい沖縄では、特に油を摂ることが大切だったので、この料理がシンボルになるのは理に適っていると言えるでしょう。
九州でもっともポピュラーなニガウリ料理は、「みそ炒め煮」です。ナスと組み合わせて油で炒め、みそ・砂糖で味をつけます。
また、九州のニガウリは沖縄のものに比べて苦みが強かったためか、九州では苦みをやわらげるための独特な料理法があります。ニガウリを油で炒めて、だしとしょうゆで味をつけて煮ふくめ、最後に水溶きした小麦粉でからめるというものです。これでかなり苦みがやわらげられ、食べやすくなります。熊本の阿蘇地方には、ニガウリとカボチャを組み合わせ、水溶きした小麦粉でからめる「どろりあげ」という料理があります。
「みそ焼き」など、ニガウリを焼く、というのも九州独特の食べ方です。これは、もっとも苦みを強く感じる食べ方です。
このように、九州には、ニガウリの苦みをやわらげる料理と、苦みを強くして苦みを味わう料理の両方があります。

ゴーヤーで夏バテを吹き飛ばそう!

ゴーヤーは、栄養価の高さが注目を浴び、一躍人気野菜になりました。そして、ゴーヤーチャンプルーなどの沖縄料理の普及で、全国的にも広く知られるようになりました。以前は「にがうり」という呼び方が一般的でしたが、近年では沖縄の「ゴーヤー」という呼び方も定着しました。
日本中で夏が最も長い沖縄では、ゴーヤーが「夏野菜の王様」と呼ばれ、夏バテの特効薬だと言われてきました。
栄養豊富なゴーヤー。まずは、ビタミンCの含有量がとびぬけて多いことが挙げられます。トマトの約5倍、レモンの約4倍、キュウリの約8倍とされます。しかも、ゴーヤーに含まれるビタミンCは熱に強いのが特徴で、料理で加熱してもほとんど失われません。ですので、栄養面を気にせずいろいろな料理を楽しめます。ビタミンCは疲労を回復させ、夏風邪などの病気に対する抵抗力を強くする働きがあるので、夏バテ予防に役立ちます。
その他、体内でビタミンAに変わるカロテンや、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルも豊富で、暑さで消耗した体を回復させ、体力をつける効果があります。
また、便秘を防ぎ、大腸ガンの発病を抑える効果があるとされていて、現代人に不足していると言われる食物繊維を多く含んでいます。
さらに、ゴーヤーは独特の苦みが特徴ですが、その苦みの元は「モモルデシン」という成分で、このモモルデシンにはいろいろな効能があります。胃壁を刺激し、消化液の分泌を促して消化を助け、食欲を増進させます。また、血糖値を下げたり、肝臓の働きを活発にする作用もあります。
そして、キュウリやスイカもそうですが、ウリの仲間・ゴーヤーには、体の熱を取って冷やす働きがあり、暑い夏に食べるのに適しています。
これほどの効能があるのは、心強いかぎりです。まさに、夏バテ防止にピッタリ。
そして、付け加えておきたいのは、暑い太陽の陽射しをたくさん浴びれば浴びるほど、ゴーヤーの苦みと栄養価はどんどん増していく、ということです。今では1年を通してゴーヤーを食べられるようになりましたが、最盛期の夏場に収穫されたものほど苦く、栄養価が高いのです。
暑い日が続きますが、旬のゴーヤーで夏バテを吹き飛ばしましょう!

ゴーヤーを使っていろいろ作ってみました!

そんなわけで、ゴーヤーで夏バテを吹き飛ばすべく、いろいろな料理に挑戦してみましたので、ご紹介します。
今回、モニターとして、ゴーヤーがちょっと苦手のAさんと、ゴーヤーを積極的に食べたいと思っているBさんに登場していただきます。

1.ゴーヤーの素揚げ&から揚げ

ゴーヤーの唐揚げ

(1)ゴーヤーを輪切りにし、中のわたと種を取り除きます。
(2)塩もみをして、水気を拭き取ります。
(3)半分を素揚げに、もう半分には片栗粉をつけてから揚げにします。

【感想は?】
Bさん:思ってたよりずっとおいしい!どっちもおいしいけど、
   から揚げの方がマイルドだね。素揚げはちょっと苦いね。
   その苦みもおいしいけど。
Aさん:私は、素揚げはちょっと苦手かも…。でも、から揚げはおいしいよ。

