我輩は歌丸である。
第84回
ちょこっと撒き散らしただけだよ
今年の夏は本当に暑かったですね。いつまで続くのかと思っていたら「今日から秋です!」と言われたかの様に突然涼しくなりました。
涼しくなったのは嬉しいのですが、あまりに突然過ぎます。まるで定年を迎えた夫に、なんの前触れも無く離婚届を突きつける妻の様です。
さて前回のお話の続きをしましょう。諸事情により歌丸が我が家へ戻ってきました。
何故かというと、実家の見学会が行われたからなのです。しかも3回に分けて30人くらい来るのです!
父が亡くなって10年も経つのに、こうやって沢山の方々に見てもらえる事はとても有り難いです。
しかしその状況だと歌丸の逃げ場はありません。変な所に入り込んで熱中症になったら大変です。
そんなこんなで我が家へ一時避難したわけです。田舎の夏休みをぬくぬく堪能していたのに、突然コンクリートジャングルの狭い部屋に連れ戻された歌丸は不服そうでした。
可愛くない態度でしたが、それでも久しぶりに一緒にいられて私は嬉しくてたまりませんでした。
ある日お夕飯の準備をしていました。お蕎麦が茹で上がる頃、歌丸はトイレに向かいました。絶対ウッコだなぁ。
残り香の中でお蕎麦は食べたくないなぁと思っていました。
案の定激しく砂を掻く歌丸。絶対ウッコじゃん‥
そして歌丸が力み始めました。コロコロと少しだけ出ましたが、その後いくら踏ん張っても出ません。これは吐くぞ!(歌丸は力みすぎると必ず吐く)危険を察知した私は、なんでも良いので受け止める紙を探し始めた時、
「にゃーっ!!!!」と大きな声をあげて走り出しました。あまりに突然だったので何事かと思い立ち尽くしていたら、歌丸が走りながらウッコをばら撒く姿が見えました。
肛門が痛かったのか?どうしたんだろうと不安になりましたが、歌丸はケロッとしていました。
我に返りリビングに撒き散らされたウッコを見つめ、茹で過ぎた蕎麦が舞う鍋を見つめ、大きなため息を3回くらい吐きましたとさ。
次回はまた実家へ戻るお話。ちょっとしたトラブルが起こった為、歌丸は久しぶりに冒険をします。それはまた別のお話。