2.ゴーヤーとトマトのマリネ

(1)ゴーヤーを縦に2つに割り、中のわたと種を取り除きます。
ゴーヤの中綿
ゴーヤのタネを取る

(2)ゴーヤーを薄くスライスして、さっとゆでます。
千切りゴーヤー

(3)オリーブオイル・ワインビネガー・塩・こしょうでマリネ液をつくり、ゴーヤーを漬けます。
ゴーヤをマリネ液につける

(4)トマトを切って加えます。
トマトとゴーヤのマリネ

【感想は?】
Aさん:苦い……。私はダメ。
Bさん:うーん…そうだね、確かに苦いね。私もちょっと苦手かな。
   塩もみをしたり、もっとよくゆでたりすれば、
   もう少し苦みを抑えられたかも?

次の3から5までの料理は、『まるごとあじわうゴーヤーの本 「にがい」がうまい』(中山美鈴、藤 清光、坂本守章 著、農山漁村文化協会、2003年)掲載のレシピです。
この本には、九州・阿蘇地方の「どろりあげ」から、ゴーヤーを使ったおやつ・お茶請けまで、多彩なレシピが載っていました。レシピごとに「にがみ度」も書かれていて、おもしろいです。今回は、ゴーヤーチャンプルーなどのよく知られている料理ではなく、これまで知らなかった料理に挑戦してみました。

3.ゴーヤーフレッシュソース

すりおろしたゴーヤーの持ち味と色鮮やかな美しさを生かした洋風ソースです。
サラダ、フルーツ、サンドイッチ、魚介類のフライ、クラッカーなど多様に応用できます。子どもでも「にがくなーい」と喜んで食べます。

[材料]
ゴーヤー、セロリ、マヨネーズ、ヨーグルト、ブラックペッパー、柑橘果汁 … 適量
じゃがいも、マカロニ … 食べたいだけ
オリーブオイル … 適量

[つくり方]
(1)ゴーヤーは表面のイボイボだけをすりおろす。
(2)セロリをみじん切りにする。
(3) 1、2、マヨネーズ、ヨーグルト、ブラックペッパー、柑橘果汁をまぜて、冷蔵庫で冷やす。
(4)じゃがいもはゆでて、粉ふきにする。
(5)マカロニはゆで、オリーブオイルをかるくまぜる。
(6)器にじゃがいもとマカロニを入れ、ソースをかけていただく。

[にがみ度] 1

ゴーヤー1本分のイボイボをすりおろしました。苦そう〜。
すりおろしゴーヤー

出来上がったソースです。
ゴーヤーソース

じゃがいもとマカロニにかけていただきます。
マカロニのゴーヤソースかけ

【感想は?】
Bさん:(一口、口に入れた途端、顔をしかめ)これはダメだ……。
   えーと、でも、何かのかくし味に入れるならいいかも?
   …実は私、セロリも苦手なの。ごめんなさい。
Aさん:かくし味って…何の?
   そうね、セロリも効いてるし、セロリも苦手だったら、ダメかもね。
   「にがみ度1」ってことで、確かにあまり苦くないね。
   でも、生だから、ゴーヤーの青くさい感じがちょっと
   気になるかな。マヨネーズとヨーグルトでまろやかになってはいるけど。
   うーん、私もあまり好きではないかな。

材料の分量が「適量」となっていたので、適当な分量で作りました。その配分次第でもっとおいしくなるかもしれません。

4.ヒラヤチー

ニラだけを入れてつくる素朴な、沖縄の簡単食。平たく焼くから「ヒラヤチー」。お好み焼きに似てさにあらず。イカや豚肉などいろいろ具を加えないのがミソ。
これをゴーヤーで応用するととってもおいしいのです。にがみが和らぎ、子どもも喜んで食べます。

[材料]
ゴーヤー … 2本
小麦粉 … 200グラム
水 … 350cc
油 … 適量

[つくり方]
(1)ゴーヤーは縦に二つ割りにして種とわたをとりのぞき、薄くスライスする。
(2)小麦粉を水で溶き、ゴーヤーをまぜる。
(3)フライパンを熱して油を引き、(2)を入れてゴーヤーに火が入るまでじっくり焼く。

[にがみ度] 1.5

※ほかのゴーヤー料理に比べて、これはよく火が入るまで焼いてください。好みで卵を入れて、お好み焼き風にしてもイケます。

この前の「ゴーヤフレッシュソース」で表面のイボイボだけをすりおろしましたが、それで残ったゴーヤーを使いました。ゴーヤー1本分でしたので、小麦粉と水も半分の量にしました。
大きめのゴーヤーだったので、ゴーヤーの分量が多すぎたかもしれません。また、残ったゴーヤーではなく、レシピどおり丸ごとのゴーヤーを使ったら、また違ったかもしれません。
ゴーヤーのヒラヤチー

【感想は?】
Bさん:けっこう苦いね。苦みがダイレクトな感じ…。(食べてすぐお茶を飲む)
Aさん:そうね。やっぱりゴーヤーが多かったのかもね。
   それに、焼き方にも問題があるかも。長い時間焼いてはいたし、
   火もちゃんと通ってるけど、ちょっとネチョネチョしてない?
   もっとカリっと焼ければ、おいしいかも。
Bさん:お好み焼きみたいに、ソース・鰹節・青海苔をかけてみたらどうかな?
   (実際にかけてみる)
   うん、これなら大丈夫。
   ちょっと苦いお好み焼きって感じ。
Aさん:(食べてみて)うん、確かにこっちの方が食べやすいね。
Bさん:味噌だれとマヨネーズをかけたらどうだろう?
   (実際にかけてみる)
   うん、いい感じ!こっちの方がおいしい。
Aさん:(食べてみて)うん、おいしいね。味噌とゴーヤーの相性がいいからかな?
   でも、なんだか、別の料理になっちゃったね…。

※味噌だれは、一般的な味噌・赤味噌・砂糖を同量でまぜ、酒とみりんを少量加え、とろっとするまで火にかけて、つくったもの。

5.甘苦どん

ゴーヤーと豚肉の相性はぴったりなので、これをちょっと中華風に仕立てたどんぶりです。豚肉は脇役で、ゴーヤーが主役。どんぶりの主役になれる野菜はそうそうありません。甘辛でなく、甘苦さが新鮮な味わいです。

[材料] 2人分
ゴーヤー … 2分の1本
豚ばら肉 … 100グラム
白ネギ … 適量
しょうゆ、砂糖 … 各大さじ2杯
豆板醤 … 小さじ1杯
ごま油、酒 … 少々
ご飯 … 食べたいだけ

[つくり方]
(1)ゴーヤーは縦に二つ割りにして種とわたをとりのぞき、5ミリくらいにスライスする。
(2)豚肉はゆでて脂抜きをし、食べやすい大きさに切る。
(3)鍋を熱し、ごま油をひき、豚肉を炒めて調味してからゴーヤーを入れ、歯ごたえが少し残るくらいで火を止める。
(4)ネギの白い部分を細くせん切りにして水にさらす。
(5)ご飯をどんぶりに入れ、(3)を盛りつけ、白髪ネギをのせる。

[にがみ度] 2

なかなかおいしそうにできました。
ゴーヤの甘苦どん

【感想は?】
Bさん:うん、おいしい!これは私も好き。
   ゴーヤーの苦みやクセが抑えられてるね。そんなに苦くない。
   辛みで中和されてる感じ。
Aさん:うん、おいしいね!私も、これ好き。
   ゴーヤーと豚肉って合うんだね〜。ゴーヤーのコリコリした食感も、
   そのまま残ってるし。
Bさん:これはアリ!だね。

いろいろと作って食べてみて、ゴーヤーには思っていたより多彩なレシピがあることが分かり、それぞれの料理によってゴーヤーの味の生かされ方が変わってくるので、いろいろな料理に挑戦してみて、自分の好みに合った料理を見つけるのがいいのかな、と思いました。

参考文献
・『まるごとあじわうゴーヤーの本 「にがい」がうまい』
中山美鈴、藤 清光、坂本守章 著  農山漁村文化協会、2003年
・『そだててあそぼう[51] ニガウリ(ゴーヤー)の絵本』
 藤枝國光・中山美鈴 編、土橋とし子 絵  農山漁村文化協会、2003年
・『おいしいゴーヤを召し上がれ』
秋吉憲一 著、今別府靖子 料理・レシピ制作  生活情報センター、2004年